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楕円の定義と基本性質

2次曲線(教科書範囲) ★★

アイキャッチ

楕円の定義と基本性質,媒介変数表示等の重要事項をこのページで総整理します.

楕円の接線の方程式はこちらでは扱いません.

楕円の定義と基本性質

楕円と焦点の定義

楕円の定義

異なる $2$ 定点 $\rm F$,$\rm F'$ までの距離の和が一定である点 $\rm P$ の軌跡を楕円といい,$2$ 定点 $\rm F$,$\rm F'$ を焦点という.

※ 他に離心率や円錐の切断で定義する方法もありますが,大学受験という観点ではこちらの方が重要です.


楕円で重要なのが定義です.

この定義から楕円の方程式,各種性質を導きます.

以下で焦点が $x$ 軸上にあるとき,$y$ 軸上にあるとき順に言及します.

楕円の方程式と基本性質(焦点が $x$ 軸上にあるとき)

焦点がx軸上にある楕円

中心が原点,焦点までの距離の和が $2a$ である楕円の方程式は

$\boldsymbol{\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1}$ $\boldsymbol{(a > b >0)}$

で表せ,これを標準形という.

焦点の座標:$\boldsymbol{(\pm\sqrt{a^{2}-b^{2}},0)}$

長軸の長さ:$\boldsymbol{2a}$ 短軸の長さ:$\boldsymbol{2b}$

焦点までの距離の和:$\boldsymbol{2a}$

楕円の方程式と焦点の座標の導出

楕円の方程式と焦点の座標の導出

焦点を ${\rm F}(c,0)$,${\rm F'}(-c,0)$ とおくと,${\rm PF + PF'}=2a$ より

$\sqrt{(x-c)^{2}+y^{2}}+\sqrt{(x+c)^{2}+y^{2}}=2a$

$\Longleftrightarrow \ \sqrt{(x-c)^{2}+y^{2}}=2a-\sqrt{(x+c)^{2}+y^{2}}$

両辺 $2$ 乗して

$(x-c)^{2}+y^{2}=4a^{2}-4a\sqrt{(x+c)^{2}+y^{2}}+(x+c)^{2}+y^{2}$

$\Longleftrightarrow \ 4a\sqrt{(x+c)^{2}+y^{2}}=4a^{2}+4cx$

$\Longleftrightarrow \ a\sqrt{(x+c)^{2}+y^{2}}=a^{2}+cx$

両辺 $2$ 乗して

$a^{2}(x+c)^{2}+a^{2}y^{2}=a^{4}+2a^{2}cx+c^{2}x^{2}$

$\Longleftrightarrow \ (a^{2}-c^{2})x^{2}+a^{2}y^{2}=a^{2}(a^{2}-c^{2})$

$a>c$ より,$a^{2}-c^{2}=b^{2}$ とおくと

$b^{2}x^{2}+a^{2}y^{2}=a^{2}b^{2}$

求める軌跡(楕円)の方程式は

$\boldsymbol{\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1}$

と表せる.焦点の座標は $c^{2}=a^{2}-b^{2} \ \Longleftrightarrow \ c=\pm\sqrt{a^{2}-b^{2}}$ より

$\boldsymbol{(\pm\sqrt{a^{2}-b^{2}},0)}$


続いて,焦点が $y$ 軸上にあるときです.導出は上と同様なので割愛します.

楕円の方程式と基本性質(焦点が $y$ 軸上にあるとき)

焦点がy軸上にある楕円

中心が原点,焦点までの距離の和が $2b$ である楕円の方程式は

$\boldsymbol{\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1}$ $\boldsymbol{(b > a >0)}$

で表せ,これを標準形という.

焦点の座標:$\boldsymbol{(0,\pm\sqrt{b^{2}-a^{2}})}$

長軸の長さ:$\boldsymbol{2b}$ 短軸の長さ:$\boldsymbol{2a}$

焦点までの距離の和:$\boldsymbol{2b}$

中心が原点でない楕円

中心が原点でない楕円

楕円 $C:\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ を $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動したグラフを $C'$ とする.$C$ 上の点を $(X,Y)$,これで移される $C'$ 上の点を $(x,y)$ とすると

$\begin{cases}X+p=x \ \Longleftrightarrow \ X=x-p\\ Y+q=y \ \Longleftrightarrow \ Y=y-q\end{cases}$

$\dfrac{X^2}{a^2}+\dfrac{Y^2}{b^2}=1$ より,$C'$ の方程式は

$C':\dfrac{(x-p)^2}{a^2}+\dfrac{(y-q)^2}{b^2}=1$

これは中心が $(p,q)$ の楕円になります.

楕円の媒介変数表示と面積

単位円 $x^{2}+y^{2}=1$ の媒介変数表示は,三角関数の定義より

$\begin{cases}x=\cos\theta \\ y=\sin\theta \end{cases}$

とできますね.楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ に関しては

$\begin{cases}\dfrac{x}{a}=\cos\theta \\ \dfrac{y}{b}=\sin\theta \end{cases}$

とできるので,媒介変数表示は以下のようになります.

楕円の媒介変数表示

楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ の媒介変数表示は

$\begin{cases}\boldsymbol{x=a\cos\theta} \\ \boldsymbol{y=b\sin\theta} \end{cases}$


この媒介変数表示を利用することで,楕円上の点を $(a\cos\theta,b\sin\theta)$ と $\theta$ の $1$ 変数でおけることにメリットがあります.

これより,楕円は単位円を $x$ 軸方向に $a$ 倍,$y$ 軸方向に $b$ 倍拡大したものであるとわかるので,楕円の面積は以下のようになります.

楕円の面積

楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ の面積 $S$ は

$\boldsymbol{S=ab\pi}$

例題と練習問題

例題

例題

(1) 楕円 $\dfrac{x^2}{16}+\dfrac{y^2}{9}=1$ の焦点の座標および長軸の長さ,短軸の長さ,面積を求めよ.また概形をかけ.

(2) $2$ 点 $(4,0)$,$(-4,0)$ を焦点とし,焦点までの距離の和が $10$ である楕円の方程式を求めよ.

(3) 楕円 $x^{2}+4y^{2}-4x-8y+4=0$ の焦点の座標および長軸の長さ,短軸の長さを求めよ.

(4) 楕円 $\dfrac{x^2}{16}+\dfrac{y^2}{9}=1$ 上の $2$ 定点を ${\rm A}(-4,0)$,${\rm B}(0,3)$ とする.直線 $\rm AB$ と動転 $\rm P$ の距離 $d$ の最大値を求めよ.


講義

(1)と(2)は楕円の定義と基本性質を使います.(3)は平方完成して標準形を平行移動した形にします.(4)は $\rm P$ の座標を媒介変数で表します.


解答

(1)

焦点は $\sqrt{16-9}=\sqrt{7}$ より,座標は $\boldsymbol{(\sqrt{7},0),(-\sqrt{7},0)}$.長軸は $\boldsymbol{8}$,短軸は $\boldsymbol{6}$,面積は $\boldsymbol{12\pi}$.

概形は

例題(1)

(2)

楕円を $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ $(a > b >0)$ とおくと

$\begin{cases}\sqrt{a^{2}-b^{2}}=4 \\ 2a=10 \end{cases}$

これを解くと $a=5$,$b=3$ より,求める楕円の方程式は

$\boldsymbol{\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}{9}=1}$

軌跡の問題として解いて導くことも可能ですが少し大変です.


(3)

 $x^{2}+4y^{2}-4x-8y+4=0$

$\Longleftrightarrow \ (x-2)^{2}+4(y-1)^{2}=4$

$\Longleftrightarrow \ \dfrac{(x-2)^{2}}{4}+(y-1)^{2}=1$

例題(3)

中心の座標が $(2,1)$ なので,焦点の座標は $\boldsymbol{(2+\sqrt{3},1),(2-\sqrt{3},1)}$.長軸は $\boldsymbol{4}$,短軸は $\boldsymbol{2}$.


(4)

$\rm P$ の座標を $(4\cos\theta,3\sin\theta)$ $(0\leqq \theta < 2\pi)$ とおく.

直線 $\rm AB$ は

$y=\dfrac{3}{4}x+3 \ \Longleftrightarrow \ 3x-4y+12=0$

例題(4)

直線 $\rm AB$ と $\rm P$ との距離 $d$ は

 $d$

$=\dfrac{|12\cos\theta-12\sin\theta+12|}{5}$ ←点と直線の距離

$=\dfrac{12}{5}\left|\sqrt{2}\left(\cos\theta \cdot \dfrac{1}{\sqrt{2}}-\sin\theta \cdot \dfrac{1}{\sqrt{2}}\right)+1\right|$ ←三角関数の合成

$=\dfrac{12}{5}\left|\sqrt{2}\left(\cos\theta\cos \dfrac{\pi}{4}-\sin\theta \sin\dfrac{\pi}{4}\right)+1\right|$

$=\dfrac{12}{5}\left|\sqrt{2}\cos\left(\theta+\dfrac{\pi}{4}\right)+1\right|$

$\theta=\dfrac{7}{4}\pi$ のとき最大値 $\boldsymbol{\dfrac{12\sqrt{2}+12}{5}}$

※ もちろん $\sin$ で合成でもOKです.

練習問題

練習

(1) 楕円 $25x^{2}+9y^{2}+50x-36y-164=0$ の焦点の座標および長軸の長さ,短軸の長さを求めよ.

(2) 楕円 $\dfrac{x^2}{9}+\dfrac{y^2}{4}=1$ の $2$ 定点を ${\rm A}(0,-2)$,${\rm B}(3,0)$ とする.動転 $\rm P$ を頂点とする $\triangle {\rm PAB}$ の面積の最大値を求めよ.

(3) $k$ は定数とする.楕円 $\dfrac{x^{2}}{4}+y^{2}=1$ と直線 $x+\sqrt{3}=ky$ の共有点を $\rm P$,$\rm P'$ とする.また楕円の $2$ つの焦点を ${\rm F}(\sqrt{3},0)$,${\rm F}'(-\sqrt{3},0)$ とする.$\triangle {\rm PP'F}$ の周りの長さを求めよ.

練習の解答

(1)

 $25x^{2}+9y^{2}+50x-36y-164=0$

$\Longleftrightarrow \ 25(x+1)^{2}+9(y+2)^{2}=225$

$\Longleftrightarrow \ \dfrac{(x+1)^{2}}{9}+\dfrac{(y-2)^{2}}{25}=1$

中心の座標が $(-1,2)$ なので,焦点の座標は $\boldsymbol{(-1,6),(-1,-2)}$.長軸は $\boldsymbol{10}$,短軸は $\boldsymbol{6}$.


(2)

$\rm P$ の座標を $(3\cos\theta,2\sin\theta)$ $(0\leqq \theta < 2\pi)$ とおく.

$\overrightarrow{\mathstrut \rm AB}=(3,2)$,$\overrightarrow{\mathstrut \rm AP}=(3\cos\theta,2\sin\theta+2)$ より

 $\displaystyle \triangle{\rm PAB}$

$=\dfrac{1}{2}\left|3(2\sin\theta+2)-2\cdot3\cos\theta\right|$ ←面積公式

$=\left|3\sin\theta-3\cos\theta+3\right|$

$=\left|3\sqrt{2}\sin\left(\theta-\dfrac{\pi}{4}\right)+3\right|$

$\theta=\dfrac{3}{4}\pi$ のとき最大値 $\boldsymbol{3\sqrt{2}+3}$


(3) 出典:2015北里大医学部改

練習(3)

$k$ がどんな値でも直線は $(-\sqrt{3},0)$ すなわち ${\rm F}$ を通る.

楕円の定義より

${\rm PF'+PF}=4$,${\rm P'F+P'F'}=4$

より $\triangle {\rm PP'F}$ の周りの長さは

${\rm PF'+P'F'+P'F+PF}=\boldsymbol{8}$