関数の平行移動
2次関数(教科書範囲) ★★
関数の平行移動について扱います.
関数全般を扱いますが,特に2次関数の平行移動について重点的に扱います.
2次関数の平行移動の仕方
Ⅰの方がわかりやすいので,2次関数ではⅠで平行移動することが多いです.
そのうち3次関数や三角関数といった関数を考えることがありますが,それらすべての関数に適用できるのが次の章で紹介する公式です.
関数の平行移動の公式と証明
関数の平行移動
関数 $y=f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動したグラフを表す関数は
$\boldsymbol{y=f(x-p)+q}$
証明
関数 $y=f(x)$ のグラフ上の任意の点を ${\rm P}(a,b)$ とする.これを $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動した点を ${\rm Q}(c,d)$ とすると
$\begin{cases}c=a+p \\ d=b+q\end{cases} \Longleftrightarrow \begin{cases}a=c-p \\ b=d-q\end{cases}$
となる. ${\rm P}(a,b)$ は関数 $y=f(x)$ 上にあるという式から
$b=f(a)$
$\Longleftrightarrow d-q=f(c-p)$
$\Longleftrightarrow d=f(c-p)+q$
これは ${\rm Q}$ が関数 $y=f(x-p)+q$ 上にあることを意味する.
これより関数 $y=f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動したグラフを表す関数は $y=f(x-p)+q$ である.
すべての関数に適用できるので,高校数学を学ぶ上ではよく登場する公式です.
例題と練習問題
例題
例題
(1) 放物線 $y=2x^{2}-8x$ を $x$ 軸方向に $1$,$y$ 軸方向に $-2$ だけ平行移動して得られる放物線を求めよ.
(2) 放物線 $y=x^{2}-10x+8$ をどのように平行移動すると 放物線 $y=x^{2}+4x+3$ になるか.
(3) 放物線 $y=x^{2}+bx+1$ を $x$ 軸方向に $1$,$y$ 軸方向に $2$ だけ平行移動した放物線は原点を通る.$b$ の値を求めよ.
講義
2次関数の平行移動の仕方にある2通りでどれも解けますが,Ⅰの頂点の移動で考える方法が楽なことが多いです.
例題,練習問題どちらも楽だと思われる解法で解きます.
解答
(1)
$y$
$=2x^{2}-8x$
$=2(x-2)^{2}-8$
より頂点は $(2,-8)$.これが平行移動により $(3,-10)$ に移るので求める放物線は
$\boldsymbol{y=2(x-3)^{2}-10}$
※ 平行移動しても変わらないのは先頭の係数です.これは知っておく必要があります.
(2)
$y$
$=x^{2}-10x+8$
$=(x-5)^{2}-17$ 頂点 $(5,-17)$
$y$
$=x^{2}+4x+3$
$=(x+2)^{2}-1$ 頂点 $(-2,-1)$
以上より $\boldsymbol{x}$ 軸方向に $\boldsymbol{-7}$,$\boldsymbol{y}$ 軸方向に $\boldsymbol{16}$ 平行移動した.
※ 頂点の移動で考えると楽です.
(3)
$f(x)=x^{2}+bx+1$ とする.これを $x$ 軸方向に $1$,$y$ 軸方向に $2$ だけ平行移動した放物線は
$\boldsymbol{y}$
$\boldsymbol{=f(x-1)+2}$
$=(x-1)^{2}+b(x-1)+1+2$
$=x^{2}+(b-2)x+4-b$
原点を通るので $0=4-b \Longleftrightarrow \boldsymbol{b=4}$
※ 頂点の移動で考えるよりも関数の平行移動の公式を使った方が楽です.
練習問題
練習
(1) 放物線 $y=\dfrac{1}{2}x^{2}+x+\dfrac{3}{2}$ を $x$ 軸方向に $-2$,$y$ 軸方向に $3$ だけ平行移動して得られる放物線を求めよ.
(2) 放物線 $y=-x^{2}+8$ をどのように平行移動すると 放物線 $y=-x^{2}+4x-5$ になるか.
(3) 放物線 $y=2x^{2}+bx-1$ を $x$ 軸方向に $-1$,$y$ 軸方向に $3$ だけ平行移動した放物線は原点を通る.$b$ の値を求めよ.
解答
(1)
$y$
$=\dfrac{1}{2}x^{2}+x+\dfrac{3}{2}$
$=\dfrac{1}{2}(x+1)^{2}+1$
より頂点は $(-1,1)$.これが平行移動により $(-3,4)$ に移るので求める放物線は
$\boldsymbol{y=\dfrac{1}{2}(x+3)^{2}+4}$
(2)
$y$
$=-x^{2}+8$ 頂点 $(0,8)$
$y$
$=-x^{2}+4x-5$
$=-(x-2)^{2}-1$ 頂点 $(2,-1)$
以上より $\boldsymbol{x}$ 軸方向に $\boldsymbol{2}$,$\boldsymbol{y}$ 軸方向に $\boldsymbol{-9}$ 平行移動した.
(3)
$f(x)=2x^{2}+bx-1$ とする.これを $x$ 軸方向に $-1$,$y$ 軸方向に $3$ だけ平行移動した放物線は
$\boldsymbol{y}$
$\boldsymbol{=f(x+1)+3}$
$=2(x+1)^{2}+b(x+1)-1+3$
$=2x^{2}+(4+b)x+4+b$
原点を通るので $0=4+b \Longleftrightarrow \boldsymbol{b=-4}$