一般の分数関数のグラフの書き方
微分(数学Ⅲ)(教科書範囲) ★★★

1次分数関数ではない,一般の分数関数(分母と分子が多項式)のグラフの書き方について扱います.増減や凹凸,漸近線等幅広く知識を問えるので,総合的な問題です.
漸近線についてもこのページで解説します.
分数関数のグラフを書く上で注意すること
分数関数のグラフを書く上で,以下の事項について注意するといいと思います.
分数関数のグラフを書く上で注意すること
・要求されているのが増減までか,凹凸までか.
→凹凸まで要求される場合は問題文に書いてあるケースが大半です.
・定義域,漸近線(縦).
→ 例えば $y=\dfrac{x^2}{x+1}$ は分母が $0$ になるときが不連続点であり,縦の漸近線になります.$y=\dfrac{x}{x^{2}+1}$ 等は縦の漸近線がありません.
・$x \to \pm\infty$ の極限.漸近線(斜め,横).
→ 基本的に横漸近線か(横漸近線は $x \to \pm\infty$ で調べる),斜め漸近線のどちらかがあります(こちらは後述します).縦は $x \to \pm a$ で $\infty$ (または $-\infty$ )となれば $x=a$ が縦漸近線となる.
・対称性は利用できるか.偶関数か,奇関数でないか.
→ 偶関数ならば $y$ 軸対称.奇関数ならば原点対称であることを利用すると楽にグラフが書けます(必ず利用しなければならないというわけではありません).
漸近線(縦)
漸近線とは,その関数が近づく直線のことをいいます.大きく分けて縦と斜め(横)の2種類ですが,それぞれ極限をとって確認します.
縦の漸近線( $y$ 軸に平行な漸近線)の存在は以下の極限で確認します.
漸近線(縦)
・$\displaystyle \lim_{x \to a+0}f(x)=\infty$
・$\displaystyle \lim_{x \to a+0}f(x)=-\infty$
・$\displaystyle \lim_{x \to a-0}f(x)=\infty$
・$\displaystyle \lim_{x \to a-0}f(x)=-\infty$
以上のいずれかを満たすとき,$x=a$ は $y=f(x)$ の漸近線.
漸近線(斜め,横)の出し方
斜め(横を含む)の漸近線は以下のように出すのが一般的です.
漸近線(斜め,横)の準備
・分数関数 $\dfrac{Q(x)}{P(x)}$ を仮分数状態(分子の方が次数が高い状態)から
$\dfrac{Q(x)}{P(x)}=l(x)+\dfrac{c}{P(x)}$
のように帯分数化する( $P(x)$ が1次式なら $c$ は定数).
$x \to \pm\infty$ なら $\dfrac{Q(x)}{P(x)} \to l(x)$ より $l(x)$ が1次関数なら斜め漸近線,定数なら横の漸近線.
小学生の算数のとき,$\dfrac{15}{7}=2\dfrac{1}{7}$ のように仮分数を帯分数にした経験があるはずですがそれと同様のことをします.
記述のときには,以下のように極限をとって $l(x)$ が漸近線であることを主張します.
漸近線(斜め,横)の主張の仕方
・分数関数 $\dfrac{Q(x)}{P(x)}$ に関して
$\displaystyle \lim_{x \to \pm\infty}\left\{\dfrac{Q(x)}{P(x)}-l(x)\right\}=0$
を満たすとき,$l(x)$ が1次式または定数ならば,$y=l(x)$ が漸近線.
色々な関数と漸近線の例
関数 | 漸近線 (縦) |
漸近線 (斜め,横) |
$y=\dfrac{2x-1}{x-1}$ (1次分数関数) |
$x=1$ | $y=2$ |
$y=\dfrac{x^{2}}{x+1}$ (一般の分数関数) |
$x=-1$ | $y=x-1$ |
$y=\sqrt{x^{2}-1}$ (双曲線) |
無し | $y=x$ |
$y=2^{x}$ (指数関数) |
無し | $y=0$ ( $x$ 軸) |
$y=\log x$ (対数関数) |
$x=0$ ( $y$ 軸) | 無し |
一般の分数関数に関しては,漸近線(縦),漸近線(斜め,横)が常に存在するとは限らないので注意が必要です.
例題と練習問題
例題
例題
次の関数の増減と凹凸,漸近線を調べ,グラフの概形をかけ.
$y=\dfrac{x^{2}}{x+1}$
講義
最初に分子を分母で割って,漸近線を出すといいと思います.
解答
$x^2$ を $x+1$ で割ると商が $x-1$ で余りが $1$ より
$y=x-1+\dfrac{1}{x+1}$ $\cdots$ ①
$y'=\dfrac{2x(x+1)-x^2}{(x+1)^2}=\dfrac{x(x+2)}{(x+1)^2}$
$y''$ は①を2回微分すると楽です.
$y''=\left\{-(x+1)^{-2}\right\}'=\dfrac{2}{(x+1)^3}$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $+$ | $0$ | $-$ | × | $-$ | $0$ | $+$ |
$y''$ | $-$ | $-$ | $-$ | × | $+$ | $+$ | $+$ |
$y$ | $-4$ | × | $0$ |
①より
$\displaystyle \lim_{x \to \pm\infty}\left\{y-\left(x-1\right)\right\}=0$ から $y=x-1$ が漸近線.
$\displaystyle \lim_{x \to -1\pm0}y=\pm\infty$ より $x=-1$ が漸近線.
漸近線を意識してグラフを書くと以下のようになる.

※ $x=-1$ では定義できないので,増減表には×または/などを記します.
※ 漸近線は上のように極限をとって漸近線であることを主張します.
※ 先に漸近線を書いてからグラフを書くと綺麗に書けるのでオススメです.
練習問題
練習
次の関数の増減と凹凸,漸近線を調べ,グラフの概形をかけ.
$y=\dfrac{2x^{2}}{2x-1}$
練習の解答
$2x^2$ を $2x-1$ で割ると商が $x+\dfrac{1}{2}$ で余りが $\dfrac{1}{2}$ より
$y=x+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{4x-2}$ $\cdots$ ①
$y'=\dfrac{4x(2x-1)-4x^2}{(2x-1)^2}=\dfrac{4x(x-1)}{(2x-1)^2}$
$y''$ は①を2回微分すると
$y''=\left\{\dfrac{1}{2}(2x-1)^{-2}\cdot (-1)\cdot2\right\}'=\dfrac{4}{(2x-1)^3}$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $\dfrac{1}{2}$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $+$ | $0$ | $-$ | × | $-$ | $0$ | $+$ |
$y''$ | $-$ | $-$ | $-$ | × | $+$ | $+$ | $+$ |
$y$ | $0$ | × | $2$ |
①より
$\displaystyle \lim_{x \to \pm\infty}\left\{y-\left(x+\dfrac{1}{2}\right)\right\}=0$ なので $y=x+\dfrac{1}{2}$ が漸近線.
$\displaystyle \lim_{x \to \frac{1}{2}\pm0}y=\pm\infty$ より $x=\dfrac{1}{2}$ が漸近線.
漸近線を意識してグラフを書くと以下のようになる.
