1次分数関数
関数(教科書範囲) ★★
一般の分数関数の中でも分母と分子が $1$ 次式の分数関数 $y=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ と関連問題を扱います.当サイトでは1次分数関数と呼ぶことにします.
1次分数関数
1次分数関数
$\boldsymbol{y=\dfrac{k}{x-p}+q}$ $\boldsymbol{(k\neq0)}$ $\cdots$ 基本形
漸近線:$\boldsymbol{x=p}$,$\boldsymbol{y=q}$
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$\boldsymbol{y=\dfrac{ax+b}{cx+d}}$ $\boldsymbol{(c\neq0,ad-bc\neq0)}$ $\cdots$ 一般形
※ 基本形や一般形は当サイトのネーミングとします.名称自体は重要ではありません.
基本形は $y=\dfrac{k}{x}$ という中学生で扱った反比例のグラフを $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動しただけのグラフです.
一般形で出題されたら基本形にすることで漸近線がわかり,グラフが書きやすくなります.
以下では基本形について言及します.
1次分数関数のグラフと性質
先述したように,$y=\dfrac{k}{x}$ のグラフを平行移動しただけです.
1次分数関数のグラフ
関数 $y=\dfrac{k}{x-p}+q$ $(k\neq0)$ のグラフは
$k>0$ のとき
$k<0$ のとき
最後にまとめです.
1次分数関数の性質
関数 $y=\dfrac{k}{x-p}+q$ $(k\neq0)$ は以下の性質をもつ.
Ⅰ $y=\dfrac{k}{x}$ を $x$ 軸方向に $p$,$y$ 軸方向に $q$ 平行移動した直角双曲線(2つの漸近線が直角に交わる双曲線).
Ⅱ $x=p$,$y=q$ が漸近線.
Ⅲ 定義域は $x\neq p$,値域は $y\neq q$.
1次分数関数が直角双曲線である理由
1次分数関数が直角双曲線である理由
1次分数関数 $y=\dfrac{k}{x-p}+q$ $(k\neq0)$ は $y=\dfrac{k}{x}$ を平行移動しただけなので,$y=\dfrac{k}{x}$ が双曲線になることを示せば十分ですが,複素数の回転を使って回転させると示すことができます.
$y=\dfrac{k}{x}$ 上の点 $\left(t,\dfrac{k}{t}\right)$ を原点を中心に $\dfrac{\pi}{4}$ 回転させた点を $(X,Y)$ とする.これらを複素数平面上の点で考えると
$X+Yi$
$=\left(t+\dfrac{k}{t}i\right)\left(\cos\dfrac{\pi}{4}+i\sin\dfrac{\pi}{4}\right)$
$=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\left(t+\dfrac{k}{t}i\right)\left(1+i\right)$
$=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\left\{t-\dfrac{k}{t}+\left(t+\dfrac{k}{t}\right)i\right\}$
となるので
$\begin{cases}X=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\left(t-\dfrac{k}{t}\right) \\ Y=\dfrac{1}{\sqrt{2}}\left(t+\dfrac{k}{t}\right)\end{cases}$
これより
$X^{2}-Y^{2}$
$=\dfrac{1}{2}\left\{\left(t-\dfrac{k}{t}\right)^{2}-\left(t+\dfrac{k}{t}\right)^{2}\right\}$
$=-2k$
$\therefore \ \dfrac{X^2}{2k}-\dfrac{Y^2}{2k}=-1$
双曲線であることが示ましたが,漸近線は $y=\pm x$ なので,さらに直角双曲線であることがわかります.
例題と練習問題
例題
例題
(1) 関数 $y=\dfrac{2x+5}{x+2}$ のグラフをかけ.
(2) 不等式 $\dfrac{2x+5}{x+2}>x+4$ を解け.
講義
(1)では基本形にして漸近線を判断してグラフを書きます.
(2)のような不等式の問題では,グラフから判断するのが基本です.$y=x+4$ のグラフも書き,$y=\dfrac{2x+5}{x+2}$ との共有点の座標を出します.
別解として $3$ 次不等式の問題として解く方法も紹介しました.
解答
(1)
$y=\dfrac{2x+5}{x+2}=\dfrac{2(x+2)+1}{x+2}=\dfrac{1}{x+2}+2$
※ グラフを書くときは先に漸近線を書くと綺麗に書けると思います.
(2)
共有点の $x$ 座標は
$\dfrac{2x+5}{x+2}=x+4$
両辺 $x+2$ をかけて整理すると
$x^{2}+4x+3=0$ $(x\neq-2)$
$\therefore \ x=-3$,$-1$
グラフから判断すると
$\boldsymbol{x<-3,-2<x<-1}$
別解両辺 $(x+2)^{2}$ かけると
$(2x+5)(x+2)>(x+4)(x+2)^{2}$
整理すると
$(x+3)(x+2)(x+1)<0$
$\therefore \ \boldsymbol{x<-3,-2<x<-1}$
※ $(x+2)^{2}>0$ なので,かけても不等号が変わらないのが最初のポイントです.両辺 $x+2$ をかけることでも解けますが,$x+2$ の符号がわからないので正か負かで場合分けが必要になり面倒です.
※ $y=(x+3)(x+2)(x+1)$ のグラフから判断するとわかりやすいですね.
練習問題
練習
不等式 $\dfrac{x}{x+1}<-x-\dfrac{3}{2}$ を解け.
練習の解答
$y=\dfrac{x}{x+1}=\dfrac{-1}{x+1}+1$
共有点の $x$ 座標は
$\dfrac{x}{x+1}=-x-\dfrac{3}{2}$
整理すると
$2x^{2}+7x+3=0$ $(x\neq-1)$
$\therefore \ x=-3$,$-\dfrac{1}{2}$
グラフから判断すると
$\boldsymbol{x<-3,-1<x<-\dfrac{1}{2}}$
別解両辺 $2(x+1)^{2}$ かけると
$2x(x+1)>-2(x+6)(x+1)^{2}$
整理すると
$(x+3)(x+1)(2x-1)<0$
$\boldsymbol{x<-3,-1<x<-\dfrac{1}{2}}$