関数の凹凸と変曲点
微分(数学Ⅲ)(教科書範囲) ★★

関数の凹凸と変曲点に関して,定義と基本的な性質を扱います.
下に凸の定義
関数の凹凸に関しては,高校と大学の教科書で記載している定義が様々です.下に凸の定義を(上に凸は不等号がその逆です)紹介します.
ポイント
関数が下に凸の定義を2通り紹介
Ⅰ

関数 $f(x)$ が区間 $I$ で,$x$ の値が増加すると接線の傾きが増加するとき, $f(x)$ は区間 $I$ で下に凸であるという.
Ⅱ

グラフの区間 $I$ の任意の2点を結ぶ線分がグラフより上方にあるとき,すなわち,関数 $f(x)$ の区間 $I$ の任意の2点 $a$,$b$,任意の $0< t<1$ に対して
$f(ta+(1-t)b)\leqq tf(a)+(1-t)f(b)$
を満たすとき,$f(x)$ は区間 $I$ で下に凸であるという.
※ グラフの区間 $I$ の任意の接線に対して,グラフが接線より下側にないとき,すなわち,区間 $I$ の $x=c$ の近くの $x\neq c$ のすべての $x$ に対して,$f(x)\geqq f'(c)(x-c)+f(c)$ を満たすことを下に凸の定義にしているケースもありますが,少数です.
※ Ⅱの不等式の $\leqq$ を $<$ に変えたものを狭義の下に凸ということがあります.その場合Ⅱは広義の下に凸と言います.
高校の教科書ではⅠが採用されていることが多いです.これは微分可能であることが前提で,それを不問にした定義がⅡです.大学以降ではⅡが多い印象です.
これを踏まえ以下の事実が確認できます.
ポイント
関数が下に凸の性質
区間 $I$ を含む開区間において,関数 $f(x)$ の第2次導関数 $f''(x)$ が存在するとする.区間 $I$ において
$\boldsymbol{f''(x) \geqq 0}$ $\boldsymbol{\Longleftrightarrow}$ $\boldsymbol{f(x)}$ は下に凸 $\cdots$ ☆
$\boldsymbol{f''(x) \leqq 0}$ $\boldsymbol{\Longleftrightarrow}$ $\boldsymbol{f(x)}$ は上に凸 $\cdots$ ♪
Ⅰの定義と☆が同じことを言っているのは明白です.さらにⅡの定義から☆が示せることを確認できますので,下に格納しました(意欲的な人向けです).
Ⅱから☆の証明
Ⅱの定義の書き換え
まずⅡの定義の不等式を書き換えます.定義の $a$,$b$ に関して $a<b$ と仮定しても一般性を失わない.ここで
$c=ta+(1-t)b$
とおくと
$f(c) \leqq tf(a)+(1-t)f(b)$
$\Longleftrightarrow \ \{t+(1-t)\}f(c) \leqq tf(a)+(1-t)f(b)$
$\Longleftrightarrow \ t\{f(c)-f(a)\} \leqq (1-t)\{f(b)-f(c)\}$
$\Longleftrightarrow \ \dfrac{f(c)-f(a)}{1-t} \leqq \dfrac{f(b)-f(c)}{t}$
$\Longleftrightarrow \ \dfrac{f(c)-f(a)}{c-a} \leqq \dfrac{f(b)-f(c)}{b-c}$
となる(最後に,$t=\dfrac{b-c}{b-a}$,$1-t=\dfrac{c-a}{b-a}$ とした).この準備のもと,Ⅱと☆の同値の証明をする.
Ⅱから☆の証明
(ⅰ) $f''(x) \geqq 0$ $\Longrightarrow$ $f(x)$ は下に凸 の証明
区間 $I$ の任意の2点 $a$,$b$ をとる.$a<b$ と仮定して一般性を失わない.さらに任意の $0< t<1$ に対して
$c=ta+(1-t)b$
とおく.このとき $a<c<b$ である.
区間 $[a,c]$ に平均値の定理を使うと
$\dfrac{f(c)-f(a)}{c-a}=f'(p)$, $a<p<c$
を満たす $p$ が存在する.同様に,区間 $[c,b]$ に平均値の定理を使うと
$\dfrac{f(b)-f(c)}{b-c}=f'(q)$, $c<q<b$
を満たす $q$ が存在する.仮定 $f''(x)\geqq 0$ によって $f'(x)$ は増加(非減少)である.ゆえに $p<q$ によって
$f'(p) \leqq f'(q)$
$\therefore \ \dfrac{f(c)-f(a)}{c-a} \leqq \dfrac{f(b)-f(c)}{b-c}$
したがって,下に凸である.
(ⅱ) $f(x)$ は下に凸 $\Longrightarrow$ $f''(x) \geqq 0$ の証明
関数 $f(x)$ が下に凸であるとする.区間 $I$ の任意の2点 $a$,$b$ をとる.$a<b$ と仮定して一般性を失わない.さらに $c$ を区間 $(a,b)$ の任意の点とすれば
$c=ta+(1-t)b$
を満たす $t$ ($0< t<1$)が存在する.下に凸の書き換えた定義より
$\dfrac{f(c)-f(a)}{c-a} \leqq \dfrac{f(b)-f(c)}{b-c}$
が成り立つ.
ここで最左辺において $c \to a+0$ とすると,仮定により $f(x)$ は微分可能より
$\displaystyle \lim_{c \to a+0}\dfrac{f(c)-f(a)}{c-a}=f'(a)$
また最右辺において $c \to b-0$ とすると同様に
$\displaystyle \lim_{c \to b-0}\dfrac{f(b)-f(c)}{b-c}=f'(b)$
が成り立つので
$f'(a)\leqq f'(b)$
であることがわかる.これより $f'(x)$ は増加(非減少)関数であるから,$f''(x)\geqq 0$ が成り立つ.
変曲点の定義
ポイント
変曲点の定義
曲線の凹凸が変わる境の点を変曲点という.
詳しく述べると,下に凸から上に凸,または上に凸から下に凸への変化が起こる点のことをいいます.つまり,次のことが成り立ちます.
ポイント
変曲点の性質
関数 $f(x)$ は $x=a$ を含む開区間で第2次導関数 $f''(x)$ をもち,$f''(x)$ は連続であるとする.
$\boldsymbol{(a,f(a))}$ が $\boldsymbol{y=f(x)}$ の変曲点 $\boldsymbol{\Longrightarrow}$ $\boldsymbol{f''(a) = 0}$
これの逆は一般には成り立ちません.$f(x)=x^4$ は $f''(0)=0$ を満たしますが,前後の $f''(x)$ の符号変化が起きないので変曲点ではありません.
例題と練習問題
例題
例題
次の曲線の凹凸を調べ,変曲点を求めよ.
$y=x^{3}-3x$
講義
2回微分をして,凹凸表を書いて,$y''$ の符号変化を観察します.
解答
$y'=3x^{2}-3$
$y''=6x$
凹凸表は
$x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|
$y''$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$y$ | $\cap$ | $0$ | $\cup$ |
$\boldsymbol{x<0}$ のとき,上に凸.
$\boldsymbol{x>0}$ のとき,下に凸.
変曲点は $\boldsymbol{\left(0,0\right)}$
※ 普通増減表の中に凹凸の要素を盛り込むので,凹凸表という言葉はあまり聞かないと思いますが,上に凸か下に凸かわかればいいと思います.
※ ちなみにグラフは極大値,極小値の定義にあるように以下のようになる.凹凸が確認できる.

練習問題
練習
次の曲線の凹凸を調べ,変曲点を求めよ.
$y=x^{2}e^{-x}$
練習の解答
$y'=2xe^{-x}-x^{2}e^{-x}=x(2-x)e^{-x}$
$y''$
$=(2-x)e^{-x}-xe^{-x}-x(2-x)e^{-x}$
$=(x^{2}-4x+2)e^{-x}$
凹凸表は
$x$ | $\cdots$ | $2-\sqrt{2}$ | $\cdots$ | $2+\sqrt{2}$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$y''$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$y$ | $\cup$ | $(6-4\sqrt{2})e^{-2+\sqrt{2}}$ | $\cap$ | $(6+4\sqrt{2})e^{-2-\sqrt{2}}$ | $\cup$ |
$\boldsymbol{x<2-\sqrt{2},2+\sqrt{2}<x}$ のとき,下に凸.
$\boldsymbol{2-\sqrt{2}< x< 2+\sqrt{2}}$ のとき,上に凸.
変曲点は $\boldsymbol{\left(2\pm\sqrt{2},(6\pm4\sqrt{2})e^{-2\mp\sqrt{2}}\right)}$ (複号同順)