極大値,極小値の定義
微分(数学Ⅱ,Ⅲ)(教科書範囲) ★★

数学Ⅱ,数学Ⅲ共通ページです.
極値(極大値,極小値)について扱います.
数学Ⅱの微分を勉強中の方は,3章までです.
極大値,極小値の定義
極大値,極小値の定義
関数 $f(x)$ において,点 $a$ を含む十分小さい開区間で
$x\neq a$ $\Longrightarrow$ $f(x)< f(a)$
が成り立つとき,$x=a$ で極大であるといい,$f(a)$ を極大値という.
$x\neq a$ $\Longrightarrow$ $f(x)> f(a)$
が成り立つとき,$x=a$ で極小であるといい,$f(a)$ を極小値という.
グラフを局所的に見たときの最大が極大,局所的に見たときの最小が極小になります.
小さく区間を取りますが,開区間でとるのが重要です(閉区間だと,その区間で最大最小をもってしまいます)
極大,極小の例
実際に極大,極小の例を,少し極端な場合も含めて見ていきます.
$f'(x)=0$ である点が極値とは限らない

$f'(x)=0$ であると接線の傾きが $0$ になるので,極値になると思っている人がいますが,前後のグラフの増減を見てみないと判断できません.上の図の $y=x^{5}-\dfrac{5}{3}x^{3}$ では,$x=0$ で極値になりません.
微分可能であり,$\boldsymbol{f'(x)}$ の符号が変化する点は極値になります.
補足:停留値
$f'(x)=0$ をみたす $x=x_{0}$ を停留点,$f(x_{0})$ を停留値と大学の教科書では記載されていたりします.つまり停留値が極値とは限りません.
上の $y=x^{5}-\dfrac{5}{3}x^{3}$ では
$x=\pm 1$ では停留値かつ極値
$x=0$ では停留値
となります.
折れた点では微分できないが,極値になりうる

絶対値で表された関数など,折れた点では微分ができません(詳しくは,数学Ⅲの微分可能であるとはにあります).
上の図の $y=|x^{2}-1|$ でいうと,$x=\pm 1$ では微分できませんが,小さく開区間をとると最小値になるので,極小値になることがいえます.
微分できることは,極値をもつことの必要条件ではありません.
連続でなくても極値になりうる.

高校の検定教科書では連続に限定していると思いますが,一般には連続でなくても,極値をとります.あまり出題されない例ですが.
$\boldsymbol{f'(x)}$ の符号変化が起きただけでは,極大,極小を判断できません.
例題と練習問題(数学Ⅱ)
例題
例題
次の関数の極値を求め,グラフをかけ.
$y=x^{3}-3x$
講義
微分をして,増減表を書いて,それをもとにグラフを書いていきます.
解答
$y'=3x^{2}-3=3(x+1)(x-1)$ より
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$y$ | ↗︎ | $2$ | ↘︎ | $-2$ | ↗︎ |
$\boldsymbol{x=-1}$ のとき,極大値 $\boldsymbol{2}$
$\boldsymbol{x=1}$ のとき,極小値 $\boldsymbol{-2}$
グラフは

のようになる.
練習問題
練習1
次の関数の極値を求め,グラフをかけ.
(1) $y=-x^{3}-6x^{2}-9x-4$
(2) $y=|-x^{3}-6x^{2}-9x-4|$
練習1の解答
(1)
$y'=-3x^{2}-12x-9=-3(x+3)(x+1)$ より
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $-3$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $-$ |
$y$ | ↘︎ | $-4$ | ↗︎ | $0$ | ↘︎ |
$\boldsymbol{x=-1}$ のとき,極大値 $0$
$\boldsymbol{x=-3}$ のとき,極小値 $-4$
また $y=-x^{3}-6x^{2}-9x-4=-(x+4)(x+1)^{2}$ より グラフは

のようになる.
(2) 絶対値は中身が正ならばそのまま外し,負ならば $-1$ 倍して外します.
$y=|-x^{3}-6x^{2}-9x-4|$
$=\begin{cases} -x^{3}-6x^{2}-9x-4 \ \ (x\leqq-4) \\ x^{3}+6x^{2}+9x+4 \ \ \ (x>-4)\end{cases}$
(1)のグラフを $x>-4$ では $x$ 軸に関して折り返すようにグラフを書くと

のようになる.
$\boldsymbol{x=-3}$ のとき,極大値 $4$
$\boldsymbol{x=-4,-1}$ のとき,極小値 $0$
練習問題(数学Ⅲ)
数学Ⅲの場合も本質的に同じですが,増減表を書くうえで,定義域がすべての実数でない可能性があるので注意です.
練習2
次の関数の極値を求めよ.
(1) $y=x\log x$
(2) $y=|x-1|e^{-x}$
(3) $y=\cos x(1+\sin x)$ $(0\leqq x \leqq 2\pi)$
練習2の解答
(1)
真数条件より $x>0$.
$y'=\log x +1$ より
増減表は
$x$ | $0$ | $\cdots$ | $\dfrac{1}{e}$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|
$y'$ | × | $-$ | $0$ | $+$ |
$y$ | × | ↘︎ | $-\dfrac{1}{e}$ | ↗︎ |
$\boldsymbol{x=\dfrac{1}{e}}$ のとき,極小値 $\boldsymbol{-\dfrac{1}{e}}$
(2)
$y=|x-1|e^{-x}=\begin{cases}(x-1)e^{-x} \ \ (x\geqq1) \\ (1-x)e^{-x} \ \ (x<1) \end{cases}$
ここで $\{(x-1)e^{-x}\}'=e^{-x}-(x-1)e^{-x}=(2-x)e^{-x}$ より
$y'=\begin{cases}(2-x)e^{-x} \ \ (x\geqq1) \\ (x-2)e^{-x} \ \ (x<1) \end{cases}$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $2$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $-$ | × | $+$ | $0$ | $-$ |
$y$ | ↘︎ | $0$ | ↗︎ | $\dfrac{1}{e^2}$ | ↘︎ |
$\boldsymbol{x=2}$ のとき,極大値 $\boldsymbol{\dfrac{1}{e^2}}$
$\boldsymbol{x=1}$ のとき,極小値 $\boldsymbol{0}$
※ $x=1$ の前後の左側微分係数と右側微分係数が一致しないので,$x=1$ では微分不可能です.
(3)
$y'$
$=-\sin x(1+\sin x)+\cos^{2}x$
$=-2\sin^{2}x-\sin x+1$
$=-(2\sin x-1)(\sin x+1)$
増減表は
$x$ | $0$ | $\cdots$ | $\dfrac{\pi}{6}$ | $\cdots$ | $\dfrac{5\pi}{6}$ | $\cdots$ | $\dfrac{3\pi}{2}$ | $\cdots$ | $2\pi$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
$y'$ | $+$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $+$ | × |
$y$ | $1$ | ↗︎ | $\dfrac{3\sqrt{3}}{4}$ | ↘︎ | $-\dfrac{3\sqrt{3}}{4}$ | ↗︎ | $0$ | ↗︎ | × |
$\boldsymbol{x=\dfrac{\pi}{6}}$ のとき,極大値 $\boldsymbol{\dfrac{3\sqrt{3}}{4}}$
$\boldsymbol{x=\dfrac{5\pi}{6}}$ のとき,極小値 $\boldsymbol{-\dfrac{3\sqrt{3}}{4}}$
※ $x=\dfrac{3\pi}{2}$ は前後の増減の符号変化がないので極値ではありません.