一般項が求めにくい漸化式の極限
極限(入試の標準) ★★★★
一般項が求められる漸化式ならばそれを解けば極限を容易に考えることができます.
今回は一般項が求められない,求めるのが困難な漸化式で表された数列の極限を扱います.
一般項が求めにくい漸化式の極限の出し方
一般項が求めにくい漸化式の極限の出し方
STEP1:漸化式を $a_{n+1}=f(a_{n})$ としたとき,$y=f(x)$ と $y=x$ の図を書いて,極限値 $\alpha$ を探る(方程式 $\alpha=f(\alpha)$ を解く).
STEP2:$\color{red}{|a_{n+1}-\alpha| \leqq r|a_{n}-\alpha|}$ $\color{red}{(0< r < 1)}$ の式を作る(式変形,数学的帰納法,平均値の定理等で示す).
STEP3:$\color{red}{0< |a_{n}-\alpha| \leqq r^{n-1}|a_{1}-\alpha|}$ の形を作って,はさみうちの原理で $\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_{n}=\alpha$ であることを示す.
STEP2と3が初学者には変形が難しく感じると思いますが,何回か解くと慣れると思います.
実際には図から判断して極限値が容易に予想できるものや,丁寧な誘導になっているのがほとんどです.
当ページでは,以下であえて誘導なしにすることで,プロセスを考えてほしいと思いました.
例題と練習問題
例題
例題
次の漸化式で表された数列 $\{a_{n}\}$ の極限を求めよ.
$a_{1}=2$,$a_{n+1}=\dfrac{1}{4}a_{n}^{2}+\dfrac{3}{4}$
講義
$y=\dfrac{1}{4}x^{2}+\dfrac{3}{4}$ と $y=x$ のグラフを書いて極限を考えます.$a_{1}=2$,$a_{2}=\dfrac{7}{4}$,$a_{3}=\dfrac{97}{64}$ と書き込んでいくと
図から $1$ に収束することがわかりそうです.
解答
$y=\dfrac{1}{4}x^{2}+\dfrac{3}{4}$ と $y=x$ のグラフを書くと
図から $1$ に収束することが予想でき,それが正しいことを示す.
$|a_{n+1}-1|$
$= \left|\dfrac{1}{4}a_{n}^{2}-\dfrac{1}{4}\right|$
$= \left|\dfrac{a_{n}+1}{4}(a_{n}-1)\right|$
$= \left|\dfrac{a_{n}+1}{4}\right| \left|a_{n}-1\right|$
ここで,$1< a_{n}\leqq 2$ であることを数学的帰納法で示す.
(ⅰ) $n=1$ のとき $a_{1}=2$ より $1< a_{n}\leqq 2$ である.
(ⅱ) $n=k$ のとき $1< a_{n}\leqq 2$ であると仮定する.
$n=k+1$ のとき
$1< a_{k}^{2}\leqq 4$
$\Longleftrightarrow \ \dfrac{1}{4}+\dfrac{3}{4}< \dfrac{1}{4}a_{k}^{2}+\dfrac{3}{4}\leqq 1+\dfrac{3}{4}$
$\therefore \ 1< a_{k+1}\leqq 2$
よりこのときも $1< a_{n}\leqq 2$ である.
(ⅰ)(ⅱ)よりすべての自然数 $n$ に関して $1< a_{n}\leqq 2$ である.
つまり
$|a_{n+1}-1|$
$= \left|\dfrac{a_{n}+1}{4}\right| \left|a_{n}-1\right|$
$\leqq \dfrac{3}{4}\left|a_{n}-1\right|$
これを繰り返し適用すると
$0\leqq |a_{n}-1|\leqq \left(\dfrac{3}{4}\right)^{n-1}\left|a_{1}-1\right|$
ここで $\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left(\dfrac{3}{4}\right)^{n-1}\left|a_{1}-1\right|=0$ より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}|a_{n}-1|=0$
$\displaystyle \therefore \ \lim_{n \to \infty}a_{n}=\boldsymbol{1}$
※ $|a_{n+1}-1|\leqq \dfrac{3}{4}\left|a_{n}-1\right|$ は,$a_{n+1}$ と $1$ との距離は,$a_{n}$ と $1$ との距離の $\dfrac{3}{4}$ 倍以下だという意味です.つまり $n$ が大きくなればなるほど $1$ との距離が近づくということですね.
※ 別解として $f(x)=\dfrac{1}{4}x^{2}+\dfrac{3}{4}$ として平均値の定理を使うと
$\begin{cases}\dfrac{f(a_{n})-f(1)}{a_{n}-1}=f'(c) \Longleftrightarrow \dfrac{a_{n+1}-1}{a_{n}-1}=\dfrac{c}{2} \\ 1<c<a_{n}\end{cases}$
を満たす $c$ が存在します.この場合も $c$ つまり $a_{n}\leqq2$ を言わないといけないので,労力は上とほぼ変わりませんね.
練習問題
練習
次の漸化式で表された数列 $\{a_{n}\}$ の極限を求めよ.
$a_{1}=0$,$a_{n+1}=\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}$
練習の解答
$y=\sqrt{\dfrac{x+1}{2}}$ と $y=x$ のグラフを書くと
図から $1$ に収束することが予想でき,それが正しいことを示す.
$|a_{n+1}-1|$
$= \left|\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}-1\right|$
$= \left|\left(\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}-1\right)\dfrac{\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}+1}{\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}+1}\right|$
$= \left|\dfrac{\dfrac{a_{n}-1}{2}}{\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}+1}\right|$
$= \left|\dfrac{a_{n}-1}{\sqrt{2a_{n}+2}+2}\right|$
$= \dfrac{1}{\sqrt{2a_{n}+2}+2}|a_{n}-1|$
$\leqq \dfrac{1}{2}\left|a_{n}-1\right|$
これを繰り返し適用すると
$0\leqq |a_{n}-1|\leqq \left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\left|a_{1}-1\right|$
ここで $\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}\left|a_{1}-1\right|=0$ より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}|a_{n}-1|=0$
$\displaystyle \therefore \ \lim_{n \to \infty}a_{n}=\boldsymbol{1}$
※ こちら一般項が出せないと思いきや,$a_{n}=\cos \theta_{n}$ とおいて,$a_{n+1}=\cos \theta_{n+1}=\sqrt{\dfrac{a_{n}+1}{2}}=\sqrt{\dfrac{2\cos^{2}\dfrac{\theta_{n}}{2}-1+1}{2}}$ とすれば $a_{n}$ の一般項が出せてしまいます.気になったら是非解いてみてください.