はさみうちの原理
極限(教科書範囲) ★★
はさみうちの原理と追い出しの原理を扱います.
はさみうちの原理と追い出しの原理
はさみうちの原理
数列 $\{a_{n}\}$,$\{b_{n}\}$,$\{c_{n}\}$ があり,$b_{n}\leqq a_{n} \leqq c_{n}$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を 満たしていて,さらに $\displaystyle \ \lim_{n \to \infty} b_{n}=\lim_{n \to \infty} c_{n}=\alpha$ ( $\alpha$ は有限確定値)であるとき
$\displaystyle \ \lim_{n \to \infty} a_{n}=\alpha$
が成り立つ.このことをはさみうちの原理(squeeze theorem)と呼ばれることが多い.
※ theoremとあるようにこれは定理です.大学範囲では証明もできるのではさみうちの定理の方がしっくりきます(高校範囲では証明できないので原理という名が通っているのでしょうか).
$b_{n}$ と $c_{n}$ が $\alpha$ に収束するなら,間に挟まれた $a_{n}$ も $\alpha$ に収束するというわかりやすい概念です.今後極限を出す上で使用頻度が高いので,問題を解いて慣れましょう.
続いて,追い出しの原理と呼ばれる似た概念の紹介です.
追い出しの原理
数列 $\{a_{n}\}$,$\{b_{n}\}$ があり,$a_{n}\leqq b_{n}$ $(n=1,2,3,\cdots)$ を満たしていて,さらに $\displaystyle \ \lim_{n \to \infty} a_{n}=\infty$ であるとき
$\displaystyle \ \lim_{n \to \infty} b_{n}=\infty$
が成り立つ.このことを追い出しの原理と呼ばれることがある.
追い出しの原理は直感的には当たり前で特に話題にならないことが多いです.
はさみうちの原理も追い出しの原理も,その名称を特に答案に書く必要はありません.
例題と練習問題
例題
例題
次の極限を求めよ.
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{\sin n}{n}$
講義
直感的には,$0$ に収束するのがすぐわかりますが,はさみうちの原理を使ってきちんと示します.はさみうちの原理を使うには,不等式を自分で用意する必要があります.
解答
$-1\leqq \sin n \leqq 1$ より
$-\dfrac{1}{n}\leqq \dfrac{\sin n}{n} \leqq \dfrac{1}{n}$
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left(-\dfrac{1}{n}\right)=\lim_{n \to \infty}\dfrac{1}{n}=0$ より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{\sin n}{n}=\boldsymbol{0}$
練習問題
練習
(1) 実数 $x$ に対して,$[x]$ を $[x] \leqq x < [x]+1$ を満たす整数とする.このとき,$\displaystyle \lim_{n \to \infty} \dfrac{[n\pi]}{n}$を求めよ.
(2) $\displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{2n+\cos n\pi}{n-\cos n\pi}$ を求めよ.
練習の解答
(1)
$[n\pi] \leqq n\pi < [n\pi]+1$
$\Longleftrightarrow \ n\pi-1 <[n\pi] \leqq n\pi$
$\Longleftrightarrow \ \pi-\dfrac{1}{n} <\dfrac{[n\pi]}{n} \leqq \pi$
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left(\pi-\dfrac{1}{n}\right)=\pi$ より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{[n\pi]}{n}=\boldsymbol{\pi}$
※ $[ \ ]$ ですがガウス記号といいます.
(2)
$-1\leqq \cos n\pi \leqq 1$ より
$-\dfrac{1}{n}\leqq \dfrac{\cos n\pi}{n} \leqq \dfrac{1}{n}$
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left(-\dfrac{1}{n}\right)=\lim_{n \to \infty}\dfrac{1}{n}=0$ より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{\cos n\pi}{n}=0$
$\therefore \ \displaystyle \lim_{n \to \infty}\dfrac{2n+\cos n\pi}{n-\cos n\pi}=\lim_{n \to \infty}\dfrac{2+\dfrac{\cos n\pi}{n}}{1-\dfrac{\cos n\pi}{n}}=\boldsymbol{2}$