3次関数のブロック分割(4等分割)
数学ⅡB既習者(入試の標準) ★★★

3次関数の分類で,3次関数は①〜⑥の6種類あると言及しました.
定期試験や入試で頻出なのは当然①,④なので,ここでは①の構造解析をします.3次関数は下図のように,まるでブロックを当てはめるかのように割り当てることができます(ちなみにブロック分割や4等分割という名称は正式名称ではなく,当サイトの呼称です).
問題を解くときに有利ですし,穴埋め問題では高速で解答することができます.
数学Ⅲの知識は変曲点のみ必要です.
3次関数は8つの合同な平行四辺形を当てはめることができる
ポイント
3次関数のブロック分割(4等分割)
極値をもつ3次関数の接線とそれに平行なもう1つの接線を引く.接点,変曲点,交点のそれぞれの $x$ 座標は以下の図のように4等分できる.

3次関数は変曲点に関して点対称であることを意識して,変曲点を通る接線に平行な直線を引くと

上の図のように合同な8つの平行四辺形を割り当てることができる.
↓特に接点が極値のとき

上の図のように合同な8つの長方形を割り当てることができる.
※
まるで合同な四角形のブロックを当てはめることができるので,以上の分割をまとめてブロック分割と当サイトでは呼ぶことにします.
なぜこうなるのか
これを示すためには
(ⅰ) 接点の $x$ 座標と,接線と3次関数の交点の $x$ 座標を,$1:2$ に内分した点が変曲点の $x$ 座標である
(ⅱ) 3次関数は変曲点に関して点対称である
以上の2点が示せればいいはずです.(ⅱ)は3次関数の分類 で示していますので,(ⅰ)を以下に証明します.
(ⅰ)の証明

$y=ax^{3}+bx^{2}+cx+d$ の $x=\alpha$ での接線を $y=px+q$ とする.そして,$y=ax^{3}+bx^{2}+cx+d$ と $y=px+q$ の $x=\alpha$ 以外の交点の $x$ 座標を $\beta$ とします.
$\alpha$ や $\beta$ に関する式は
$ax^{3}+bx^{2}+cx+d=px+q$
$\displaystyle \Longleftrightarrow ax^{3}+bx^{2}+(c-p)x+d-q=0$
$\displaystyle \Longleftrightarrow a(x-\alpha)^2(x-\beta)=0$
解と係数の関係より
$\alpha+\alpha+\beta=-\dfrac{b}{a}$
$\displaystyle \Longleftrightarrow \dfrac{2\alpha+\beta}{3}=-\dfrac{b}{3a}$
これは $\alpha$ と $\beta$ を $1:2$ に内分する点が,変曲点の $x$ 座標( $y''=6ax+2b=0$ を満たす)であることを意味しています.
例題と練習問題
例題
例題
$f(x)=x^{3}-x^{2}-2x+1$ の区間 $x \leqq \dfrac{1+3\sqrt{3}}{3}$ における最大値を求めよ(答えのみでよい).
(2019埼玉医科大)
講義
スピードが求められるこの問題の入試においては,ブロック分割の有用性が確認できるはずです.
解答
$f'(x)=3x^{2}-2x-2$.
$f'(x)=0 \Longleftrightarrow x=\dfrac{1\pm \sqrt{7}}{3}$
ブロック分割を意識して図を書くと

$x=\dfrac{1-\sqrt{7}}{3}$ のとき最大をとることがわかる.
$f(x)$ を $3x^{2}-2x-2$ で割ると
$f(x)=(3x^{2}-2x-2)\left(\dfrac{1}{3}x-\dfrac{1}{9}\right)-\dfrac{14}{9}x+\dfrac{9}{7}$
最大値は
$f\left(\dfrac{1-\sqrt{7}}{3}\right)=0-\dfrac{14}{9}\cdot\dfrac{1-\sqrt{7}}{3}+\dfrac{7}{9}$
$=\boldsymbol{\dfrac{7+14\sqrt{7}}{27}}$
練習問題
練習
$f(x)=\cos3x+\cos2x+\cos x$ $(0\leqq x \leqq \pi)$ とおくとき,$f(x)$ の最小値を求めよ(答えのみでよい).
練習の解答 出典:2018福岡大医学部改
3倍角の公式を使います.
$f(x)=(4\cos^{3}x-3\cos x)+(2\cos^{2}x-1)+\cos x$
$=4\cos^{3}x+2\cos^{2}x-2\cos x-1$
ここで $t=\cos x$ とおくと
$f(x)=4t^{3}+2t^{2}-2t-1$
$\dfrac{df(x)}{dt}=12t^{2}+4t-2=2(6t^{2}+2t-1)$
$\dfrac{df(x)}{dt}=0 \Longleftrightarrow t=\dfrac{-1\pm \sqrt{7}}{6}$
$f(x)=4t^{3}+2t^{2}-2t-1$ $(-1\leqq t\leqq 1)$ のグラフを書くと

$\sqrt{7}\fallingdotseq 2.645$ (ルートの暗記)を踏まえると上のような図になり,$t=\dfrac{-1+\sqrt{7}}{6}$ のとき最小をとる.
$f(x)$ を $6t^{2}+2t-1$ で割ると
$f(x)=(6t^{2}+2t-1)\left(\dfrac{2}{3}t+\dfrac{1}{9}\right)-\dfrac{14}{9}t-\dfrac{8}{9}$
最小値は,$t=\dfrac{-1+\sqrt{7}}{6}$ を代入すると
$0-\dfrac{14}{9}\cdot\dfrac{-1+\sqrt{7}}{6}-\dfrac{8}{9}$
$=\boldsymbol{-\dfrac{17+7\sqrt{7}}{27}}$