テイラーの定理とその証明
タイプ:難関大対策 $+\alpha$ レベル:★★★★

このページでは,大学生というより理系の高校生,受験生向けにテイラーの定理を証明も含めて解説しました.
大学の微分では最重要概念と言われていて,そのため大学受験でもこれを背景とした問題が出ることが多々あります.
テイラーの定理までの大まかな流れ
大学の微分においては,テイラーの定理(テイラー展開)が重要で,高校数学でもその導入として平均値の定理まで扱うことになっています.
以下に,テイラーの定理までの証明の流れを書きました.
ポイント
このページは,テイラーの定理を扱います.
テイラーの定理とその証明
ポイント
テイラーの定理
関数 $f(x)$ は開区間 $I$ 上で $n$ 回微分可能な関数とし,$a \in I$ とする.このとき,$I$ 上のすべての $x$ について
$f(x)$
$\displaystyle =\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^{k}+\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^{n}$
となる実数 $c$ が $a$ と $x$ の間に存在する.
$f(x)$ が三角関数など,どんな関数でも,$x=a$ の近くでは多項式関数で近似できることに大きな意味があります.ここでの $f(x)$ の式を有限テイラー展開といいます.
特に $n=1$ とすると
$f(x)=f(a)+f'(c)(x-a)$
となり,平均値の定理を意味することから,テイラーの定理は平均値の定理の拡張であることがわかります.
最後の項である
$R_{n}(x)=\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^{n}$
のみ $c$ があるので他と違うのですが,これを剰余項といいます.
証明は,剰余項が上記のようになることを示す方法をとります.
証明
証明は下に格納しました.
証明
有限マクローリン展開
上で $f(x)$ は $c=a+\theta(x-a)$ $(0< \theta <1)$ とおいて
$f(x)$
$\displaystyle =\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^{k}+\dfrac{f^{(n)}(a+\theta(x-a))}{n!}(x-a)^{n}$
と表すこともある.ここで $a=0$ としたものを有限マクローリン展開といい
$f(x)$
$\displaystyle =\sum_{k=0}^{n-1}\dfrac{f^{(k)}(0)}{k!}x^{k}+\dfrac{f^{(n)}(\theta x)}{n!}x^{n}$
となる.例えば,$f(x)=e^x$ 上に対して有限マクローリン展開を適用すると
$e^{x}=1+x+\dfrac{x^2}{2}+\dfrac{x^3}{3!}+\cdots+\dfrac{x^{n-1}}{(n-1)!}+\dfrac{e^{\theta x}x^{n}}{n!}$ $(0< \theta <1)$
となる.
例えば,$x=1$ を代入して $e$ の近似値を算出したり, $e$ が無理数であることを示したりするのにもこれを使います.
テイラー展開とマクローリン展開
有限テイラー展開までは高校生でも理解しやすいですが,ここからの厳密な証明は数列や整級数の収束など,どうしても多くの準備が必要なので,詳しいことは大学生向けの微積分学の教科書に譲り,ここでは最後に全体を俯瞰して終わります.
ポイント
テイラー展開とマクローリン展開
関数 $f(x)$ が $x=a$ の近傍で何回でも微分可能であるとし,$x=a$ を中心とした整級数が正の収束半径をもつとき
$\displaystyle f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{f^{(k)}(a)}{k!}(x-a)^{k}$
をテイラー展開といい,$a=0$ のとき
$\displaystyle f(x)=\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{f^{(k)}(0)}{k!}x^{k}$
マクローリン展開という.
いずれも級数なので,収束するためには有限テイラー展開における剰余項 $R_{n}(x)=\dfrac{f^{(n)}(c)}{n!}(x-a)^{n}$ に条件が必要です.
収束半径を $R$ としたとき,$x$ の範囲が $|x|<R$ ならば,テイラー展開(マクローリン展開可能)といいます.
高校範囲でよく出る関数のマクローリン展開
$e^{x}=1+x+\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^3}{3!}+\cdots+\dfrac{x^n}{n!}+\cdots$ $(-\infty < x < \infty)$
$\cos{x}=1-\dfrac{x^2}{2!}+\dfrac{x^4}{4!}+\cdots+(-1)^{n}\dfrac{x^{2n}}{(2n)!}+\cdots$ $(-\infty < x < \infty)$
$\sin{x}=x-\dfrac{x^3}{3!}+\dfrac{x^5}{5!}+\cdots+(-1)^{n}\dfrac{x^{2n+1}}{(2n+1)!}+\cdots$ $(-\infty < x < \infty)$
$\dfrac{1}{1+x}=1-x+x^{2}-x^{3}+\cdots+(-1)^{n}{x^n}+\cdots$ $(-1 < x < 1)$
上記のように,あらゆる関数が多項式関数で近似できることにその威力があります.