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弧度法

三角関数(教科書範囲) 

アイキャッチ

一般角と弧度法の概念を扱います.

今まで慣れ親しんだ角度の表現方法である度数法から弧度法に切り替えられるようにします.

目次

1: 一般角

2: 弧度法

3: 例題と練習問題

一般角

数学Ⅰの三角比までは,三角比の概念に慣れるためか扱う角度が $180^{\circ}$ までに制限されていました.

しかしここで角度の大きさを拡張し,一般角を紹介します.

一般角

一般角

$\rm O$ を中心として回転する半直線 $\rm OP$ を動径といい,最初の位置が $\rm OX$ のとき,半直線 $\rm OX$ を始線という.

反時計回りの回転を正の向き,時計回りの回転を負の向きといい,負の向き及び1回転以上の角度も含めたものを一般角という.


一般角では,同じ位置に対して複数の(無限の)角度が対応します.

一般角の例

上の図から $60^{\circ}$ と $-300^{\circ}$ が同じ位置であることがわかります.$420^{\circ}$ も同じであるのは明白で,上の図の動径 $\rm OP$ が表す角は

$60^{\circ}+360^{\circ}\times n$ ( $n$ は整数)

とまとめて表現できます.

後に扱う三角方程式三角不等式では,該当する解が一般角で聞かれている場合は注意です.

弧度法

今までの,$30^{\circ}$ のような角の大きさの表し方を度数法といいます.

弧度法を導入するには理由(当ページ練習2解答参照)がありますが,まず弧度法の定義を紹介します.

以後はほとんどの場合角の大きさは弧度法を用いて表現することが多くなります.

弧度法の定義

弧度法の定義

半径が $1$ の扇形の,孤の長さが $\theta$ のときの中心角を $\theta$ (rad) と定義する.

※ rad はラジアン(radian)という単位の省略形です.(rad)はしばしば省略します.


半径が $1$ の扇形の孤の長さを角の大きさに対応させます.

例えば $90^{\circ}$ ならば,扇形の孤の長さは $2\cdot\pi\cdot\dfrac{1}{4}=\dfrac{\pi}{2}$ なので,$90^{\circ}$ と $\dfrac{\pi}{2}$ が対応します.

弧度法の例

同様によく見る度数法の有名角と弧度法の対応は例として以下になります.

度数法 $30^{\circ}$ $45^{\circ}$ $60^{\circ}$ $90^{\circ}$ $180^{\circ}$ $360^{\circ}$
弧度法 $\dfrac{\pi}{6}$ $\dfrac{\pi}{4}$ $\dfrac{\pi}{3}$ $\dfrac{\pi}{2}$ $\pi$ $2\pi$

一般化すると

$1^{\circ}$ と $\dfrac{\pi}{180}$ rad

が対応します.

一般角で言及したような,負の角度や1回転以上の角度も弧度法を適用します.

例題と練習問題

例題

例題

次の角を,(1)は弧度法に,(2)は度数法で表せ.

(1) $225^{\circ}$

(2) $\dfrac{\pi}{12}$


講義

(1)では,有名角の倍数なら,その有名角の何倍になっているかで答えるのが楽です.(2)では $\pi$ が $180^{\circ}$ と対応していることから算出します.


解答

(1)

 $225^{\circ}=45^{\circ}\times 5$ より,$\dfrac{\pi}{4}\times 5=\boldsymbol{\dfrac{5}{4}\pi}$


(2)

 $\dfrac{180^{\circ}}{12}=\boldsymbol{15^{\circ}}$

練習問題

練習1

次の角を,(1)(2)は弧度法に,(3)(4)は度数法で表せ.

(1) $330^{\circ}$

(2) $12^{\circ}$

(3) $\dfrac{7}{6}\pi$

(4) $\dfrac{23}{12}\pi$


練習2

半径が $r$,中心角が $\theta$ の扇形の面積 $S$ を求めよ.ただし中心角の単位はラジアンとする.

練習1の解答

(1)

 $330^{\circ}=30^{\circ}\times 11$ より,$\dfrac{\pi}{6}\times 11=\boldsymbol{\dfrac{11}{6}\pi}$

※ $330^{\circ}=360^{\circ}-30^{\circ}$ より,$2\pi-\dfrac{\pi}{6}=\boldsymbol{\dfrac{11}{6}\pi}$ でもいいですね.算出法は自由です.


(2)

 $1^{\circ}$ が $\dfrac{\pi}{180}$ より,$\dfrac{\pi}{180}\times 12=\boldsymbol{\dfrac{\pi}{15}}$


(3)

 $\dfrac{7}{6}\times 180^{\circ}=\boldsymbol{210^{\circ}}$


(4)

 $\dfrac{23}{12}\times 180^{\circ}=\boldsymbol{345^{\circ}}$


練習2の解答

 $S=r^{2}\pi \times \dfrac{\theta}{2\pi}=\boldsymbol{\dfrac{1}{2}r^{2}\theta}$

※ 発展的な話ですが,$r=1$ ならば,$S=\dfrac{\theta}{2}$ となって綺麗になります.これが度数法だと,$S=\pi \times \dfrac{\theta}{360^{\circ}}=\dfrac{\pi\theta}{360^{\circ}}$ となり見栄えがよくありません.すなわち数学Ⅲで扱う三角関数の極限公式も見栄えが悪くなり,$\sin x$ の微分も汚くなります.これが弧度法を導入する大きな理由です.