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確率密度関数

確率統計(数学B)(教科書範囲) ★★

アイキャッチ

確率密度関数について扱います.

このページから連続型の確率変数を主に扱います.

数学Ⅱの積分の知識を前提としています.

確率密度関数

高校のクラスでテストを行えば,ヒストグラムを描写すれば分布が一目でわかります.しかし大学入試共通テストのように,集団が大多数の場合,その概形はほぼ曲線で近似できるかもしれません.

確率密度関数

さらに,分布の全体の面積を $1$ で規格化すれば,例えば $50$ 点から $60$ 点の人の割合(確率)は面積で,すなわち積分で表現することができます.

確率密度関数

確率密度関数

連続的な値をとる確率変数を連続型確率変数という.連続型確率変数 $X$ に対して

(ⅰ) すべての実数 $x$ に対し $f(x)\geqq0$

(ⅱ) $\displaystyle P(a\leqq X \leqq b)=\int_{a}^{b}f(x)\,dx$

(ⅲ) $\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}f(x)\,dx=1$

を満たすとき,関数 $f(x)$ は $X$ の確率密度関数(probability density function)という.

※ (ⅲ)のように積分範囲の上端と下端が $\infty$ で表されるのは大学での表記ですが,こちらが一般的です.

積分範囲の $\infty$ について

積分範囲の $\infty$ について

(ⅲ)の積分は大学の微積分において,広義積分と呼ばれている積分です.$\displaystyle \lim_{b \to \infty}\int_{a}^{b}f(x)\,dx$ が有限確定ならばこれを $\displaystyle \int_{a}^{\infty}f(x)\,dx$ と定義します.すなわち

$\displaystyle \int_{a}^{\infty}f(x)\,dx=\lim_{b \to \infty}\int_{a}^{b}f(x)\,dx$

同様に

$\displaystyle \int_{-\infty}^{b}f(x)\,dx=\lim_{a \to -\infty}\int_{a}^{b}f(x)\,dx$

$\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}f(x)\,dx=\lim_{a \to -\infty\\ b \to \infty}\int_{a}^{b}f(x)\,dx$


今までの二項分布のような確率分布は離散型の確率分布ですが,これからは確率密度関数で表現される連続型の確率分布を中心に扱います.

例題と練習問題

例題

例題

ある全国規模のテストの点数が,確率変数 $X$ の確率密度関数 $f(x)=kx(100-x)$ $(0\leqq x\leqq100)$ に従っている.

(1) $k$ の値を求めよ.

(2) $P(90\leqq X \leqq 100)$ の値を求めよ.


講義

(1)では定義域で積分して $1$ になることから $k$ の値を求めます.(2) では $\displaystyle P(90\leqq X \leqq 100)=\int_{90}^{100}f(x)\,dx$ を計算します.


解答

(1)

 $\displaystyle \int_{0}^{100}kx(100-x)\,dx$

$\displaystyle =-k\int_{0}^{100}x(x-100)\,dx$

$=-k\cdot \dfrac{-100^3}{6}$ ←1/6公式

$=\dfrac{500000}{3}k=1$

$\therefore \ \boldsymbol{k=\dfrac{3}{500000}}$


(2)

例題の図

 $P(90\leqq X \leqq 100)$

$\displaystyle =\int_{90}^{100}\dfrac{3}{500000}x(100-x)\,dx$

$\displaystyle =1-\int_{0}^{90}\dfrac{3}{500000}x(100-x)\,dx$

$\displaystyle =1-\dfrac{3}{500000}\left[50x^{2}-\dfrac{1}{3}x^{3}\right]_{0}^{90}$

$\displaystyle =1-\dfrac{3}{500000}\left(50\cdot 90^{2}-\dfrac{1}{3}\cdot 90^{3}\right)$

$\displaystyle =1-\dfrac{3}{500000}\cdot 20\cdot 90^{2}$

$=\boldsymbol{\dfrac{7}{250}}$

※ $90$ 点以上の人が $2.8$ %しかいないことがわかりますね.

※ 例えばですが,$50$ 点の人の確率のように,特定の点でとった確率は $0$ になります( $0$ から $100$ の実数値が無数にあるとイメージしやすいです).連続型の場合では,範囲を指定しないと意味がなく,確率とは面積であるということが理解できると思います.数学Aまでは事象が加算有限集合のものが対象でしたが,これから非加算集合も対象になります.

練習問題

練習

確率変数 $X$ の確率密度関数 $f(x)=k(9-x^{2})$ $(-3\leqq x\leqq3)$ において.

(1) $k$ の値を求めよ.

(2) $P(-1\leqq X \leqq 1)$ の値を求めよ.

練習の解答

(1)

 $\displaystyle \int_{-3}^{3}k(9-x^{2})\,dx$

$\displaystyle =-k\int_{-3}^{3}(x+3)(x-3)\,dx$

$=-k\cdot \dfrac{-6^3}{6}$ ←1/6公式

$=36k=1$

$\therefore \ \boldsymbol{k=\dfrac{1}{36}}$


(2)

 $P(-1\leqq X \leqq 1)$

$\displaystyle =\int_{-1}^{1}\dfrac{1}{36}(9-x^{2})\,dx$

$\displaystyle =2\int_{0}^{1}\dfrac{1}{36}(9-x^{2})\,dx$ ←偶関数の定積分

$\displaystyle =\dfrac{1}{18}\left[9x-\dfrac{1}{3}x^{3}\right]_{0}^{1}$

$\displaystyle =\dfrac{1}{18}\cdot \dfrac{26}{3}$

$=\boldsymbol{\dfrac{13}{27}}$