確率変数(離散型)の変換をした期待値と分散
確率統計(数学B)(教科書範囲) ★★★
当ページでは離散型の確率変数について扱います(連続型も同様です).
確率変数の変換をした期待値と分散
データの1次変換をした平均や分散と同様に,確率変数についても同じことが確認できます.
確率変数(離散型)の変換をした期待値と分散
確率変数 $X$ を $Y=aX+b$ ( $a$,$b$ は定数)で変換した確率変数 $Y$ の期待値と $E(Y)$ と分散 $V(Y)$ と標準偏差 $\sigma(Y)$ は
$\boldsymbol{\displaystyle E(Y)=aE(X)+b}$
$\boldsymbol{\displaystyle V(Y)=a^{2}V(X)}$
$\boldsymbol{\displaystyle \sigma(Y)=|a|\sigma(X)}$
証明
確率変数 $X$ の実現値を $x_{k}$ $(k=1,2,\cdots,n)$ とします.すると $y_{k}=ax_{k}+b$ となります.
$\displaystyle E(Y)$
$\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}y_{k}p_{k}$
$\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}(ax_{k}+b)p_{k}$
$\displaystyle =a\sum_{k=1}^{n}x_{k}p_{k}+b\sum_{k=1}^{n}p_{k}$
$\displaystyle =aE(X)+b$
$\displaystyle V(Y)$
$\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}\left(y_{k}-E(Y)\right)^{2}p_{k}$
$\displaystyle =\sum_{k=1}^{n}\left\{ax_{k}+b-(aE(X)+b)\right\}^{2}p_{k}$
$\displaystyle =a^{2}\sum_{k=1}^{n}\left\{x_{k}-E(X)\right\}^{2}p_{k}$
$\displaystyle =a^{2}V(X)$
$\displaystyle \sigma(Y)$
$\displaystyle =\sqrt{V(Y)}$
$\displaystyle =\sqrt{a^{2}V(X)}$
$\displaystyle =\sqrt{a^{2}}\sqrt{V(X)}$
$\displaystyle =|a|\sigma(X)$ ← $\sqrt{A^{2}}=|A|$
旧課程(2015〜2024)のセンター試験や共通テストでは最初にこの変換を利用させる問題が頻出でした.
確率変数の標準化
前章の内容がよく使われる有名な場面に標準化があります.期待値を $0$ に,分散(標準偏差)を $1$ に変換する操作を標準化と言います.
データの標準化
確率変数 $X$ を以下の式で変換する操作を標準化という.
$\boldsymbol{\displaystyle Z=\dfrac{X-E(X)}{\sigma(X)}}$
これにより $E(Z)=0$ に,$V(Z)=1$ となる.
正規分布を標準正規分布にしたい場合等によく使われます.
例題と練習問題
例題
例題
サイコロを1回振って,出る目の確率変数を $X$ とする.ゲームAはサイコロを1回振って,$Y=1000X+3500$ 円の金額をもらえ,ゲームBはサイコロを1回振って,$Z=2000X$ 円の金額をもらえるとする.
(1) ゲームAとゲームBの期待値 $E(Y)$,$E(Z)$ をそれぞれ求めよ.
(2) ゲームAとゲームBの分散 $V(Y)$,$V(Z)$ で小さい方を選べ.
講義
まずは $E(X)$ を出せば,上の公式によりそれぞれ求まります. $V(X)$ は今回は求める必要がありません.
解答
$E(X)$
$\displaystyle =\sum_{k=1}^{6}k\cdot P(X=k)$
$\displaystyle =\dfrac{1}{6}\sum_{k=1}^{6}k$
$\displaystyle =\dfrac{1}{6}\cdot\dfrac{1}{2}\cdot6\cdot7$ ←Σ公式
$=\dfrac{7}{2}$
(1)
$E(Y)$
$=E(1000X+3500)$
$=1000E(X)+3500$
$=\boldsymbol{7000}$
$E(Z)$
$=E(2000X)$
$=2000E(X)$
$=\boldsymbol{7000}$
(2)
$V(Y)$
$=V(1000X+3500)$
$=1000^{2}V(X)$
$V(Z)$
$=V(2000X)$
$=2000^{2}V(X)$
より,$V(Y)<V(Z)$.$\boldsymbol{V(Y)}$ の方が小さい.
※ $V(X)$ を求める問題は分散と標準偏差(離散型確率変数)の練習問題にあります.
練習問題
練習
未定
解答