期待値
確率統計(教科書範囲) ★★★

期待値(expectation)について数学Aを勉強している人ならば理解できるよう解説し,問題を通してその概念を体感できるようにしました.
現在は数学Bの確率分布と統計的な推測で扱われますので,基本的には入試で出題されませんが,稀に昭和大医学部などのように,入試で課される大学もあります.
なお,当ページは高校範囲ですので,離散型の確率変数のみについて扱います.
期待値の定義
ポイント
期待値の定義
確率変数 $X$ の実現値と確率が以下のように与えられているとき
$X$ | $x_{1}$ $x_{2}$ $\cdots$ $x_{n}$ | 計 |
---|---|---|
$P$ | $p_{1}$ $p_{2}$ $\cdots$ $p_{n}$ | $1$ |
期待値 $E(X)$ を
$E(X)=x_{1}p_{1}+x_{2}p_{2}+\cdots+x_{n}p_{n}$
$ \displaystyle =\sum_{k=1}^{n}x_{k}p_{k}$
で定義する(2行目のシグマ記号の見方はこちら).
※確率変数 $X$ の期待値であることを強調しない場合単に $E$ と表すこともあります.
※期待値の $E$ は英語のexpectationの $E$ です.
意味
期待値は,その確率変数の,確率を重み付けた平均のことです.
投資やギャンブルをやる人は特に日常的に使っている数学的概念だと思います.
例題と練習問題
例題
例題
以下の宝くじの当選金額の期待値を求めよ.
出典:宝くじ公式サイト
等級 | 当選金額 | 確率 |
---|---|---|
1等 | 3億円 | $0.0000001$ |
1等前後賞 | 1億円 | $0.0000002$ |
1等組違い賞 | 10万円 | $0.00001$ |
2等 | 1000万円 | $0.000001$ |
3等 | 100万円 | $0.00001$ |
4等 | 10万円 | $0.0001$ |
5等 | 1万円 | $0.001$ |
6等 | 3000円 | $0.01$ |
7等 | 300円 | $0.1$ |
講義
計算が大変ですが,実用性重視で現実的な話題にしました.上の余事象が外れ(0円)とします.
解答
(1) 当選金額を $X$ とすると
$E(X)$
$=3$ 億 $\times \ 0.0000001$
$+1$ 億 $\times \ 0.0000002$
$+10$ 万 $\times \ 0.00001$
$+1000$ 万 $\times \ 0.000001$
$+100$ 万 $\times \ 0.00001$
$+10$ 万 $\times \ 0.0001$
$+1$ 万 $\times \ 0.001$
$+3000 \ \times \ 0.01$
$+300 \ \times \ 0.1$
$=30+20+1+10+10+10+10+30+30$
$=\boldsymbol{151}$
ちなみに購入金額が300円なので,還元率は約50%ですね.
すべてのギャンブルの中で,宝くじはトップクラスに低い水準です.
練習問題
練習
(1) 買い物をしたときに,95%の確率で3%ポイント還元が得られ,5%の確率で100%ポイント還元が得られるアプリPと,100%の確率で5.5%ポイント還元が得られるアプリOでは,どちらのアプリを使って買い物をするのがお得か.
(2) 袋の中に赤球が4個,白球が6個入っている.これから同時に3個取り出すとき,取り出す赤球の個数の期待値を求めよ.
練習の解答
(1) 期待値で判断します.
アプリP,アプリOのポイント還元率の期待値をそれぞれ $E_{P}$,$E_{O}$ とすると
$E_{P}=0.95 \times 3+0.05\times 100=7.85$ %
$E_{O}=1 \times 5.5=5.5$ %
以上より,アプリPで買い物をするのがお得.
※余談ですがアプリPはPayPay,アプリOはOrigami Payのつもりです.2019年の話題です.
(2) 取り出す赤球の個数を $X$ とすると
$P(X=0)$
$=\dfrac{_{6}{\rm C}_{3}}{_{10}{\rm C}_{3}}$
$=\dfrac{20}{120}$
$P(X=1)$
$=\dfrac{_{4}{\rm C}_{1} \cdot \ _{6}{\rm C}_{2}}{_{10}{\rm C}_{3}}$
$=\dfrac{60}{120}$
$P(X=3)$
$=\dfrac{_{4}{\rm C}_{3}}{_{10}{\rm C}_{3}}$
$=\dfrac{4}{120}$
$P(X=2)$
$=1-P(X=0)-P(X=1)-P(X=3)$ ←もちろん直接求めてもOK
$=\dfrac{36}{105}$
$E(X)$
$=1\cdot P(X=1)+2\cdot P(X=2)+3\cdot P(X=3)$
$=\dfrac{60+72+12}{120}$
$=\dfrac{144}{120}$
$=\boldsymbol{\dfrac{6}{5}}$
※ こちらも完全に余談ですが,大学の統計学の内容の超幾何分布に従うので,その公式を知っていると答えのみならば $E(X)=\dfrac{3\cdot4}{10}=\boldsymbol{\dfrac{6}{5}}$ で速いです.