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黄金三角形による $18^\circ$ シリーズの三角比

数学ⅡB既習者(難関大対策) ★★

アイキャッチ

加法定理や,15°シリーズの三角比以外で求められる三角比として,有名なのが $\cos72^\circ$ や $\cos36^\circ$ などの$18^\circ$ シリーズの三角比です.

ベクトルで正五角形の問題などと絡めて出題されたりします.このページは,これらの問題が比較的よく出る大学の志望者向けです.

黄金長方形と黄金数の定義

黄金長方形とは,長方形から最大の正方形を除くと,残った長方形が元の長方形と相似(自己相似)になるような長方形のことです.図の $x$ の値がいくつになるかがポイントです.

黄金長方形

全体の長方形と小さい長方形が相似になるので,辺の比が等しいことを考えると

$1:x=x-1:1$

となるので,内項の積と外項の積が等しいので,出てきた2次方程式を解き,$x>0$ であることをふまえると

$x=$ $\displaystyle \boldsymbol{\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}}$

算出された $x$ を $\boldsymbol{\phi}$ (黄金数) と定義します.この $\boldsymbol{\phi}$ が上の値になることは暗記することが前提です.

※ $\phi=1.61803399\cdots$ となります.

※ $\phi$ はファイと読みます.

黄金三角形の定義と正五角形

黄金三角形の定義

黄金三角形とは,長い2辺と短い辺が黄金比になっているような二等辺三角形のことです.黄金比とは,$1:\phi$ のことです.

しかし辺の比が黄金比になっている二等辺三角形はもう1つあり,短い2辺と長い辺が黄金比になっているような二等辺三角形も便宜的に名前を付けていいかもしれません.

これを踏まえ当サイトでは,下図の左が(鋭角)黄金三角形で,右が鈍角黄金三角形と呼ぶことにします.

2つの黄金三角形

内角は何度か

角度が何度になるかは,以下のような自己相似となる黄金三角形を内部に作ることでわかります.

自己相似

計算すれば $?=1$ となることがわかりますので,なんと残りの三角形ももう1つの黄金三角形になります.上の図から中学生レベルの数学で以下のように内角がわかります.

黄金三角形の辺の比と内角

内角

左が鋭角黄金三角形,右が鈍角黄金三角形(当サイトのネーミング)


内角が上図のようになることがわかります.上の図の辺の比と角度を暗記してください(もし角度を忘れても,正五角形を考えることですぐ導けると思いますが).

正五角形は黄金三角形だらけ

正五角形

平面ベクトルの問題で正五角形の問題がよく出ますが,上の図形の中は黄金三角形だらけで,寧ろ黄金三角形以外の三角形は存在しません.これを利用して(答えのみならば)問題を素早く解きます.

$18^\circ$ シリーズの三角比とその出し方

本題である $18^\circ$ シリーズの三角比ですが,黄金三角形と角度と辺の比を考えることで導きます.

$18^\circ$ シリーズの三角比の出し方

ポイント

すぐ出せるもの

$\displaystyle \cos72^\circ=\sin18^\circ=\frac{\frac{1}{2}}{g}=\frac{\sqrt{5}-1}{4}$

$\displaystyle \cos36^\circ=\sin54^\circ=\frac{\frac{g}{2}}{1}=\frac{\sqrt{5}+1}{4}$

すぐ出せないもの

$\displaystyle\sin72^\circ=\cos18^\circ=\sqrt{1-\cos^{2}72^\circ}=\frac{\sqrt{10+2\sqrt{5}}}{4}$

$\displaystyle \sin36^\circ=\cos54^\circ=\sqrt{1-\cos^{2}36^\circ}=\frac{\sqrt{10-2\sqrt{5}}}{4}$


すぐ出せるものに関しては,分子の5-1が分母の4と覚えておいてもいいかと思います( $15^\circ$ シリーズと覚え方似ていますね).

順天堂大学医学部埼玉医科大等で $\displaystyle \cos \frac{\pi}{5}$,$\displaystyle \cos \frac{2\pi}{5}$ がよく問われています.

練習問題

練習

1辺の長さが $2$ の正五角形 $\rm BCDEF$ において,対角線 $\rm BE$ と $\rm CF$ の交点を $\rm G$ とおくと $\triangle \rm{BCF}$ と $\triangle \rm{GFB}$ は相似になる.このことにより次の問いに答えよ(答えのみでよい).

(1) $\rm BE$ を求めよ.

(2) $\rm BG$ を求めよ.

(3) $\cos \dfrac{2\pi}{5}$ を求めよ.

解答 出典:2013順天堂大学医学部

答えのみならば文中のヒントは無視してみます.鋭角黄金三角形と鈍角黄金三角形の辺の比と内角を暗記していれば,瞬時に出せます.

黄金三角形による18°シリーズの三角比と正五角形の問題練習

(1)

${\rm BE}=2\phi=2 \cdot \dfrac{1+\sqrt{5}}{2}=\boldsymbol{1+\sqrt{5}}$


(2)

${\rm BG}=\dfrac{2}{\phi}=\dfrac{4}{1+\sqrt{5}}=\boldsymbol{\sqrt{5}-1}$


(3) $\triangle \rm{BCG}$ において $\angle{\rm CBG}=\dfrac{2\pi}{5}$ より,線分$\rm BG$ の中点を$\rm M$とおくと

$\cos \dfrac{2\pi}{5}=\dfrac{\rm BG}{\rm BC}=\dfrac{\frac{1}{\phi}}{2}=\boldsymbol{\dfrac{\sqrt{5}-1}{4}}$

※ 記述式の場合は,きちんと $\triangle \rm{BCF}$ と $\triangle \rm{GFB}$ が相似になることによる比例式をたてて,辺の比を求めるべきでしょう.例えば,${\rm BG}=x$ とおくと,${\rm BF:FC=GB:BF} \Longleftrightarrow 2:x+2=x:2$ で $x$ を出す等