逆関数の微分
微分(数学Ⅲ)(教科書範囲) ★★
逆関数の微分について扱います.
逆関数の微分公式とその証明
逆関数の微分の図解
微分可能な関数 $y=f(x)$ の逆関数 $y=g(x)$ が存在するとする.$b=f(a)$ とし,$f'(a)\neq 0$ ならば
$\displaystyle \boldsymbol{g'(b)=\dfrac{1}{f'(a)}}$
$y=g(x)$ 上の $(b,a)$ での接線の傾きは,$y=f(x)$ 上の $(a,b)$ での接線の傾きの逆数であるという意味です.
接線まで $y=x$ に関して対称になるということですね.
下で一般化します.
逆関数の微分
微分可能な関数 $y=f(x)$ の逆関数 $y=g(x)$ が存在するとき
$\displaystyle \boldsymbol{g'(x)=\dfrac{1}{f'(y)}}$
または
$\displaystyle \boldsymbol{\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy}}}$
※ $f'(y)\neq 0$,$\dfrac{dx}{dy}\neq 0$ が前提です.
証明
関数 $y=f(x)$ の逆関数 は $x=f(y)$ $\Longleftrightarrow$ $y=g(x)$ である.$x=f(y)$ を両辺 $x$ で微分すると
$1=f'(y)\cdot \dfrac{dy}{dx}$ ←合成関数の微分
$f'(y)=\dfrac{dx}{dy}\neq0$ であれば
$g'(x)=\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{f'(y)}=\dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy}}$
問題を解くときはあまり深く考えず,逆関数をとって $x$ か $y$ の好きな方で微分すれば道が拓けます.
上では,逆関数 $y=g(x)$ が微分できることが前提になっているので,$y=g(x)$ の微分可能性を仮定しない証明を下に格納しておきます.
逆関数 $\boldsymbol{y=g(x)}$ の微分可能性を仮定しない証明
逆関数 $y=g(x)$ の微分可能性を仮定しない証明
微分可能な関数 $y=f(x)$ の逆関数 $y=g(x)$ をもつものとし,$f'(a)\neq 0$ とする.
関数 $y=f(x)$ は微分可能なので連続である.つまり逆関数 $y=g(x)$ も連続であるので,$b=f(a) \ \Longleftrightarrow \ a=g(b)$ とすると
$x \to b$ のとき $y \to a$
また $x\neq b$ のとき $y\neq a$ より
$\displaystyle g'(b)$
$\displaystyle =\lim_{x \to b}\dfrac{g(x)-g(b)}{x-b}$
$\displaystyle =\lim_{y \to a}\dfrac{y-a}{f(y)-f(a)}$
$\displaystyle =\lim_{y \to a}\dfrac{1}{\dfrac{f(y)-f(a)}{y-a}}$
$\displaystyle =\dfrac{1}{f'(a)}$
これを導関数で表して一般化すればよい.
$\boldsymbol{x^p}$ ( $\boldsymbol{p}$ は有理数)の微分公式とその証明
$n$ が自然数のときの微分の証明は,数学Ⅱの $x^n$ の微分で,整数のときは積の微分と商の微分で扱いましたが,今度は $n$ が有理数のときです.
$x^{p}$ ( $p$ は有理数)の微分
$p$ を有理数とすると
$\displaystyle \boldsymbol{(x^p)'=px^{p-1}}$
$x^{p}$ ( $p$ は整数)の微分の証明
$y=x^{\frac{1}{n}}$ とすると,$x=y^{n}$ より
$\dfrac{dx}{dy}=ny^{n-1}$
$p=\dfrac{m}{n}$ とおくと
$(x^{p})'$
$=\left\{\left(x^{\frac{1}{n}}\right)^{m}\right\}'$
$=\left\{y^{m}\right\}'$
$=my^{m-1}\cdot \dfrac{dy}{dx}$
$=my^{m-1}\cdot \dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy}}$ ←逆関数の微分
$=my^{m-1}\cdot \dfrac{1}{ny^{n-1}}$
$=\dfrac{m}{n}y^{m-n}$
$=p\left(x^{\frac{1}{n}}\right)^{m-n}$
$=px^{\frac{m}{n}-1}$
$=px^{p-1}$
結果は同じです.逆関数の微分を使って示します.
対数微分法まで待てば,簡単に $p$ が実数のときを証明できるので,そこまで待ってもいいと思います.
例題と練習問題
例題
例題
$y=x^{5}$ の逆関数の導関数を求めよ.
講義
まずは $x$ と $y$ を入れ替えて逆関数にします.その後は $x^p$ ( $p$ は有理数)の微分公式を適用するのをここでは正攻法とします.
解答
逆関数は $x=y^{5}$ より,$y=x^{\frac{1}{5}}$.
$\boldsymbol{y'=\dfrac{1}{5}x^{-\frac{4}{5}}}$
別解
逆関数は $x=y^{5}$ より,両辺 $y$ で微分すると
$\dfrac{dx}{dy}=5y^{4}$
$\therefore \ \boldsymbol{y'}=\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy}}=\dfrac{1}{5y^{4}}\boldsymbol{=\dfrac{1}{5x^{\frac{4}{5}}}}$
練習問題
練習1
関数 $y=\sqrt{x^{2}+1}$ の導関数を求めよ.
練習2
関数 $y=x^{3}+3x^{2}+6x$ の 逆関数を $g(x)$ とするとき,微分係数 $g'(10)$ を求めよ.
練習1の解答
$y=(x^{2}+1)^{\frac{1}{2}}$ より
$\displaystyle \boldsymbol{y'}=\dfrac{1}{2}(x^{2}+1)^{-\frac{1}{2}}(x^{2}+1)'\boldsymbol{=\dfrac{x}{\sqrt{x^{2}+1}}}$
練習2の解答
逆関数は $x=y^{3}+3y^{2}+6y$ より,両辺 $y$ で微分すると
$\dfrac{dx}{dy}=3y^{2}+6y+6$
$g'(x)=\dfrac{dy}{dx}=\dfrac{1}{\dfrac{dx}{dy}}=\dfrac{1}{3y^{2}+6y+6}$
$x=10$ のとき $10=y^{3}+3y^{2}+6y$ を解くと
$(y-1)(y^{2}+4y+10)=0$
$\therefore \ y=1$
$y=g(x)$ は $(10,1)$ を通るので
$g'(10)=\dfrac{1}{3\cdot 1^{2}+6\cdot 1+6}=\boldsymbol{\dfrac{1}{15}}$