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通過領域の問題(1文字固定法)

数学Ⅲ既習者(難関大対策) ★★★★

アイキャッチ

難関大学で合否の分かれ目になりやすい,図形の通過領域の問題を扱います.

このページは1文字固定法で問題を解いていきます.

当ページは最大最小を求めるので基本的に,数学Ⅲの微分までの知識が必要です.

通過領域の問題の解き方

ポイント

通過領域の問題の解法まとめ

1文字固定法 (このページです!)

$x$ を固定して,$y$ をもう一つの文字の関数とみて,$y$ の範囲を求める(微分や(相加平均)≧(相乗平均)などを使用).

※ 大学への数学ではファクシミリの原理と言われていますね.わかりやすいですが,正式な数学用語ではありません.


解の配置問題で解く

もう1つの文字の2次方程式として見ることができれば,2次方程式の解の配置問題で解くことができる.


どちらの方法でも解ける場合もあれば,片方のみでしか解けない場合もあります.今回はⅠの1文字固定法を取り上げます.

例題と練習問題

例題

例題

(1) $t$ がすべての実数をとるとき,直線 $y=tx+t^{2}$ の通過領域を求め,図示せよ.

(2) $t$ が $t\geqq 0$ のすべての実数をとるとき,直線 $y=tx+t^{2}$ の通過領域を求め,図示せよ.

(3) 座標平面上で,点$\rm O(0,0)$,$\rm A(0,1)$,$\rm B(1,0)$,$\rm C(1,1)$ を考える.点 $\rm P$ が点 $\rm B$ から点 $\rm C$ まで動くとき,正方形$\rm AOBC$ の辺および内部において,線分 $\rm OP$ の垂直2等分線が通る範囲の面積を求めよ.

[2017早稲田教育改]


解説と解答

(1) $x$ を固定して,$y$ を $t$ の関数とみると

$y=t^{2}+xt$

$x$ は固定してるんで(定数と見てもよい),$y$ の範囲を出すために平方完成をします.

$\displaystyle y=\left(t+\dfrac{x}{2}\right)^{2}-\dfrac{x^2}{4}$ ・・・①

$t$ はどんな実数もとれるので,$y$ の範囲は

$\displaystyle y\geqq-\dfrac{x^2}{4}$

例題1

領域は上の黄色の部分.境界線を含む.


補足(ファクシミリの原理などと言われている理由)

①で,$x$ に数字を代入すると,$t$ の2次関数になるので,それで $y$ の範囲を図示していくと以下になります.

例題補足

上のように,ファックス(受験生達はもしかしたら知らない?)でデータを送信する仕組みに似ているのが理由です.


(2) $x$ を固定して,$y$ を $t$ の関数とみると

$y=t^{2}+xt$

$x$ は固定してるんで(定数と見てもよい),$y$ の範囲を出すために平方完成をします.

$\displaystyle y=\left(t+\dfrac{x}{2}\right)^{2}-\dfrac{x^2}{4} \hspace{5mm} (t\geqq 0)$

(ⅰ) $\displaystyle -\dfrac{x}{2}\leqq 0 \Longleftrightarrow x \geqq 0$ のとき

例題2の1

$y$ の範囲は $\displaystyle y\geqq 0$

(ⅱ) $\displaystyle -\dfrac{x}{2}> 0 \Longleftrightarrow x < 0$ のとき

例題2の2

$y$ の範囲は $\displaystyle y\geqq-\dfrac{x^2}{4}$

(ⅰ)(ⅱ)より求める通過領域は

例題2の答え

領域は上の黄色の部分.境界線を含む.


(3) 直線 $\rm OP$ の垂直2等分線は,${\rm P}(1,t)$ $(0\leqq t \leqq 1)$ とすると

例題3

(ⅰ) $0 < t \leqq 1$ のとき

 $\displaystyle y=-\frac{1}{t}\left(x-\frac{1}{2}\right)+\frac{t}{2}$

  $\displaystyle =-\frac{1}{t}x+\frac{1}{2t}+\frac{t}{2}$

  $\displaystyle =\frac{1}{2}t+\left(\frac{1}{2}-x\right)\frac{1}{t} \hspace{5mm} ( 0 < x \leqq 1 ) $

① $\dfrac{1}{2}-x>0 \Longleftrightarrow x < \dfrac{1}{2}$ のとき

$\dfrac{1}{2}t>0$,$\left(\dfrac{1}{2}-x\right)\dfrac{1}{t}>0$,(相加平均)≧(相乗平均)より

$\displaystyle y\geqq2\sqrt{\dfrac{1}{2}t\cdot \left(\dfrac{1}{2}-x\right)\dfrac{1}{t}}=\sqrt{1-2x}$

等号成立は $\dfrac{1}{2}t=\left(\dfrac{1}{2}-x\right)\dfrac{1}{t} \Longleftrightarrow t=\sqrt{1-2x}$ のとき

② $x=\dfrac{1}{2}$ のとき

$\displaystyle y=\dfrac{1}{2}t$ より $0 < y\leqq \dfrac{1}{2}$


③ $\dfrac{1}{2}-x < 0 \Longleftrightarrow x > \dfrac{1}{2}$ のとき

$\dfrac{dy}{dt}=\dfrac{1}{2}-\left(\dfrac{1}{2}-x\right)\dfrac{1}{t^2}>0$ より $y$ は単調増加.

$\displaystyle \lim_{t \to +0}\left\{\frac{1}{2}t+\left(\frac{1}{2}-x\right)\frac{1}{t}\right\}=-\infty$.$y$ は $t=1$ のとき $y=1-x$ より

$y\leqq 1-x $


(ⅱ) $t=0$ のとき

$x=\dfrac{1}{2}$


これらをすべて正方形 $\rm AOBC$ の内部に図にすると

例題3の答え

直線の通過領域は図の黄色の部分.求める面積は正方形から白い箇所を引くと

 $\displaystyle 1-\int_{0}^{\frac{1}{2}}\sqrt{1-2x} \,dx-\left(\dfrac{1}{2}+1\right)\times \dfrac{1}{2}\times \dfrac{1}{2}$

$\displaystyle =1-\left[\frac{2}{3}(1-2x)^{\frac{3}{2}}\left(-\dfrac{1}{2}\right)\right]_{0}^{\frac{1}{2}}-\dfrac{3}{8}$

$=\boldsymbol{\dfrac{7}{24}}$

練習問題

練習

$x$ 軸上の正の部分を動点 ${\rm P}(t,0)$,$y$ 軸上の正の部分を動点 $\rm Q$ が,$\rm PQ=1$ をたもって動くとき,線分 $\rm PQ$ の通過領域は,不等式 $x^{\alpha}+y^{\alpha}\leqq 1$ となる.$\alpha$ の値を求めよ.

解答

${\rm P}(t,0)$,${\rm Q}(0,\sqrt{1-t^{2}})$となるので,線分 $\rm PQ$ は $t$ を固定して考えると

$y=-\dfrac{\sqrt{1-t^{2}}}{t}x+\sqrt{1-t^{2}} \hspace{4mm} (0 < x < t )$

これを $x$ を固定して考えると

$y=\sqrt{1-t^{2}}\left(1-\dfrac{x}{t}\right)\hspace{4mm} (x < t < 1 )$

これを $t$ で微分すると

$\dfrac{dy}{dt}=\dfrac{1}{2}(1-t^{2})^{-\frac{1}{2}}(-2t)\left(1-\dfrac{x}{t}\right)+\sqrt{1-t^{2}}\dfrac{x}{t^{2}}$

  $=\dfrac{-t^{3}+t^{2}x+(1-t^{2})x}{t^{2}\sqrt{1-t^{2}}}$

  $=\dfrac{x-t^{3}}{t^{2}\sqrt{1-t^{2}}}$

増減表は

$t$ $(x)$ $\cdots$ $x^{\frac{1}{3}}$ $\cdots$ $(1)$
$\dfrac{dy}{dt}$ $+$ $0$ $-$
$y$ $(0)$ ↗︎ $\left(1-x^{\frac{2}{3}}\right)^{\frac{3}{2}}$ ↘︎ $(0)$

以上より

$\displaystyle 0 < y \leqq \left(1-x^{\frac{2}{3}}\right)^{\frac{3}{2}}$

$\displaystyle \Longleftrightarrow \ 0 < y^{\frac{2}{3}} \leqq 1-x^{\frac{2}{3}}$

求める通過領域は $x^{\frac{2}{3}}+y^{\frac{2}{3}} \leqq 1 \hspace{4mm} (x > 0 , \ y > 0)$ となるので $\boldsymbol{\alpha=\dfrac{2}{3}}$

※ちなみに領域は下図の黄色の部分になります.

練習の答え