反復試行の確率
確率(教科書範囲) ★★★
反復試行の確率について扱います.
定期試験,大学受験で頻出ですし,統計学では二項分布,多項分布の基礎になります.
基本的なタイプから事象が3つある場合まで一通り扱います.
反復試行の確率
コインを4回投げて,2回表が出る確率を考えます.
4回の表(H)と裏(T)の内訳は
H H T T
H T H T
H T T H
T H H T
T H T H
T T H H
上のように6通りあります.本質は,H×2,T×2の同じものを含む順列なので
$\dfrac{4!}{2!2!}=\hspace{-0.5mm} _{4}{\rm C}_{2}$ (通り)
それぞれ2回表,2回裏が出る確率は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}$ より,求める確率は
$\hspace{-0.5mm} _{4}{\rm C}_{2}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}$
です.これを一般化してまとめます.
反復試行の確率
独立試行において,1回の試行で事象 $A$ が起こる確率を $p$ とする.この試行を $n$ 回繰り返し行うとき,事象 $A$ がちょうど $k$ 回起こる確率は
$\boldsymbol{\hspace{-0.5mm} _{n}{\rm C}_{k} p^{k}(1-p)^{n-k}}$
補足
すべての確率の和は $1$
数学ⅡB既習者向けですが,上の確率では,$k=0,1,\cdots,n$ の値を取りますが,二項定理によればこれらの和が $1$ になることを確認できます.
$\displaystyle \ \sum_{k=0}^{n}\hspace{-0.5mm} _{n}{\rm C}_{k} p^{k}(1-p)^{n-k}$
$=\{p+(1-p)\}^n$
$=1$
事象が $A$ か $A$ でないかの2択しかないということに注意です.
コンビネーションで丸暗記するというより,同じものを含む順列で総数を考えると,事象が $A$ か $B$ か $A$ でも $B$ でもないかの3択ある応用問題に対応しやすいです.
次の章ではやや発展的ですが,この応用問題について考察します.
事象が3つある場合の反復試行の確率
事象が4つ以上ある場合も本質的に同じなので,3つの場合を考えます.
サイコロを4回投げて,2回奇数,1回合成数(4か6),1回2が出る場合が出る確率を考えます.
4回の奇数と合成数と2の内訳は
奇 奇 合 2
奇 奇 2 合
奇 合 奇 2
$\vdots$
2 奇 合 奇
2 合 奇 奇
上は,奇×2,合×1,2×1の同じものを含む順列なので
$\dfrac{4!}{2!1!1!}$ (通り)
それぞれ奇×2,合×1,2×1の確率は $\left(\dfrac{3}{6}\right)^{2}\dfrac{2}{6}\cdot\dfrac{1}{6}$ より,求める確率は
$\dfrac{4!}{2!1!1!}\left(\dfrac{3}{6}\right)^{2}\dfrac{2}{6}\cdot\dfrac{1}{6}$
これを一般化してまとめます.
事象が3つある場合の反復試行の確率の手順
独立試行において,1回の試行で事象 $A$ が起こる確率を $p$,1回の試行で事象 $B$ が起こる確率を $q$,1回の試行で事象 $C$ が起こる確率を $r$ とする.この試行を $n$ 回繰り返し行うとき,事象 $A$,$B$,$C$ それぞれが $s$ 回,$t$ 回,$n-s-t$ 回起こる確率は
$\boldsymbol{\dfrac{n!}{s!t!(n-s-t)!}p^{s}q^{t}r^{n-s-t}}$
※ 必ずしも $p+q+r=1$ である必要はありません.
※ 事象が4つ以上でも同様です.
例題と練習問題
例題
例題
2枚の硬貨を同時に投げる試行を5回繰り返す.
(1)2枚とも表が出ることが3回起こる確率を求めよ.
(2)2枚とも表が出ることが2回,2枚とも裏が出ることが2回起こる確率を求めよ.
講義
(1)は2枚とも表,それ以外の事象が2つになります.
(2)は2枚とも表,2枚とも裏,それ以外の事象が3つになります.
解答
2枚とも表が出る確率は $\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{4}$
(1)
$\hspace{-0.5mm} _{5}{\rm C}_{3}\left(\dfrac{1}{4}\right)^{3}\left(\dfrac{3}{4}\right)^{2}=\boldsymbol{\dfrac{45}{512}}$
(2)
2枚とも裏が出る確率は $\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{2}=\dfrac{1}{4}$.それ以外の確率は $1-\dfrac{1}{4}-\dfrac{1}{4}=\dfrac{1}{2}$.求める確率は
$\dfrac{5!}{2!2!1!}\left(\dfrac{1}{4}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{4}\right)^{2}\dfrac{1}{2}=\boldsymbol{\dfrac{15}{256}}$
※ $\hspace{-0.5mm} _{5}{\rm C}_{2}\cdot \hspace{-0.5mm} _{3}{\rm C}_{2}\left(\dfrac{1}{4}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{4}\right)^{2}\dfrac{1}{2}$ として,同じものを含む順列を複数のコンビネーションで表現してももちろんOKです.
練習問題
練習1
赤玉4個,白玉8個入っている袋から,1個取り出して色を調べもとの袋に戻すことを5回繰り返す.
(1)少なくとも2回赤玉が出る確率を求めよ.
(2)5回目に3度目の赤が出る確率を求めよ.
練習2
サイコロを投げて,動点 $P(x,y)$ を以下の規則で動かす.
・2が出れば $x$ 座標を $+1$
・奇数が出れば $y$ 座標を $+1$
・合成数(4か6)が出れば $y$ 座標を $-1$
$P$ は最初に原点にあるものとする.
(1)サイコロを4回投げて $P$ が原点にいる確率を求めよ.
(2)サイコロを5回投げて $P$ が $(2,1)$ にいる確率を求めよ.
練習1の解答
(1)
$P(少なくとも2回赤)$
$=1-P(0回赤)-P(1回赤)$
$=1-\left(\dfrac{2}{3}\right)^{5}-\hspace{-0.5mm} _{5}{\rm C}_{1}\cdot\dfrac{1}{3}\left(\dfrac{2}{3}\right)^{4}$
$=\boldsymbol{\dfrac{131}{243}}$
※ 少なくとも〜の確率は余事象を考えることが多いです.直接求めると少し大変です.
(2)
$P(5回目に3度目の赤)$
$=P(4回中2回赤)\times P(1回で赤)$
$=\hspace{-0.5mm} _{4}{\rm C}_{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{2}\left(\dfrac{2}{3}\right)^{2}\times \dfrac{1}{3}$
$=\boldsymbol{\dfrac{8}{81}}$
練習2の解答
(1)
4回中2回奇数,2回合成数が出ればいいので
$\hspace{-0.5mm} _{4}{\rm C}_{2}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{3}\right)^{2}=\boldsymbol{\dfrac{1}{6}}$
(2)
5回中2回2,2回奇数,1回合成数が出ればいいので
$\dfrac{5!}{2!2!1!}\left(\dfrac{1}{6}\right)^{2}\left(\dfrac{1}{2}\right)^{2}\dfrac{1}{3}=\boldsymbol{\dfrac{5}{72}}$