多項定理
タイプ:入試の標準 レベル:★★★

二項定理の一般化である多項定理を,証明も含めて解説します.
検定教科書では $(a+b+c)^n$ のみ発展として扱われていますが,難関大学受験者はほぼ必須です.
多項定理とその証明
例として $(a+b+c)^{3}$ の展開式を考えます.
展開公式を使わずに,積の順序変更もせずに以下のように展開してみます.
$(a+b+c)^3$
$=(a+b+c)(a+b+c)(a+b+c)$
$=(aa+ab+ac+ba+bb+bc+ca+cb+cc)$$(a+b+c)$
$=aaa+aab+aac+aba+abb+abc$
$+aca+acb+acc+baa+bab+bac$
$+bba+bbb+bbc+bca+bcb+bcc$
$+caa+cab+cac+cba+cbb+cbc$
$+cca+ccb+ccc$
上の式で,例えば $a^{2}b$ では
$aab$,$aba$,$baa$
の3つありますが,これは $\boldsymbol{a}$ 2個,$\boldsymbol{b}$ 1個の同じものを含む順列より
$\dfrac{3!}{2!1!}$
だけあります.また $abc$ では
$abc$,$acb$,$bac$,$bca$,$cab$,$cba$
の6つありますが,これは $\boldsymbol{a}$ 1個,$\boldsymbol{b}$ 1個,$\boldsymbol{c}$ 1個の順列より
$3!=\dfrac{3!}{1!1!1!}$
だけあります.同様に考えると $(a+b+c)^{3}$ の一般項は以下のように書けるはずです.
$\dfrac{3!}{k!l!(3-k-l)!}a^{k}b^{l}c^{3-k-l}$
下で一般化します.
ポイント
多項定理
$\boldsymbol{(x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{m})^{n}}$ の一般項は
$\boldsymbol{\dfrac{n!}{p_{1}!p_{2}!\cdots p_{m}!}x_{1}^{p_{1}}x_{2}^{p_{2}}\cdots x_{m}^{p_{m}}}$ $\boldsymbol{(p_{1}+p_{2}+\cdots+p_{m}=n)}$
特殊な和の形で表すと
$\displaystyle \boldsymbol{(x_{1}+x_{2}+\cdots+x_{m})^{n}=\sum_{p_{1}+p_{2}+\cdots+p_{m}=n} \dfrac{n!}{p_{1}!p_{2}!\cdots p_{m}!}x_{1}^{p_{1}}x_{2}^{p_{2}}\cdots x_{m}^{p_{m}}}$
※ 和は $p_{1}+p_{2}+\cdots+p_{m}=n$ を満たすすべての非負整数の組み合わせの和を表す.
係数 $\dfrac{n!}{p_{1}!p_{2}!\cdots p_{m}!}$ を多項係数といいます.
二項定理が成り立つことは前提とした上で数学的帰納法による証明を下に格納しておきます.
証明
例題と練習問題
例題
例題
$(x+2y-3z)^6$ の $x^{2}yz^{3}$ の項の係数を求めよ.
講義
多項定理の公式を適用するだけです.
解答
$x^{2}yz^{3}$ の項は
$\dfrac{6!}{2!1!3!}x^{2}(2y)(-3z)^{3}=-3240x^{2}yz^{3}$
$\therefore \ \boldsymbol{-3240}$
※ $\{(x+2y)-3z\}^6$ として二項定理を2回適用する方法もあります.
練習問題
練習
(1) $\left(a+b-2c\right)^3$ の展開式を求めよ.
(2) $(x^{2}+2x-1)^{20}$ を展開したとき,$x^{3}$ の係数を求めよ.
練習の解答