余弦定理
タイプ:教科書範囲 レベル:★★★

余弦定理とその証明を紹介します.
後半では正弦定理を使った複合的な問題も含めて扱います.
余弦定理とその証明
ポイント
余弦定理
$\triangle \rm{ABC}$ において

$\boldsymbol{a^{2}=b^{2}+c^{2}-2bc\cos A}$
$\boldsymbol{b^{2}=c^{2}+a^{2}-2ca\cos B}$
$\boldsymbol{c^{2}=a^{2}+b^{2}-2ab\cos C}$
例えば $A=90^{\circ}$ のときは,$a^{2}=b^{2}+c^{2}$ となり三平方の定理そのものになります.つまり余弦定理とはどんな三角形にも使える三平方の定理のようなものです.すなわち三平方の定理の一般化になります.
証明ですが,一番上の式を証明すれば他も同様なのでそれのみ示します.
証明
証明
図のように,原点が $\rm A$,辺 $\rm AB$ が $x$ 軸上に来るように $\triangle \rm{ABC}$ を設定する.$\rm C$ から直線 $\rm AB$ 上に下ろした垂線の足を $\rm H$ とする.

線分 $\rm{BC}$ の2乗に関して
$a^{2}$
$={\rm CH}^{2}+{\rm BH}^{2}$
$=(b\sin A)^{2}+(c-b\cos A)^{2}$
$=b^{2}\sin^{2} A+b^{2}\cos^{2} A-2bc\cos A+c^{2}$
$=b^{2}+c^{2}-2bc\cos A$
が成り立つ.同様にして他の式も得られる.
具体的に場合分けをした証明
上は包括的に示した証明ですが, $\rm C$ の $x$ 座標の位置により,すなわち $A$ と $B$ が鋭角か鈍角か直角かによって具体的に場合分けした証明を以下に格納しておきます.
具体的に場合分けをした証明
別表現
余弦定理を $\cos$ について解いた表現
$\cos A=\dfrac{b^{2}+c^{2}-a^{2}}{2bc}$
$\cos B=\dfrac{c^{2}+a^{2}-b^{2}}{2ca}$
$\cos C=\dfrac{a^{2}+b^{2}-c^{2}}{2ab}$
はこの形で覚えておくと楽に取り組めることが多いです.
例題と練習問題
例題
例題
$\triangle \rm{ABC}$ において
(1) $b=4$,$c=9$,$A=60^{\circ}$ のとき,$a$ を求めよ.
(2) $\sin A:\sin B:\sin C=5:7:8$ のとき,角 $B$ を求めよ.
講義
(1)

補助線を引いたりしても解けますが,余弦定理
$a^{2}=b^{2}+c^{2}-2bc\cos A$
を使うと楽です.
(2) 正弦定理を使って,各辺の長さの比を出します.各辺の長さを文字で置いた後,$\cos B=\dfrac{c^{2}+a^{2}-b^{2}}{2ca}$ を使うと楽です.
解答
(1)
余弦定理より
$a^{2}=4^{2}+9^{2}-2\cdot4\cdot9\cos 60^{\circ}=61$
$\therefore \ a=\boldsymbol{\sqrt{61}}$
(2)
正弦定理
$\dfrac{a}{\sin A}=\dfrac{b}{\sin B}=\dfrac{c}{\sin C}=2R$
より
$\sin A:\sin B:\sin C=a:b:c=5:7:8$
ここで,$a=5k$,$b=7k$,$c=8k$ とおくと,余弦定理より
$\cos B$
$=\dfrac{c^{2}+a^{2}-b^{2}}{2ca}$
$=\dfrac{(8k)^{2}+(5k)^{2}-(7k)^{2}}{2\cdot5k \cdot 8k}$
$=\dfrac{1}{2}$
$\therefore \ B=\boldsymbol{60^{\circ}}$
練習問題
練習
$\triangle \rm{ABC}$ において,外接円の半径を $R$ とする.
(1) $a=13$,$c=7$,$A=120^{\circ}$ のとき,$b$ を求めよ.
(2) $a=3\sqrt{2}$,$b=2\sqrt{3}$,$c=3+\sqrt{3}$ のとき,角 $A$,$B$,$C$ と $R$ を求めよ.
(3) $\sin A:\sin B:\sin C=2:7:3\sqrt{3}$ のとき,最も大きい角を求めよ.
(4) $\sin A\cos A=\sin B\cos B$ が成り立つとき,$\triangle \rm ABC$ はどのような三角形か.
練習の解答