因数定理と因数の見つけ方
複素数と方程式(教科書範囲) ★★

因数定理の紹介をし,因数定理を使った高次式の因数分解の問題を扱います.
因数定理
剰余の定理で余りを $0$ とすると次の定理が容易に成り立ちます.
因数定理
$P(x)$ を整式とする.
$P(x)$ が $x-\alpha$ を因数にもつ $\Longleftrightarrow \ P(\alpha)=0$
因数分解の仕方と因数の見つけ方
因数定理を利用して,数学Ⅰの因数分解では困難な,基本的には1文字の高次式の因数分解に取り組みます.
3次式の因数分解の仕方
STEP1:3次式 $ax^{3}+bx^{2}+cx+d$ に代入して $0$ になる $x=\alpha$ を探す.
STEP2:$ax^{3}+bx^{2}+cx+d$ が因数定理により $x-\alpha$ で括れる.商は暗算か組立除法か多項式の割り算で出す.
$ax^{3}+bx^{2}+cx+d=a(x-\alpha)(x^{2}+sx+t)$
STEP3:$x^{2}+sx+t$ を因数分解する(できない場合もあります).
※ 4次式以上でもまったく同様です.
続いて因数を見つけるときのちょっとしたコツを紹介します.
因数の見つけ方
$3$ 次式 $ax^{3}+bx^{2}+cx+d=0$ の解 $x=\alpha$ の候補は
$\alpha$ の候補 $=$ $\pm \dfrac{d \ の約数}{a \ の約数}$
※ 4次式以上でもまったく同様です.
闇雲に探すよりも,上のルールを知っていると効率がいいです.
例題と練習問題
例題
例題
次の式を因数分解せよ.
(1) $x^{3}+4x^{2}-7x-10$
(2) $2x^{3}-3x^{2}-11x+6$
(3) $x^{4}-2x^{3}+2x^{2}-7x+6$
講義
(1)は $\pm10$ の約数が候補です.
(2)は $\pm \dfrac{6 \ の約数}{2 \ の約数}$ つまり $\pm1$,$\pm2$,$\pm3$,$\pm6$,$\pm\dfrac{1}{2}$,$\pm\dfrac{3}{2}$ が候補です.
(3)は $\pm6$ の約数が候補です.
すべて $\pm1$ から探していくといいです.
解答
(1)
$x=-1$ を代入すると $0$ になるから
$x^{3}+4x^{2}-7x-10$
$=(x+1)(x^{2}+3x-10)$
$=\boldsymbol{(x+1)(x+5)(x-2)}$
(2)
$x=-2$ を代入すると $0$ になるから
$2x^{3}-3x^{2}-11x+6$
$=(x+2)(2x^{2}-7x+3)$
$=\boldsymbol{(x+2)(2x-1)(x-3)}$
(3)
$x=1$ を代入すると $0$ になるから
$x^{4}-2x^{3}+2x^{2}-7x+6$
$=(x-1)(x^{3}-x^{2}+x-6)$
$=\boldsymbol{(x-1)(x-2)(x^{2}+x+3)}$
練習問題
練習1
次の式を因数分解せよ.
(1) $2x^{3}+5x^{2}+8x+3$
(2) $x^{4}+2x^{3}-8x^{2}-18x-9$
練習2
$P(x)=x^{4}+px^{3}-11x^{2}+qx+10$ が $x-1$,$x-2$ で割り切れるとき,$p$,$q$ の値を求め,$P(x)$ を因数分解せよ.
練習1の解答
(1)
$2x^{3}+5x^{2}+8x+3$
$=\boldsymbol{(2x+1)(x^{2}+2x+3)}$
(2)
$x^{4}+2x^{3}-8x^{2}-18x-9$
$=(x+1)(x^{3}+x^{2}-9x-9)$
$=(x+1)^{2}(x^{2}-9)$
$=\boldsymbol{(x+1)^{2}(x+3)(x-3)}$
練習2の解答
因数定理より
$\begin{cases}P(1)=p+q=0 \\ P(2)=8p+2q-18=0\end{cases}$
解くと,$\boldsymbol{p=3}$,$\boldsymbol{q=-3}$.
$P(x)=x^{4}+3x^{3}-11x^{2}-3x+10$
$=(x-1)(x^{3}+4x^{2}-7x-10)$
$=(x-1)(x-2)(x^{2}+6x+5)$
$=\boldsymbol{(x-1)(x-2)(x+1)(x+5)}$