整式の割り算の余り(剰余の定理)
複素数と方程式(教科書範囲) ★★

整式の割り算の余りの問題について扱います.入試でも頻出です.
剰余の定理の言及もします.
整式の割り算の余りの求め方
整式の割り算は過去の範囲で既習済みのはずですが,今回は割り算の余りに注目します.
ポイント
整式の割り算の余りの求め方
整式 $P(x)$ を $D(x)$ で割るとき,商を $Q(x)$,余りを $R(x)$ とおいて
$P(x)=D(x)Q(x)+R(x)$
を立式する.普通 $Q(x)$ が正体不明だが,$D(x)=0$ となるような $x$ を代入して $R(x)$ の情報を得る.
※ 上の恒等式は (割られる数) $=$ (割る数) $\times$ (商) $+$ (余り) という構造です.
※ $P(x)$ は polynomial, $D(x)$ は divisor, $Q(x)$ は quotient, $R(x)$ は remainder が由来です.
上の構造式を毎回設定して解けばいいので,下に紹介する剰余の定理は存在を知らなくても大きな問題にはなりません.
剰余の定理
剰余の定理(remainder theorem)とは,整式を1次式で割ったときの余りに関する定理です.
ポイント
剰余の定理
Ⅰ 整式 $P(x)$ を $x-\alpha$ で割るとき,余りは $P(\alpha)$ である.
Ⅱ 整式 $P(x)$ を $ax+b$ で割るとき,余りは $P\left(-\dfrac{b}{a}\right)$ である.
※ Ⅱ は Ⅰ の一般化です.
Ⅰの証明
整式 $P(x)$ を $x-\alpha$ で割るとき,商を $Q(x)$,余りを $r$ とおくと
$P(x)=(x-\alpha)Q(x)+r$
両辺に $x=\alpha$ を代入すると
$P(\alpha)=r$
すなわち余りは $P(\alpha)$.
Ⅱの証明
整式 $P(x)$ を $ax+b$ で割るとき,商を $Q(x)$,余りを $r$ とおくと
$P(x)=(ax+b)Q(x)+r$
両辺に $x=-\dfrac{b}{a}$ を代入すると
$P\left(-\dfrac{b}{a}\right)=r$
すなわち余りは $P\left(-\dfrac{b}{a}\right)$.
例題と練習問題
例題
例題
(1) 整式 $x^{4}-3x^{2}+x+7$ を $x-2$ で割ったときの余りを求めよ.
(2) 整式 $P(x)$ を $x-1$ で割ると余りが $7$,$x+9$ で割ると余りが $2$ である.$P(x)$ を $(x-1)(x+9)$ で割った余りを求めよ.
講義
剰余の定理をダイレクトでは使わず,知らなくてもいいように答案を書いてみます.
(2)は頻出の問題で,$(x-1)(x+9)$ ( $2$ 次式)で割った余りは $1$ 次式となるので,求める余りを $\color{red}{ax+b}$ とおきます.
解答
(1)
$x^{4}-3x^{2}+x+7$ を $x-2$ で割ったときの商を $Q(x)$ 余りを $r$ とすると
$x^{4}-3x^{2}+x+7=(x-2)Q(x)+r$
両辺に $x=2$ を代入すると
$13=r$
余りは $\boldsymbol{13}$
※ 実際に割り算を実行して求めてもいいですが計算が大変です.
(2)
$P(x)$ を $x-1$ で割ったときの商を $Q_{1}(x)$,$x+9$ で割ったときの商を $Q_{2}(x)$,$(x-1)(x+9)$ で割ったときの商を $Q_{3}(x)$ 余りを $ax+b$ とすると
$\begin{cases}P(x)=(x-1)Q_{1}(x)+7 \\ P(x)=(x+9)Q_{2}(x)+2 \\ P(x)=(x-1)(x+9)Q_{3}(x)+ax+b\end{cases}$
1行目と3行目に $x=1$ を代入すると
$P(1)=7=a+b$
2行目と3行目に $x=-9$ を代入すると
$P(-9)=2=-9a+b$
解くと
$a=\dfrac{1}{2}$,$b=\dfrac{13}{2}$
求める余りは $\boldsymbol{\dfrac{1}{2}x+\dfrac{13}{2}}$
練習問題
練習
整式 $P(x)$ を $x-2$ で割ると余りが $9$,$(x+2)^{2}$ で割ると余りが $20x+17$ である.$P(x)$ を $(x+2)(x-2)$ で割ったときと,$(x+2)^{2}(x-2)$ で割ったときの余りをそれぞれ求めよ.
練習の解答 出典:2020国際医療福祉大医学部
$P(x)$ を $x-2$ で割ったときの商を $Q_{1}(x)$,$(x+2)^2$ で割ったときの商を $Q_{2}(x)$,$(x+2)(x-2)$ で割ったときの商を $Q_{3}(x)$ 余りを $ax+b$ とすると
$\begin{cases}P(x)=(x-2)Q_{1}(x)+9 \\ P(x)=(x+2)^{2}Q_{2}(x)+20x+17 \\ P(x)=(x-2)(x+2)Q_{3}(x)+ax+b\end{cases}$
1行目と3行目に $x=2$ を代入すると
$P(2)=9=2a+b$
2行目と3行目に $x=-2$ を代入すると
$P(-2)=-23=-2a+b$
解くと
$a=8$,$b=-7$
$P(x)$ を $(x+2)(x-2)$ で割った余りは $\boldsymbol{8x-7}$
$Q_{2}(x)$ を $x-2$ で割った商を $Q_{4}(x)$,余りを $c$ とおくと
$P(x)$
$=(x+2)^{2}\{(x-2)Q_{4}(x)+c\}+20x+17$
$=(x+2)^{2}(x-2)Q_{4}(x)+c(x+2)^{2}+20x+17$
$x=2$ を代入すると
$P(2)=16c+57=9$
$\therefore \ c=-3$
$P(x)$ を $(x+2)(x-2)$ で割った余りは
$-3(x+2)^{2}+20x+17=\boldsymbol{-3x^{2}+8x+5}$
※ 後半で $P(x)=(x+2)^{2}(x-2)Q(x)+\alpha x^{2}+\beta x+\gamma$ などと余りを $2$ 次式で設定すると,材料が足りなくてそのままでは $\alpha$,$\beta$,$\gamma$ を出せません.この方法で出したい場合は数学Ⅲの積の微分を使うと最後の材料になって解けることがあります.