部分分数分解の主要パターン
タイプ:教科書範囲 レベル:★★★

高校数学で必要となる部分分数分解の主なパターンの紹介と,分解の仕方の解説をします.演習問題も用意しました.
部分分数分解の主要パターンとルール
部分分数分解とは
例えば
$\dfrac{11x+2}{(x+1)(2x+1)}=\dfrac{3}{x+1}+\dfrac{5}{2x-1}$
のように,左辺の分母の因数を分母にもつ分数式に分解することです.
数学Bの数列でのシグマ計算や,数学Ⅲの積分で部分分数分解ができないと問題が解けなくて困ることがあります.
ポイント
部分分数分解の主要パターン
$\dfrac{px+q}{(ax+b)(cx+d)}=\dfrac{\alpha}{ax+b}+\dfrac{\beta}{cx+d}$
$\dfrac{px+q}{(ax+b)^2}=\dfrac{\alpha}{ax+b}+\dfrac{\beta}{(ax+b)^2}$
$\dfrac{px^{2}+qx+r}{(ax+b)(cx+d)(ex+f)}=\dfrac{\alpha}{ax+b}+\dfrac{\beta}{cx+d}+\dfrac{\gamma}{ex+f}$
$\dfrac{px^{2}+qx+r}{(ax+b)^{2}(cx+d)}=\dfrac{\alpha}{ax+b}+\dfrac{\beta}{(ax+b)^2}+\dfrac{\gamma}{cx+d}$
$\dfrac{px^{2}+qx+r}{(ax+b)(cx^{2}+dx+e)}=\dfrac{\alpha}{ax+b}+\dfrac{\beta x+\gamma}{cx^{2}+dx+e}$
※上の文字どれかが $0$ になることもあります.
以上が部分分数分解の主要なパターンになります.
何をもって主要かというと,これ以上複雑になると未知数が $\alpha$,$\beta$,$\gamma$,$\delta$ など4つ以上に及び,算出するのが困難なだけで,出題されにくいと考えています.当然これらのパターンしかないというというわけではありません.
ポイント
部分分数分解のルール
(ⅰ) 分母の因数を分母とした,真分数式(分子の方が次数が低い式)の和に展開できる.
(ⅱ) 分母の因数に累乗があれば,その指数以下のすべての累乗を分母とした分数式をすべて考慮する.
(ⅰ),(ⅱ)を踏まえれば例えば
$\dfrac{4x^{7}+19x^{6}+44x^{5}+62x^{4}+60x^{3}+35x^{2}+13x+1}{x(x+1)^{3}(x^{2}+x+1)^{2}}=\dfrac{1}{x}+\dfrac{1}{x+1}+\dfrac{3}{(x+1)^2}+\dfrac{4}{(x+1)^3}+\dfrac{2x-1}{x^{2}+x+1}+\dfrac{x+1}{(x^{2}+x+1)^{2}}$
のように,分解しようと思えば理論的には上のようにできるが,人間が解く問題としては大変なだけですね.
深い定理や証明は大学の代数学に譲ります.
当ページとしては,主要パターンをの部分分数分解をこなせるようになることを目的とします.
部分分数分解の仕方
ポイント
部分分数分解の仕方
Ⅰ 分母をはらって,数値代入法
Ⅱ 分母をはらって,係数比較法
Ⅲ 簡単な部分分数分解公式
$\displaystyle \dfrac{1}{AB}=\dfrac{1}{B-A}\left(\dfrac{1}{A}-\dfrac{1}{B}\right)$
を使う( $A$,$B$ は多項式で,$B-A$ が定数).
問題に応じて,解きやすい方を選びます.
下の問題で確認していきます.
例題と練習問題
例題
例題
次の式を部分分数分解をせよ.
(1) $\dfrac{1}{(x+1)(x+2)}$
(2) $\dfrac{5x+7}{(x+1)(2x+3)}$
(3) $\dfrac{4x+5}{(x+2)^{2}}$
(4) $\dfrac{8x^{2}-5x+1}{x(2x-1)^2}$
(5) $\dfrac{3x^{2}-2x+4}{x^{3}+1}$
講義
部分分数分解の仕方でのⅠ,Ⅱはどの問題でも解けますが,Ⅰで解くのが楽なことが多いです.Ⅲが使えそうならⅢで解きましょう.
解答
(1) Ⅲを使うのが楽です( $A=x+1$,$B=x+2$ として).
$\dfrac{1}{(x+1)(x+2)}$
$=\dfrac{1}{x+2-(x+1)}\left(\dfrac{1}{x+1}-\dfrac{1}{x+2}\right)$
$=\boldsymbol{\dfrac{1}{x+1}-\dfrac{1}{x+2}}$
(2) Ⅰで解きます.
$\dfrac{5x+7}{(x+1)(2x+3)}=\dfrac{a}{x+1}+\dfrac{b}{2x+3}$
として,両辺 $(x+1)(2x+3)$ 倍すると
$5x+7=a(2x+3)+b(x+1)$
$x=-1$,$-\dfrac{3}{2}$ をそれぞれ代入すると
$\begin{cases}2=a \\ -\dfrac{1}{2}=-\dfrac{1}{2}b\end{cases}$ $\therefore \ a=2$,$b=1$
$\therefore \ \dfrac{5x+7}{(x+1)(2x+3)}=\boldsymbol{\dfrac{2}{x+1}+\dfrac{1}{2x+3}}$
(3) もちろん他と同じように解けますが,式変形だけで分解できると思います.
$\dfrac{4x+5}{(x+2)^{2}}=\dfrac{4(x+2)-3}{(x+2)^{2}}=\boldsymbol{\dfrac{4}{x+2}-\dfrac{3}{(x+2)^{2}}}$
(4) Ⅰで解きます.
$\dfrac{8x^{2}-5x+1}{x(2x-1)^2}=\dfrac{a}{x}+\dfrac{b}{2x-1}+\dfrac{c}{(2x-1)^2}$
として,両辺 $x(2x-1)^2$ 倍すると
$8x^{2}-5x+1=a(2x-1)^2+bx(2x-1)+cx$
$x=\dfrac{1}{2}$,$0$,$1$ をそれぞれ代入すると
$\begin{cases}\dfrac{1}{2}=\dfrac{c}{2} \\ 1=a \\ 4=a+b+c \end{cases}$ $\therefore \ a=1$,$b=2$,$c=1$
$\therefore \ \dfrac{8x^{2}-5x+1}{x(2x-1)^2}=\boldsymbol{\dfrac{1}{x}+\dfrac{2}{2x-1}+\dfrac{1}{(2x-1)^2}}$
(5) Ⅰで解きます.
$\dfrac{3x^{2}-2x+4}{x^{3}+1}=\dfrac{a}{x+1}+\dfrac{bx+c}{x^{2}-x+1}$
として,両辺 $(x+1)(x^{2}-x+1)$ 倍すると
$3x^{2}-2x+4=a(x^{2}-x+1)+(bx+c)(x+1)$
$x=-1$,$0$,$1$ をそれぞれ代入すると
$\begin{cases}9=3a \\ 4=a+c \\ 5=a+2b+2c \end{cases}$ $\therefore \ a=3$,$b=0$,$c=1$
$\therefore \ \dfrac{3x^{2}-2x+4}{x^{3}+1}=\boldsymbol{\dfrac{3}{x+1}+\dfrac{1}{x^{2}-x+1}}$
練習問題
練習
次の式を部分分数分解をせよ.
(1) $\dfrac{1}{(3n-1)(3n+2)}$
(2) $\dfrac{26x-5}{2(2x+1)(4x-1)}$
(3) $\dfrac{4x^{2}+12x+10}{(x+1)(x+2)(x+3)}$
(4) $\dfrac{9x^{2}}{(x-1)^{2}(x+2)}$
(5) $\dfrac{x^{3}+2x^{2}+1}{x^{2}(x^{2}+1)}$
練習の解答