おいしい数学HOMEへのリンク

イェンセンの不等式

数学Ⅲ既習者(難関大対策+) ★★★


アイキャッチ

イェンセンの不等式に関して解説し,大学入試における関連問題を扱います.



イェンセンの不等式とその証明

関数の凹凸と変曲点で,関数が下に凸であることの定義や性質を扱いました.下に凸な関数において以下の不等式が成り立ちます.

ポイント

イェンセンの不等式

区間 $I$ で定義された関数 $f(x)$ について,次の2つは同値である.

(A) 区間 $I$ で下に凸である.すなわち区間 $I$ の任意の2点 $a$,$b$,任意の $0< t<1$ に対して $f(ta+(1-t)b)\leqq tf(a)+(1-t)f(b)$ を満たす.

下に凸の定義1

(B) $x_{1},x_{1},\cdots,x_{n}\in I$,$t_{1}>0$,$t_{1}>0$,$\cdots$,$t_{n}>0$,$\displaystyle \sum_{i=1}^{n}t_{i}=1$ を満たす実数に対して

$\displaystyle f\left(\sum_{i=1}^{n}t_{i}x_{i}\right)\leqq \sum_{i=1}^{n}t_{i}f(x_{i})$

が成り立つ.等号成立は $x_{1}=x_{2}=\cdots=x_{n}$ のとき.

※ (A)の不等式の $\leqq$ を $<$ に変えたものを狭義の下に凸ということがあります.その場合(A)は広義の下に凸と言います.


主に大学以降での下に凸の定義である(A)と,イェンセンの不等式と呼ばれる(B)が同値であることを確認できます.関数が下に凸(凸関数と呼ばれたりします)ならば(B)の不等式が適用できます.

ちなみに上に凸の場合は(A)と(B)の符号を変えたものになります.

例えば,(相加平均) ≧ (相乗平均) (n変数)を導くのに使います.

証明

証明は数学的帰納法を使います.

証明

(A) $\Longrightarrow$ (B)の証明

(ⅰ) $n=1$ のとき

$t_{1}=1$ より $f(t_{1}x_{1})=f(x_{1})\leqq f(x_{1})=t_{1}f(x_{1})$ から成立.

(ⅱ) $n=k$ のとき成り立つと仮定する.

$n=k+1$ のとき

 $\displaystyle f\left(\sum_{i=1}^{k+1}t_{i}x_{i}\right)$

$\displaystyle =f\left(\sum_{i=1}^{k}t_{i}x_{i}+t_{k+1}x_{k+1}\right)$

$\displaystyle =f\left((1-t_{k+1})\sum_{i=1}^{k}\dfrac{t_{i}}{1-t_{k+1}}x_{i}+t_{k+1}x_{k+1}\right)$

$\displaystyle \leqq (1-t_{k+1})f\left(\sum_{i=1}^{k}\dfrac{t_{i}}{1-t_{k+1}}x_{i}\right)+t_{k+1}f(x_{k+1})$

$\displaystyle \leqq(1-t_{k+1})\left(\sum_{i=1}^{k}\dfrac{t_{i}}{1-t_{k+1}}f(x_{i})\right)+t_{k+1}f(x_{k+1})$

$\displaystyle =\sum_{i=1}^{k}t_{i}f(x_{i})+t_{k+1}f(x_{k+1})$

$\displaystyle =\sum_{i=1}^{k+1}t_{i}f(x_{i})$

よってこのときも成立.

(ⅰ)(ⅱ)よりすべての自然数 $n$ に関して与式が成立.

(B) $\Longrightarrow$ (A)の証明

(B) で $n=2$,$t_{1}=t$,$t_{2}=1-t$ とすれば(A)となる.

練習問題

練習

実数 $a>0$ 対して,$f(a)=\dfrac{1}{a}$ と表すとき,以下の問いに答えよ.

(1) $0<a<b$ のとき,次の不等式を証明せよ.

$\dfrac{f(a)+f(b)}{2}>f\left(\dfrac{a+b}{2}\right)$

(2) $0<a<b$,$0<w<1$ のとき,次の不等式を証明せよ.

$wf(a)+(1-w)f(b)>f\left(wa+(1-w)b\right)$

(3) $0<a_{1}<a_{2}<\cdots <a_{n}$ のとき,$n\geqq 2$ に対して次の不等式が成り立つ.

$\displaystyle \dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}f(a_{i})>f\left(\dfrac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}a_{i}\right)$

このことを数学的帰納法で証明せよ.

練習の解答 出典:2007青山学院大経済学部

(1)は(2)で $w=\dfrac{1}{2}$ とした場合なので(2)を示せば(1)を示したことになります.

(2)

 $wf(a)+(1-w)f(b)-f\left(wa+(1-w)b\right)$

$=\dfrac{w}{a}+\dfrac{1-w}{b}-\dfrac{1}{wa+(1-w)b}$

$=\dfrac{wb(wa+(1-w)b)+(1-w)a(wa+(1-w)b)-ab}{ab(wa+(1-w)b)}$

$=\dfrac{w^{2}ab+w(1-w)b^{2}+w(1-w)a^{2}+(1-w)^{2}ab-ab}{ab(wa+(1-w)b)}$

$=\dfrac{(2w^{2}-2w)ab+w(1-w)(a^{2}+b^{2})}{ab(wa+(1-w)b)}$

$=\dfrac{w(1-w)(a^{2}+b^{2}-2ab)}{ab(wa+(1-w)b)}$

$=\dfrac{w(1-w)(a-b)^{2}}{ab(wa+(1-w)b)}>0$

$\therefore \ wf(a)+(1-w)f(b)>f\left(wa+(1-w)b\right)$


(3)

(ⅰ) $n=2$ のとき $a_{1}=a$,$a_{2}=b$ とおくと(1)より成立.

(ⅱ) $n=k$ のとき成り立つと仮定する.

$n=k+1$ のとき

 $\displaystyle f\left(\dfrac{1}{k+1}\sum_{i=1}^{k+1}a_{i}\right)$

$\displaystyle =f\left(\dfrac{1}{k+1}\sum_{i=1}^{k}a_{i}+\dfrac{1}{k+1}a_{k+1}\right)$

$\displaystyle =f\left(\dfrac{k}{k+1}\cdot\dfrac{1}{k}\sum_{i=1}^{k}a_{i}+\dfrac{1}{k+1}a_{k+1}\right)$

$\displaystyle <\dfrac{k}{k+1}f\left(\dfrac{1}{k}\sum_{i=1}^{k}a_{i}\right)+\dfrac{1}{k+1}f(a_{k+1}) \ (\because (2))$

$\displaystyle <\dfrac{k}{k+1}\cdot\dfrac{1}{k}\sum_{i=1}^{k}f(a_{i})+\dfrac{1}{k+1}f(a_{k+1})$

$\displaystyle =\dfrac{1}{k+1}\sum_{i=1}^{k+1}f(a_{i})$

よってこのときも成立.

(ⅰ)(ⅱ)より $2$ 以上の自然数 $n$ に関して与式が成立.