微分係数,導関数の定義
微分(数学Ⅱ)(教科書範囲) ★
微分係数,導関数の定義を紹介し,微分とは何かを解説します.
数学Ⅱの微分を想定していますが,数学Ⅲも同じです.
微分係数の定義,導関数の定義
導入
微分とは,どうすれば関数の接線を引くことができるだろうか,という疑問から始まります.
上の図のように,$y=f(x)$ 上の $x=a$ の点で接線を引きたいとします.接線の傾きさえわかれば,接線が出せるはずです.
そこで $y=f(x)$ 上の $x=a+h$ の点を使い,2点を通る直線を引きます.この傾きならば,中学生でも出せるはずです.この傾きは
(傾き) $=\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$
で表され,$x=a$ から $a+h$ までの平均変化率ともいいます.
そして,左の点は固定して右の点を徐々に左の点に近づける,つまり $h$ を 限りなく $\boldsymbol{0}$ に近づければ,上の点線は接線になるはずです.
接線の傾きは $\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}$ の中の $h$ を $0$ に近づけた値です.これを $x=a$ での微分係数といい,記号 $\displaystyle \lim_{h\to 0}$ を使い表します.
以下にまとめます.
$x=a$ での微分係数の定義(接線の傾き)
$\displaystyle \boldsymbol{f'(a)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f(a+h)-f(a)}{h}}$
※ $f'(a)$ は大学ではエフプライムエーとよく呼ばれ,日本の高校ではエフダッシュエーと読んでいる人が大多数です.
別表現
$x=a$ での微分係数の定義の別表現
上の式で $x=a+h$ と置き換えた
$\displaystyle \boldsymbol{f'(a)=\lim_{x\to a}\dfrac{f(x)-f(a)}{x-a}}$
も認知しておくといいと思います.特に極限の問題を解くとき等に使います.
$\displaystyle\lim_{h\to 0}$ は極限と呼ばれ,この場合 $h$ を $0$ に限りなく近づけるという記号です.
これで接線の傾きが表せました.ここで $a$ は定数なので,変数 $x$ (接線の傾きの関数)にしたい場合は,$a$ に $x$ を代入し,それを導関数といいます.
導関数の定義
$\displaystyle \boldsymbol{f'(x)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}}$
上の式,つまり導関数を求めることを微分をするといいます.
接線の傾きがわかれば,その時点でどのくらいグラフの増減に勢いがあるのかを調べることができるので,グラフの形を知る上で非常に重要です.
最終的には,微分をすることで多くの関数のグラフを書くことが出来ます.
簡単な極限計算
微分係数,導関数の定義に登場する $\displaystyle \lim$ という記号ですが,いくつか性質があるので紹介です.
極限の計算
$x$ が $a$ と異なる値を取りながら $a$ に限りなく近づくとき
$\displaystyle \lim_{x\to a}f(x)=f(a)$
極限値の性質
$\displaystyle \lim_{x\to a}f(x)=\alpha$,$\displaystyle \lim_{x\to a}g(x)=\beta$ のとき,次のことが成り立つ.
・$\displaystyle \lim_{x\to a}(f(x)+g(x))=\alpha+\beta$
・$k$ が実数のとき,$\displaystyle \lim_{x\to a}kf(x)=k\alpha$
・$\displaystyle \lim_{x\to a}f(x)g(x)=\alpha\beta$
・$\beta\neq0$ のとき,$\displaystyle \lim_{x\to a}\dfrac{f(x)}{g(x)}=\dfrac{\alpha}{\beta}$
本格的には数学Ⅲの関数の極限で扱いますが,定期試験等で多少極限計算が出るかもしれません.
下の例題で,極限計算で微分係数や導関数を出す練習をします.最終的には微分公式を使って出しますが,この経験は重要です.
例題と練習問題
例題
例題
関数 $f(x)=x^{2}-x$ において,次の問いに答えよ.
(1) $x=2$ における微分係数を求めよ.
(2) 導関数を求めよ.
講義
上の定義を使い,極限の計算をします.$\displaystyle \lim_{h\to 0}$ の中の式は最後まで約分をしてから数字を代入することに注意です.
解答
(1)
$\displaystyle f'(2)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f(2+h)-f(2)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{(2+h)^{2}-(2+h)-2}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{h^{2}+3h}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}(h+3)$ ←約分してから代入
$\displaystyle =\boldsymbol{3}$
(2)
$\displaystyle f'(x)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{(x+h)^{2}-(x+h)-(x^{2}-x)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{2xh+h^{2}-h}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}(2x+h-1)$ ←約分してから代入
$\displaystyle =\boldsymbol{2x-1}$
練習問題
練習
(1) 関数 $f(x)=x^{2}$ の $x=1$ での接線の傾きを(微分係数の定義に従って)求めよ.
(2) 関数 $f(x)=x^{3}-2x$ の導関数を(定義に従って)求めよ.
練習の解答
(1)
$\displaystyle f'\left(1\right)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f\left(1+h\right)-f\left(1\right)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{\left(1+h\right)^{2}-1^{2}}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{h^{2}+2h}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}(h+2)$
$\displaystyle =\boldsymbol{2}$
(2)
$\displaystyle f'(x)=\lim_{h\to 0}\dfrac{f(x+h)-f(x)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{(x+h)^{3}-2(x+h)-(x^{3}-2x)}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}\dfrac{3x^{2}h+3xh^{2}+h^{3}-2h}{h}$
$\displaystyle =\lim_{h\to 0}(3x^{2}+3xh+h^{2}-2)$
$\displaystyle =\boldsymbol{3x^{2}-2}$