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定積分で表された関数の微分

積分(数学Ⅱ,Ⅲ)(教科書範囲) ★★

アイキャッチ

数学Ⅱ,数学Ⅲ共通ページです.

定積分で表された関数の微分について扱います.

数学Ⅱは基本的に多項式関数を,数学Ⅲはすべての関数,また積分範囲も多様なものを扱います.

数学Ⅱの積分を勉強中の方は,2章までです.

定積分で表された関数の微分の解き方

$\displaystyle f(x)=\int_{1}^{x}(t^{2}-t)\,dt$ $\cdots$ ①

上の関数で $f'(x)$ を求めたいとき,$f(x)$ の正体を積分計算して出してから微分してもいいですが,わざわざ積分して微分するのは面倒な感じがします.

一般に

$\displaystyle f(x)=\int_{a}^{x}g(t)\,dt$

として,$g(x)$ の原始関数の1つを $G(x)$ とすると

$\displaystyle f(x)=\int_{a}^{x}g(t)\,dt=G(x)-G(a)$

と表記できるので,$x$ で最左辺と最右辺を微分すると

$\displaystyle f'(x)=g(x)-0=g(x)$

となります.つまり①の場合,$f'(x)=x^{2}-x$ となります.

定積分で表された関数の導関数の求め方

$\displaystyle f(x)=\int_{a}^{x}g(t)\,dt$ のように積分の中身を仮に $g(t)$ などとおき,$f(x)=G(x)-G(a)$ と表して両辺微分する.

数Ⅲでの注意

数Ⅲの場合,定積分の上端あるいは下端に $x$ 以外の $x$ の式がある場合がよくあるので,合成関数の微分を意識して微分します.

例題と練習問題(数学Ⅱ)

例題

例題

次の関数を微分せよ.

$\displaystyle f(x)=\int_{1}^{x}(t^{2}-t+3)\,dt$


講義

$\displaystyle g(t)=t^{2}-t+3$ などとおき,原始関数の1つを $G(t)$ とする.


解答

$\displaystyle g(t)=t^{2}-t+3$ とおき,原始関数の1つを $G(t)$ とすると

$\displaystyle f(x)=\int_{1}^{x}g(t)\,dt=G(x)-G(1)$

両辺微分すると

$\displaystyle \boldsymbol{f'(x)}=g(x)-0\boldsymbol{=x^{2}-x+3}$

※ 最初から $f'(x)=x^{2}-x+3$ としてもOKです.しかし次の章の数Ⅲの場合に上のような癖があると安全です.

※ $G(1)$ は定数なので $x$ で微分すると $0$ になりますね.

練習問題

練習1

次の関数の最小をとる $x$ の値を求めよ.

$\displaystyle f(x)=\int_{-1}^{x}(t-2)\,dt$

練習1の解答

$\displaystyle g(t)=t-2$ とおき,原始関数の1つを $G(t)$ とすると

$\displaystyle f(x)=\int_{-1}^{x}g(t)\,dt=G(x)-G(-1)$

両辺微分すると

$\displaystyle f'(x)=g(x)-0=x-2$

増減表は

$x$ $\cdots$ $2$ $\cdots$
$f'(x)$ $-$ $0$ $+$
$f(x)$ ↘︎ $f(2)$ ↗︎

$\boldsymbol{x=2}$ のとき最小をとる.

※ 積分して2次関数にしてもいいですが,導関数がすぐわかるので最小をとる $x$ の値だけなら増減表からすぐわかります.

例題と練習問題(数学Ⅲ)

例題

例題

次の関数を微分せよ.

(1) $\displaystyle f(x)=\int_{\pi}^{x}(x-t)\cos t\,dt$

(2) $\displaystyle f(x)=\int_{2x}^{x^{2}}te^{t}\,dt$


講義

(1)は積分の中身が,関数の主役である $x$ と積分の主役である $t$ が混在しているので注意です.$x$ を積分の外にはじき出してから微分します.(2)は $\displaystyle g(t)=te^{t}$ などとおき,原始関数の1つである $G(t)$ を利用するとわかりやすいです.


解答

(1)

 $\displaystyle f(x)$

$\displaystyle =\int_{\pi}^{x}(x-t)\cos t\,dt$

$\displaystyle =x\int_{\pi}^{x}\cos t\,dt-\int_{\pi}^{x}t\cos t\,dt$

 $f'(x)$

$\displaystyle =(x)'\int_{\pi}^{x}\cos t\,dt+x\left(\int_{\pi}^{x}\cos t\,dt\right)'-\left(\int_{\pi}^{x}t\cos t\,dt\right)'$

$\displaystyle =\int_{\pi}^{x}\cos t\,dt+x\cos x-x\cos x$

$\displaystyle =\Bigl[\sin t\Bigr]_{\pi}^{x}$

$\displaystyle =\boldsymbol{\sin x}$

※ $\displaystyle x\int_{\pi}^{x}\cos t\,dt$ は ( $x$ の関数)×( $x$ の関数)になるので,微分をするときは積の微分公式を適用します.


(2)

$\displaystyle g(t)=te^{t}$ とおき,原始関数の1つを $G(t)$ とすると

$\displaystyle f(x)=\int_{2x}^{x^2}g(t)\,dt=G(x^2)-G(2x)$

両辺微分すると

$\displaystyle \boldsymbol{f'(x)}=g(x^2)2x-g(2x)2\boldsymbol{=2x^{3}e^{x^2}-4xe^{2x}}$

※ 微分をするときは合成関数の微分公式を適用します.

練習問題

練習2

次の関数を微分せよ.

$\displaystyle f(x)=\int_{0}^{x}(x-t)^{2}e^{-t}\,dt$


練習3

正の実数 $x$ に対して,$\displaystyle f(x)=\int_{x}^{2x}t\log t\,dt$ とおく.$f(x)$の最小値を与える $x$ を求めよ.

練習2の解答

 $\displaystyle f(x)$

$\displaystyle =\int_{0}^{x}(x^{2}-2xt+t^{2})e^{-t}\,dt$

$\displaystyle =x^{2}\int_{0}^{x}e^{-t}\,dt-2x\int_{0}^{x}te^{-t}\,dt+\int_{0}^{x}t^{2}e^{-t}\,dt$

 $f'(x)$

$\displaystyle =2x\int_{0}^{x}e^{-t}\,dt+x^{2}e^{-x}-2\int_{0}^{x}te^{-t}\,dt-2x^{2}e^{-x}+x^{2}e^{-x}$

$\displaystyle =2x\int_{0}^{x}e^{-t}\,dt-2\int_{0}^{x}te^{-t}\,dt$ $\cdots$ ①

 $f''(x)$

$\displaystyle =2\int_{0}^{x}e^{-t}\,dt+2xe^{-x}-2xe^{-x}$

$\displaystyle =2\Bigl[-e^{-t}\Bigr]_{0}^{x}$

$\displaystyle =-2e^{-x}+2$

これを不定積分すると

$f'(x)=2e^{-x}+2x+C$

①と上の式に $x=0$ を代入して $f'(0)=0=2+C$ より $C=-2$ なので

$\boldsymbol{f'(x)=2e^{-x}+2x-2}$

※ ①で直接積分する方法でももちろんOKです.


練習3の解答

$\displaystyle g(t)=t\log t$ とおき,原始関数の1つを $G(t)$ とすると

$\displaystyle f(x)=\int_{x}^{2x}g(t)\,dt=G(2x)-G(x)$

両辺微分すると

 $f'(x)$

$=g(2x)2-g(x)$

$=4x\log 2x-x\log x$

$=x\log\dfrac{16x^{4}}{x}$

$=x\log 16x^{3}$

$x$ $0$ $\cdots$ $\dfrac{1}{2^{\frac{4}{3}}}$ $\cdots$
$f'(x)$ $×$ $-$ $0$ $+$
$f(x)$ $×$ ↘︎ ↗︎

$\boldsymbol{x=\dfrac{1}{2^{\frac{4}{3}}}}$ のとき最小をとる.