中間値の定理
極限(教科書範囲) ★★
連続な関数について成立する中間値の定理の紹介を扱います.どうしても大学範囲になりますが証明も付けました.
中間値の定理とその証明
中間値の定理
関数 $f(x)$ が閉区間 $[a,b]$ で連続で,$f(a)\neq f(b)$ ならば,$f(a)$ と $f(b)$ の間の任意の値 $k$ に対して
$a< c< b$,$f(c)=k$
を満たす実数 $c$ が少なくとも1つ存在する.
区間縮小法という考え方で示します.意欲的な方向けです.
証明
$f(a)< k < f(b)$ の場合と,$f(b)< k < f(a)$ の場合があるが,$f(a)< k < f(b)$ の場合のみ証明することで十分です.
$a_{1}=a$,$b_{1}=b$ とし,以下のように数列 $\{a_{n}\}$,$\{b_{n}\}$ を定義します.
$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) \leqq k$ のとき
$\begin{cases} a_{n+1}=\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2} \\ b_{n+1}=b_{n} \end{cases}$
$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) > k$ のとき
$\begin{cases} a_{n+1}=a_{n} \\ b_{n+1}=\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2} \end{cases}$
こう定義すると数列 $\{a_{n}\}$,$\{b_{n}\}$ は以下の(Ⅰ),(Ⅱ),(Ⅲ)の3つの性質をもつ(後で示します).
(Ⅰ) $a_{1}\leqq a_{2}\leqq \cdots\leqq a_{n} < b_{n}\leqq \cdots\leqq b_{2}\leqq b_{1}$
(Ⅱ) $b_{n}-a_{n}=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(b-a)$
(Ⅲ) $f(a_{n})\leqq k < f(b_{n})$
有界な非減少(増加)列は収束するので,数列 $\{a_{n}\}$,$\{b_{n}\}$ は収束し,それぞれ $\displaystyle \lim_{n \to \infty}a_{n}=\alpha$,$\displaystyle \lim_{n \to \infty}b_{n}=\beta$ とする.
(Ⅱ)より
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}b_{n}=\lim_{n \to \infty}\left(a_{n}+\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(b-a)\right)$
$\therefore \ \beta=\alpha$
ここで,$\beta=\alpha=c$ ととると,(Ⅲ)より $n \to \infty$ のとき
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}f(a_{n})=f(c)$
$\displaystyle \lim_{n \to \infty}f(b_{n})=f(c)$
より,$f(c)=k$.(証明終了)
※ 上の(Ⅰ),(Ⅱ),(Ⅲ)は下で個別に示します.
まず(Ⅱ)の証明
$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) \leqq k$ のときも,$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) > k$ のときも
$b_{n+1}-a_{n+1}=\dfrac{b_{n}-a_{n}}{2}$
$\therefore \ b_{n}-a_{n}=\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(b-a)$
(Ⅰ)の証明
$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) \leqq k$ のとき
$a_{n+1}=\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}=\dfrac{a_{n}+a_{n}+\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(b-a)}{2}> a_{n}$
$b_{n+1}=b_{n}$
$f\left(\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}\right) > k$ のとき
$a_{n+1}=a_{n}$
$b_{n+1}=\dfrac{a_{n}+b_{n}}{2}=\dfrac{b_{n}-\left(\dfrac{1}{2}\right)^{n-1}(b-a)+b_{n}}{2}< b_{n}$
以上より,$a_{n+1}\geqq a_{n}$,$b_{n+1}\leqq b_{n}$.
また(Ⅱ)より,$b_{n} > a_{n}$.
これより(Ⅰ)が示された.
(Ⅲ)の証明
数学的帰納法で示す.
(ⅰ) $n=1$ のとき,成立は明らか.
(ⅱ) $n=m$ のとき,成り立つとする.
$f\left(\dfrac{a_{m}+b_{m}}{2}\right) \leqq k$ のとき
$f(a_{m+1})=f\left(\dfrac{a_{m}+b_{m}}{2}\right)\leqq k < f(b_{m})=f(b_{m+1})$
$f\left(\dfrac{a_{m}+b_{m}}{2}\right) > k$ のとき
$f(a_{m+1})=f(a_{m})\leqq k < f\left(\dfrac{a_{m}+b_{m}}{2}\right)=f(b_{m+1})$
より $n=m+1$ のときも,成り立つ
(ⅰ)(ⅱ)より,(Ⅲ)が示された.
証明は正確には大学範囲で,有界な非減少(増加)列は収束するという事実さえ認めることで,高校数学でも雰囲気が理解できるはずで,その点工夫しての証明です.
中間値の定理で $f(a)$ と $f(b)$ が異符号のとき
関数 $f(x)$ が閉区間 $[a,b]$ で連続で,$f(a)$ と $f(b)$ が異符号のとき
$a< c< b$,$f(c)=0$
を満たす実数 $c$ が少なくとも1つ存在する.
最初の中間値の定理で,$f(x)-k$ を違う関数に置き直せば,直ちに示される特殊ケースです.
方程式の解の存在証明などで,こちらの形での出番が多いと思います.
練習問題
練習
方程式 $\sin x=-x+1$ が $0<x <\dfrac{\pi}{2}$ の範囲に実数解をもつことを示せ.
練習の解答
$f(x)=\sin x+x-1$ とおく.
$f(x)$ は連続関数であり
$f(0)=-1 <0$
$f\left(\dfrac{\pi}{2}\right)=1+\dfrac{\pi}{2}-1=\dfrac{\pi}{2} >0$
から,中間値の定理より $0<x <\dfrac{\pi}{2}$ の範囲に実数解をもつ.
※ 中間値の定理よりというフレーズはなくてもいいと思います.