方程式の実数解の個数
微分(数学Ⅱ,Ⅲ)(教科書範囲) ★★★
数学Ⅱ,数学Ⅲ共通ページです.
微分を用いた方程式の実数解の個数問題について扱います.
数学Ⅱの微分を勉強中の方は,2章までです.
方程式の実数解の個数
方程式の実数解の個数の求め方
方程式 $f(x)=0$ の実数解の個数の求め方は
Ⅰ $f(x)=0 \ \Longleftrightarrow \ g(x)=a$ のように,定数 $a$ だけ分離し,$y=g(x)$ と $y=a$ の共有点の問題にする.
Ⅱ $f(x)$ が 極値をもつ $3$ 次関数のときは
(極大値) $\times$ (極小値) $>0$ のとき $1$ 個
(極大値) $\times$ (極小値) $=0$ のとき $2$ 個
(極大値) $\times$ (極小値) $<0$ のとき $3$ 個
となる.$f(x)$ が 極値をもたない $3$ 次関数のときは実数解 $1$ 個もつ.
※ 3次関数のグラフの形状を考えればわかりやすいです.
数学Ⅱでは $3$ 次関数が中心ですので,どれもⅡで解けます.定数分離しやすいときはⅠでよく解きます.
数学Ⅲでは一般の関数が中心ですので,基本的にはⅠで解くことになります.
例題と練習問題(数学Ⅱ)
例題
例題
$a$ を定数とする.次の方程式の異なる実数解の個数を求めよ.
(1) $x^{3}-3x+1-a=0$
(2) $ax^{3}-3ax^{2}+1-a=0$
講義
(2)は教科書範囲外です.どちらもⅡで解けますが,(1)はⅠの定数分離の方法で解いてみます.
解答
(1)
$x^{3}-3x+1=a$ ←定数分離
として $y=g(x)=x^{3}-3x+1$ と $y=a$ のグラフの共有点を考える.
$g'(x)$
$=3x^{2}-3=3(x+1)(x-1)$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$g'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$g(x)$ | ↗︎ | $3$ | ↘︎ | $-1$ | ↗︎ |
図より異なる実数解の個数は
$\boldsymbol{a<-1,3 < a}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
$\boldsymbol{a=-1,3}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
$\boldsymbol{-1<a <3}$ のとき $\boldsymbol{3}$ 個
(2)
$a=0$ とすると $1=0$ となるので $a\neq 0$.
$f(x)=ax^{3}-3ax^{2}+1-a$ とすると
$f'(x)$
$=3ax^{2}-6ax=3ax(x-2)$
(極大値) $\times$ (極小値)
$=f(0)f(2)$ ← $f(0)$ か $f(2)$ の片方が極大値で片方が極小値
$=(1-a)(1-5a)$
異なる実数解の個数は
$\boldsymbol{a<\dfrac{1}{5},1 < a}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
$\boldsymbol{a=\dfrac{1}{5},1}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
$\boldsymbol{\dfrac{1}{5}<a <1}$ のとき $\boldsymbol{3}$ 個
練習問題
練習1
$a$ を定数とする.次の方程式の異なる実数解の個数を求めよ.
(1) $x^{3}+\dfrac{3}{2}x^{2}-6x-a=0$
(2) $x^{3}-3a^{2}x+a=0$
練習1の解答
(1)
$x^{3}+\dfrac{3}{2}x^{2}-6x=a$ ←定数分離
として $y=g(x)=x^{3}+\dfrac{3}{2}x^{2}-6x$ と $y=a$ のグラフの共有点を考える.
$g'(x)$
$=3x^{2}+3x-6=3(x+2)(x-1)$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$g'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$g(x)$ | ↗︎ | $10$ | ↘︎ | $-\dfrac{7}{2}$ | ↗︎ |
図より異なる実数解の個数は
$\boldsymbol{a<-\dfrac{7}{2},10 < a}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
$\boldsymbol{a=-\dfrac{7}{2},10}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
$\boldsymbol{-\dfrac{7}{2}<a <10}$ のとき $\boldsymbol{3}$ 個
(2)
$f(x)=x^{3}-3a^{2}x+a$ とすると
$f'(x)$
$=3x^{2}-3a^{2}=3(x+a)(x-a)$
$a=0$ のとき $f(x)=x^{3}=0$ の実数解は1個.
$a\neq 0$ のとき極値をもつので
(極大値) $\times$ (極小値)
$=f(-a)f(a)$
$=(2a^{3}+a)(-2a^{3}+a)$
$=a^{2}(2a^{2}+1)(-2a^{2}+1)$
異なる実数解の個数は $a=0$ のときも考慮して
$\boldsymbol{a<-\dfrac{1}{\sqrt{2}},\dfrac{1}{\sqrt{2}} < a}$ のとき $\boldsymbol{3}$ 個
$\boldsymbol{a=\pm\dfrac{1}{\sqrt{2}}}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
$\boldsymbol{-\dfrac{1}{\sqrt{2}}<a <\dfrac{1}{\sqrt{2}}}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
例題と練習問題(数学Ⅲ)
例題
例題
$a$ を定数とする.方程式 $e^{x}-x-a=0$ の異なる実数解の個数を求めよ.
講義
数学Ⅲの場合も方針は同じで,方程式の実数解の個数の求め方のⅠの定数分離の方針が基本です.しかし,$a$ だけを分離して $f(x)$ が複雑な関数になるならば,違う分け方をすることもあります.
解答
$e^{x}-x=a$ ←定数分離
として $y=g(x)=e^{x}-x$ と $y=a$ のグラフの共有点を考える.
$g'(x)$
$=e^{x}-1$
増減表は
$x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|
$g'(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$g(x)$ | ↘︎ | $1$ | ↗︎ |
$\displaystyle \lim_{x \to \pm\infty}f(x)=\infty$
図より異なる実数解の個数は
$\boldsymbol{a>1}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
$\boldsymbol{a=1}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
$\boldsymbol{a <1}$ のとき $\boldsymbol{0}$ 個
※ $e^{x}=x+a$ と分離して,$y=e^x$ と $y=x+a$ のグラフの共有点の問題と考えてもわかりやすいと思います.
練習問題
練習2
$a$ を定数とする.方程式 $\sqrt{x}=x+a$ の異なる実数解の個数を求めよ.
練習2の解答
$y=\sqrt{x}$ と $y=x+a$ の共有点の問題と考える.
これらのグラフが接するのは
$\sqrt{x}=x+a$
を両辺 $2$ 乗して
$x=x^{2}+2ax+a^{2}$
$\Longleftrightarrow \ 0=x^{2}+(2a-1)x+a^{2}$
判別式 $D=(2a-1)^{2}-4a^{2}=-4a+1=0$ のときより,$a=\dfrac{1}{4}$
図より
$\boldsymbol{a>\dfrac{1}{4}}$ のとき $\boldsymbol{0}$ 個
$\boldsymbol{a<0,a=\dfrac{1}{4}}$ のとき $\boldsymbol{1}$ 個
$\boldsymbol{0\leqq a <\dfrac{1}{4}}$ のとき $\boldsymbol{2}$ 個
※ $\sqrt{x}-x=a$ と分離して,$y=\sqrt{x}-x$ と $y=a$ のグラフの共有点の問題と考えてもいいと思いますが,上の解答の方がグラフの描写が楽と判断しました.