バウムクーヘン積分
積分(数学Ⅲ)(入試の標準) ★★★
$y$ 軸の周りの回転体の体積の問題があります.
上の方法以外で,円柱の側面積を積分する方法がバウムクーヘン(バームクーヘン)積分です.
バウムクーヘン積分の公式と解釈
バウムクーヘン積分
$y=f(x)$,$x=a$,$x=b$,$x$ 軸で囲まれた部分を $y$ 軸周りに一回転してできた立体の体積 $V$ は
$\boldsymbol{V=\displaystyle \int_{a}^{b}2x \pi f(x)\,dx}$
バームクーヘン積分の証明
区間 $[a,x]$ で $y=f(x)$,$x$ 軸で囲まれた部分を $y$ 軸周りに一回転してできた立体の体積を $V(x)$ とすると,$V(x+h)-V(x)$ $(h \neq 0)$ は図の赤い部分の回転体である.
この回転体の底面積は $\{(x+h)^{2}-x^{2}\}\pi$.区間 $[x,x+h]$ の$f(x)$ の最小値を $m$,最大値を $M$ とすると
$\{(x+h)^{2}-x^{2}\}\pi \times m \leqq V(x+h)-V(x) \leqq \{(x+h)^{2}-x^{2}\}\pi \times M$
$\displaystyle \Longleftrightarrow (2x+h)\pi m \leqq \frac{V(x+h)-V(x)}{h} \leqq (2x+h)\pi M$
$\displaystyle \lim_{h \to 0}(2x+h)\pi m=\lim_{h \to 0}(2x+h)\pi M=2x\pi f(x)$ であることを踏まえると
$\displaystyle \lim_{h \to 0}\frac{V(x+h)-V(x)}{h}=V'(x)=2x\pi f(x)$
$\displaystyle \therefore \ V=V(b)=\int_{a}^{b}2x \pi f(x)\,dx$
$2x \pi f(x)$ は円柱の側面積になります.円柱の側面を $a$ から $b$ まで重ねていくと,それがまるでお菓子のバウムクーヘンのようなので,大学受験界や数学の講師の間ではバウムクーヘン積分で通ります(正式名称ではありません).
この公式の入試での使用における解釈
この原理で何故体積を求めることができるのかが重要で,この事実は明らかではないので,これを事実として記述式の答案で使用したとき,どのぐらい減点されるかは模試や大学の判断によります.そのため,$y$ で積分する正攻法で挑んだ方が無難であると指導するしかありません.
証明をすれば堂々と使えるのは確かなのですが,試験のときにいちいち証明していたのでは,この公式により速く求値できるというメリットが薄れます.
そのため,正攻法で解く方法が難解で求値できない,マーク式の問題である,という場合は潔くバウムクーヘン積分を使うのをオススメします.
例題と練習問題
例題
例題
$y=-x^{2}+2x$ と $x$ 軸で囲まれた部分を $y$ 軸周りに1回転してできる立体の体積を求めよ.
講義
$y$ 軸の周りの回転体の体積の例題と共通です.こちらではバウムクーヘン積分を使って解きます.
解答
$\displaystyle V=\int_{0}^{2}(\color{red}{円柱の側面積})\,dx$
$\displaystyle =\int_{0}^{2}\color{red}{2x \pi (-x^{2}+2x)}\,dx$
$\displaystyle =2\pi \int_{0}^{2}(-x^{3}+2x^{2})\,dx$
$\displaystyle =2\pi \left[-\frac{1}{4}x^{4}+\frac{2}{3}x^{3}\right]_{0}^{2}$
$\displaystyle =\boldsymbol{\frac{8}{3}\pi}$
練習問題
練習
$f(x)=-x\log x \ \ (x > 0)$ とする.$x\geqq k$ $(0 < k \leqq 1)$ の領域において,$y=f(x)$ と直線 $x=k$,$x$ 軸で囲まれた部分を $y$ 軸の周りに1回転してできる立体の体積を $V(k)$ とする.
このとき $\displaystyle \lim_{k \to +0}V(k)$ を求めよ(答えのみでよい).必要であれば,$\displaystyle \lim_{x \to \infty}\dfrac{\log x}{x}=0$ を用いてよい.
解答 出典:2018杏林大医学部改
$f'(x)=-\log x -1$ より,$f'(x)=0 \Longleftrightarrow x=\dfrac{1}{e}$
増減表は
$x$ | $(0)$ | $\cdots$ | $\dfrac{1}{e}$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|
$f'(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | |
$f(x)$ | ↗︎ | $\dfrac{1}{e}$ | ↘︎ |
$x=\dfrac{1}{t}$ とおくと
$\displaystyle \lim_{x \to +0}f(x)=\lim_{t \to \infty}\left(-\dfrac{1}{t}\log\dfrac{1}{t}\right)=\lim_{t \to \infty}\dfrac{\log t}{t}=0$
これをもとにグラフを書き,体積を求める.
$\displaystyle V(k)=\int_{k}^{1}\color{red}{2\pi x(-x\log x)}\,dx$
$\displaystyle =-2\pi \int_{k}^{1}x^{2}\log x\,dx$
$\displaystyle =-2\pi \left\{\left[\frac{x^{3}}{3}\log x\right]_{k}^{1}-\int_{k}^{1}\dfrac{x^{2}}{3}\,dx\right\}$
$\displaystyle =-2\pi \left\{-\dfrac{k^{3}}{3}\log k-\left(\dfrac{1}{9}-\dfrac{k^{3}}{9}\right)\right\}$
$\displaystyle \lim_{x \to +0}f(x)=\lim_{k \to +0}k\log k=0$ より
$\displaystyle \lim_{k \to +0}V(k)=\boldsymbol{\frac{2}{9}\pi}$
※ $f(x)$ は $x=0$ が定義できないので,$\displaystyle \int_{0}^{1}2\pi x(-x\log x)\,dx$ とは書けません.あえなく上の様に極限をとって計算します(大学では広義積分と言います).
※ もし記述式の場合は $y=-x\log x$ での $x$ を $0\leqq x_{1} \leqq \dfrac{1}{e} \leqq x_{2}\leqq 1$ と場合分けして
$\displaystyle V(k)=\int_{0}^{1}x_{2}^{2}\pi\,dy-\int_{0}^{1}x_{1}^{2}\pi\,dy$
として置換積分するといいと思います.