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領域における最大最小(応用編)

図形と方程式(入試の標準) ★★★★

アイキャッチ

入試で頻出な,領域における最大最小問題の,領域と目的関数が1次式でない一般のものを扱います.

領域と目的関数が1次式であるもの(線形計画法)については領域における最大最小(基本編)に記載しています.

領域における最大最小の解き方

領域における最大最小の解き方

Ⅰ 与えられた領域(制約条件)を図示する.

Ⅱ 最大(最小)を求めたい式を文字(例えば $k$ など)で置く.これを目的関数という.

Ⅲ 領域と交わるように,目的関数を動かし $k$ の範囲を考える.


大学ではこのような問題を数理計画法(mathematical programming),特に制約条件と目的関数が1次式で表されるものを線形計画法(linear programming)と言い,経営システム工学科等で学べるはずです.高校数学では基本的に制約条件,目的関数ともに2次元平面内のものを扱います.

制約条件や目的関数などの用語は下の例題で説明します.

例題と練習問題

例題

例題

不等式 $2x-y\geqq-6$,$3x+4y\geqq13$,$9x+y\leqq28$ をすべて満たす領域を $D$ とするとき,領域 $D$ における次の値の範囲をそれぞれ求めよ.

(1) $x^{2}+y^{2}$

(2) $\dfrac{y}{x+2}$


講義

まずは領域 $D$ (制約条件)を図示することです.その後は指示された式を $k$ などと置き,この目的関数を領域 $D$ と交わるように動かして $k$ の範囲を考えます.


解答

(1) 領域 $D$ を図示します.以下の黄色の斜線部分です.

領域における最大最小例題

$\color{red}{x^{2}+y^{2}=k}$ と置くと,中心が原点で半径が $\sqrt{k}$ の円となるので,領域 $D$ と交わるように動かします.下の動く赤い円が目的関数です.

図より,円が $(2,10)$ を通るとき $\sqrt{k}$ が最大.これより,$(x,y)=(2,10)$ のとき,$k$ の最大値 $104$.

また,半径 $\sqrt{k}$ が最小をとるときは, $\sqrt{k}$ が 原点と $3x+4y=13$ との距離に等しいときです.この距離は

$\dfrac{|3\cdot 0+4\cdot 0-13|}{\sqrt{3^{2}+4^{2}}}=\dfrac{13}{5}$

つまり $k$ の最小値 $\dfrac{169}{25}$.

$\therefore \ \boldsymbol{\dfrac{169}{25}\leqq x^{2}+y^{2} \leqq 104}$


(2)

$\color{red}{\dfrac{y}{x+2}=k}$ と置くと,$\color{red}{y=k(x+2)}$ となるので,$(-2,0)$ を通る傾きが $k$ の直線となります.領域 $D$ と交わるように動かします.下の動く赤い直線が目的関数です.

図より, $(-1,4)$ を通るとき傾き $k$ が最大.これより,$(x,y)=(-1,4)$ のとき,$k$ の最大値 $4$.

また,$(3,1)$ を通るとき傾き $k$ が最小.これより,$(x,y)=(3,1)$ のとき,$k$ の最小値 $\dfrac{1}{5}$.

$\therefore \ \boldsymbol{\dfrac{1}{5}\leqq \dfrac{y}{x+2} \leqq 4}$

練習問題

練習

不等式 $y\leqq-x^{2}+6$,$y\geqq\dfrac{1}{2}x+1$,をすべて満たす領域を $D$ とするとき,領域 $D$ における次の値の範囲をそれぞれ求めよ.

(1) $x^{2}+y^{2}$

(2) $\dfrac{y-1}{x-3}$

練習の解答

(1)

領域における最大最小練習(1)

$x^{2}+y^{2}$ は,原点と領域内の点 $(x,y)$ との距離の2乗である.最小値は,原点と $y=\dfrac{1}{2}x+1 \ \Longleftrightarrow \ x-2y+2=0$ との距離

$\dfrac{|1\cdot 0-2\cdot 0+2|}{\sqrt{1^{2}+(-2)^{2}}}=\dfrac{2}{\sqrt{5}}$

の2乗なので, $x^{2}+y^{2}$ の最小値 $\dfrac{4}{5}$.

また,図より最大をとる点は領域の放物線上の点なので,その点を $(s,-s^{2}+6)$ $\left(-\dfrac{5}{2}\leqq s \leqq 2\right)$とおくと,原点との距離は

 $\sqrt{s^{2}+(-s^{2}+6)^2}$

$=\sqrt{s^{4}-11s^{2}+36}$

$=\sqrt{\left(s^{2}-\dfrac{11}{2}\right)^{2}+\dfrac{23}{4}} \ \left(0\leqq s^{2}\leqq \dfrac{25}{4}\right)$

これより $s^{2}=0$ のとき,$x^{2}+y^{2}$ の最大値 $36$.

$\therefore \ \boldsymbol{\dfrac{4}{5}\leqq x^{2}+y^{2} \leqq 36}$


(2)

$\dfrac{y-1}{x-3}=k$ と置くと,$y=k(x-3)+1$ となるので,$(3,1)$ を通る傾きが $k$ の直線となります.領域 $D$ と交わるように動かします.

領域における最大最小練習(2)

図より, $\left(-\dfrac{5}{2},-\dfrac{1}{4}\right)$ を通るとき傾き $k$ が最大.これより,$(x,y)=\left(-\dfrac{5}{2},-\dfrac{1}{4}\right)$ のとき,$k$ の最大値 $\dfrac{-\dfrac{5}{2}-1}{-\dfrac{1}{4}-3}=\dfrac{5}{22}$.

また,図より $y=k(x-3)+1$ が放物線に接するとき,最小になるので連立すると

$-x^{2}+6=k(x-3)+1$

$0=x^{2}+kx-3k-5$

ここで判別式

$D=k^{2}-4(-3k-5)=k^{2}+12k+20=0$

より,図を考慮すると領域と接するときは $k=-2$ (このとき接点 $(1,5)$).

$\therefore \ \boldsymbol{-2\leqq \dfrac{y-1}{x-3} \leqq \dfrac{5}{22}}$