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複素数平面の導入

複素数平面(教科書範囲) 

アイキャッチ

複素数平面が初めての人向けに導入をし,図形的解釈を伴った複素数の計算に慣れるのを目的とします.

基本的な計算も扱います.

複素数平面の導入

数直線上に $a$ があり,$-1$ 倍すると当然ですが $-a$ になります.$\times(-1)$ することは原点を中心に(反時計回りに) $180^{\circ}$ 回転させると捉えることができます.

複素数平面の導入1

$\times(-1)$ した後に $\times(-1)$ すると $180^{\circ}$ 回転を $2$ 回,つまり $360^{\circ}$ 回転し元に戻ります.

複素数平面の導入2

この考えで,$2$ 回の移動で $180^{\circ}$ 回転,つまり $2$ 回かけて $\times(-1)$,つまり $\times i$ は $90^{\circ}$ 回転に相当すると考えられます.

複素数平面の導入3

勇気を出して,$1$ 次元の実数の世界から飛び出し,$2$ 次元の平面の世界に複素数を対応させることが考えられます.これが複素数平面を導入する動機です.

複素数平面

複素数 $z$ は $2$ つの実数 $a$,$b$ と虚数単位 $i$ を用いて,$a+bi$ と表される数のことです.$\alpha=a+bi$ での $a$ を $\alpha$ の実部,$b$ を $\alpha$ の虚部といいます(それぞれ ${\rm Re} \ \alpha$,${\rm Im} \ \alpha$ と表すことがあります).

複素数平面

$a+bi$ は座標平面上で $(a,b)$ と対応させることができます.この平面を複素数平面といいます.複素数平面上では,$x$ 軸を実軸,$y$ 軸を虚軸といいます.

複素数 $\alpha$ に対応する点 $\rm P$ を ${\rm P}(\alpha)$ と表します(単に,点 $\alpha$ と表すこともあります).点 $0$ に対応する点は原点 $\rm O$ です.

例えば,複素数 $\alpha=3+2i$,$\beta=-1$,$\gamma=3i$ を表す点 $\rm A,B,C$ を複素数平面上に図示すると下のようになります.

複素数の実数倍

複素数の扱い方はベクトルに似ている

$\alpha=a_{1}+a_{2}i$ のように,実部と虚部の情報を持った数を $\alpha$ と1文字で表現できるのが複素数の強みです.これは $x$ 成分,$y$ 成分の情報を持ったベクトルを $\overrightarrow{\mathstrut a}=\begin{pmatrix}a_{1} \\ a_{2}\end{pmatrix}$ と1文字で表せるのと大変似ています.

以下の事項はベクトルと類似点が多くあるので,馴染みやすいと思います.

複素数の実数倍

複素数 $\alpha=a+bi$ を $k$ 倍 ( $k$ は実数)すると

$k\alpha=ka+kbi$

となる.これは $2$ 点 $0$,$\alpha$ を結ぶ直線上に存在することを意味します.

複素数の実数倍

逆に $3$ つの複素数 $0$,$\alpha$,$k\alpha$ は一直線上にあります.これより以下のことが成り立ちます.

原点を含んだ一直線上

$3$ 点 $\boldsymbol{0}$,$\boldsymbol{\alpha}$,$\boldsymbol{\beta}$ が一直線上

$\Longleftrightarrow$ $\boldsymbol{\beta=k\alpha}$ となる実数 $\boldsymbol{k}$ が存在


これはベクトルの一直線上の条件と似ていますね.

複素数の和と差

$2$ つの複素数 $\alpha=a+bi$,$\beta=c+di$ に関して

$\alpha+\beta=a+c+(b+d)i$

となる.これは平面ベクトルの足し算である

$\begin{pmatrix}a \\ b \end{pmatrix}+\begin{pmatrix}c \\ d \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}a+c \\ b+d \end{pmatrix}$

と幾何的には同様です.

複素数の和と差

差に関しても平面ベクトルと同様に考えることができます.

例題と練習問題

例題

例題

(1) $\alpha=-2+2i$,$\beta=-3-i$,$\gamma=-i$ を表す点 $\rm A,B,C$ を複素数平面上に図示せよ.

(2) $\alpha=1+2i$,$\beta=3+ai$,$\gamma=b-i$ とする.$4$ 点 $0$,$\alpha$,$\beta$,$\gamma$ が一直線上にあるとき,実数 $a$,$b$ の値を求めよ.

(3) $\alpha=3+i$,$\beta=-1+i$ とする.$\alpha+\beta$,$\alpha-\beta$ を平行四辺形を書いて図示せよ.


講義

(2)では,$\beta=k\alpha$,$\gamma=l\alpha$ ( $k$,$l$ は実数)等と設定して求めます.


解答

(1)

複素数の和と差

(2)

条件より $\beta=k\alpha$,$\gamma=l\alpha$ ( $k$,$l$ は実数)とおけるので

$\begin{cases}3+ai=k+2ki \\ b-i=l+2li\end{cases}$

解くと,$k=3$,$l=-\dfrac{1}{2}$,$\boldsymbol{a=6}$,$\boldsymbol{b=-\dfrac{1}{2}}$


(3)

複素数の和と差

練習問題

練習

(1) $\alpha=-1+ai$,$\beta=a-bi$,$\gamma=b-27i$ とする.$4$ 点 $0$,$\alpha$,$\beta$,$\gamma$ が一直線上にあるとき,実数 $a$,$b$ の値を求めよ.

(2) $4$ 点 $z_{1}=1+i$,$z_{2}=3+2i$,$z_{3}=2+5i$ と $z_{4}$ を順に結んでできる四角形が平行四辺形になるような複素数 $z_{4}$ を求めよ.

解答

(1)

条件より $\beta=k\alpha$,$\gamma=l\alpha$ ( $k$,$l$ は実数)とおけるので

$\begin{cases}a-bi=-k+kai \\ b-27i=-l+lai\end{cases}$

$1$ 行目で $k$ を消去すると $b=a^2$

$2$ 行目より $-27=la=-ba=-a^{3}$

解くと,$k=-3$,$l=-9$,$\boldsymbol{a=3}$,$\boldsymbol{b=9}$


(2)

$z_{1}$,$z_{2}$,$z_{3}$,$z_{4}$ を表す点を座標平面上に対応させた点を ${\rm A}(1,1)$,${\rm B}(3,2)$,${\rm C}(2,5)$,${\rm D}(a,b)$ とすると

$\overrightarrow{\mathstrut \rm AB}=\overrightarrow{\mathstrut \rm DC}$

$\Longleftrightarrow \ \begin{pmatrix}2 \\ 1 \end{pmatrix}=\begin{pmatrix}2-a \\ 5-b \end{pmatrix}$

$\therefore \ a=0$,$b=4$

${\rm D}(0,4)$ となるので

$\boldsymbol{z_{4}=4i}$

※ 複素数平面と座標平面は自由に行き来させて問題を解いてもいいわけです.こうすると数学ⅡBまでの知識が活用できます.(1)も座標平面に置き換えて解いても問題ありません.