積分方程式
積分(数学Ⅱ,Ⅲ)(教科書範囲) ★★★
数学Ⅱ,数学Ⅲ共通ページです.
積分方程式について扱います.
数学Ⅱは基本的に多項式関数を,数学Ⅲはすべての関数を扱います.
数学Ⅱの積分を勉強中の方は,2章までです.
積分方程式の解き方
積分方程式とは
$\displaystyle f(x)=x^{2}+\int_{0}^{2}f(t)\,dt$ $\cdots$ ①
$\displaystyle \int_{0}^{x}f(t)\,dt=x^{2}+x$ $\cdots$ ②
積分方程式とは,積分を含む等式のことを言います.未知の関数(上の場合 $f(x)$ )を求めるのが目的です.
上の2つのように積分範囲の中に変数(今回は $x$ )を含まないか,含むかのどちらかです.
①では,$\displaystyle \int_{0}^{2}f(t)\,dt=F(2)-F(0)$ となるのでこれが定数であるとわかります.①のタイプを当サイトでは便宜的に定数型と名付けることにします.
②では,$\displaystyle \int_{0}^{x}f(t)\,dt=F(x)-F(0)$ となるのでこれが変数( $x$ の関数)であるとわかります.②のタイプを当サイトでは便宜的に変数型と名付けることにします.
定数型と変数型で解法が別れます.
積分方程式の解き方(定数型)
積分範囲に変数が含まれない場合
定積分を文字(例えば $\boldsymbol{k}$ )で置く
↓
$f(x)$ を $k$ で表し,定積分に代入し $k$ を求める.
一方で変数型の場合,定積分が定数ではないので上の手法はとれません.
積分方程式の解き方(変数型)
積分範囲に変数 $x$ が含まれる場合
Ⅰ 両辺 $\boldsymbol{x}$ で微分する
Ⅱ 積分範囲の上端と下端が同じになるように $x$ に代入する
Ⅰの操作は基本的に必須です.定積分で表された関数の微分の経験が必要です.
例題と練習問題(数学Ⅱ)
例題
例題
次の等式を満たす関数 $f(x)$ を求めよ.(2)は $a$ の値も求めよ.
(1) $\displaystyle f(x)=x^{2}+2x+\int_{0}^{3}f(t)\,dt$
(2) $\displaystyle \int_{a}^{x}f(t)\,dt=x^{2}+x-2$
講義
(1)は定数型です.$\displaystyle \int_{0}^{3}f(t)\,dt=k$ などとおきます.(2)は変数型です.両辺 $x$ で微分します.
解答
(1)
$\displaystyle \int_{0}^{3}f(t)\,dt=k$ とおくと
$f(x)=x^{2}+2x+k$
これを定積分に代入すると
$\displaystyle \int_{0}^{3}(t^{2}+2t+k)\,dt$
$\displaystyle =\left[\dfrac{1}{3}t^{3}+t^{2}+kt\right]_{0}^{3}$
$=18+3k=k$ $ \ \therefore \ k=-9$
元の式に戻すと
$\boldsymbol{f(x)=x^{2}+2x-9}$
(2)
与式を両辺 $x$ で微分すると
$\boldsymbol{f(x)=2x+1}$
与式に両辺 $x=a$ を代入すると
$\displaystyle \int_{a}^{a}f(t)\,dt=0=a^{2}+a-2$
$\therefore \ \boldsymbol{a=-2,1}$
※ $f(x)$ の原始関数を $F(x)$ とすると,$\displaystyle \int_{a}^{x}f(t)\,dt=F(x)-F(a)$ となるので,これを $x$ で微分すると $f(x)$ になりますね.
練習問題
練習1
次の等式を満たす関数 $f(x)$ を求めよ.(1)は $a$ の値も求めよ.
(1) $\displaystyle \int_{a}^{x}f(t)\,dt=2x^{3}+x^{2}-5x+2$
(2) $\displaystyle f(x)=3x^{2}\int_{0}^{1}f(t)\,dt+\int_{0}^{1}\left(f'(t)^{2}-2x\right)\,dt$
練習1の解答
(2) 出典:2019昭和大薬学部
与式を両辺 $x$ で微分すると
$\boldsymbol{f(x)=6x^{2}+2x-5}$
与式に両辺 $x=a$ を代入すると
$0=2a^{3}+a^{2}-5a+2$
$\Longleftrightarrow \ 0=(a-1)(2a^{2}+3a-2)$
$\therefore \ \boldsymbol{a=-2,1,\dfrac{1}{2}}$
(2) 出典:2021帝京大医学部
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(t)\,dt=a$,$\displaystyle \int_{0}^{1}f'(t)^{2}\,dt=b$ とおくと
$\displaystyle f(x)=3ax^{2}+b-2x$
$\displaystyle f'(x)=6ax-2$
$\displaystyle b=\int_{0}^{1}(6at-2)^{2}\,dt$
$\displaystyle =\int_{0}^{1}(36a^{2}t^{2}-24at+4)\,dt$
$\displaystyle =12a^{2}-12a+4$
これより $f(x)=3ax^{2}-2x+12a^{2}-12a+4$
$\displaystyle a=\int_{0}^{1}(3at^{2}-2t+12a^{2}-12a+4)\,dt$
$\displaystyle =a-1+12a^{2}-12a+4$
これを解くと $a=\dfrac{1}{2}$ そして $b=1$ より
$\boldsymbol{f(x)=\dfrac{3}{2}x^{2}-2x+1}$
例題と練習問題(数学Ⅲ)
例題
例題
次の等式を満たす関数 $f(x)$ を求めよ.
(1) $\displaystyle f(x)=e^{x}+\int_{0}^{1}f(t)e^{-t}\,dt$
(2) $\displaystyle \int_{0}^{x}f(t)(x-t)\,dt=\sin 2x$
講義
(1)は定数型です.$\displaystyle \int_{0}^{1}f(t)e^{-t}\,dt=k$ などとおきます.(2)は変数型です.積分の中身に $x$ があるので外に出してから両辺 $x$ で微分します.
解答
(1)
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(t)e^{-t}\,dt=k$ とおくと
$f(x)=e^{x}+k$
これを定積分に代入すると
$\displaystyle \int_{0}^{1}f(t)e^{-t}\,dt$
$\displaystyle =\int_{0}^{1}(1+ke^{-t})\,dt$
$\displaystyle =\Bigl[t-ke^{-t}\Bigr]_{0}^{1}$
$=1-ke^{-1}+k=k$ $ \ \therefore \ k=e$
元の式に戻すと
$\boldsymbol{f(x)=e^{x}+e}$
(2)
与式を
$\displaystyle x\int_{0}^{x}f(t)\,dt-\int_{0}^{x}tf(t)\,dt=\sin 2x$
として両辺 $x$ で微分すると
$\displaystyle \int_{0}^{x}f(t)\,dt+xf(x)-xf(x)=2\cos 2x$
さらに両辺 $x$ で微分すると
$\boldsymbol{f(x)=-4\sin 2x}$
練習問題
練習2
次の等式を満たす関数 $f(x)$ を求めよ.
(1) $\displaystyle f(x)=x^{2}+x\int_{0}^{1}f'(t)e^{t}\,dt$
(2) $\displaystyle f(x)+\int_{0}^{x}f(t)e^{x-t}\,dt=\sin x$
(3) $\displaystyle \int_{0}^{x}tf(x-t)\,dt=e^{2x}-1$
練習2の解答
(1)
$\displaystyle \int_{0}^{1}f'(t)e^{t}\,dt = k$ とおくと
$\displaystyle f(x)=x^{2}+kx$
$\displaystyle f'(x)=2x+k$
ここで
$\displaystyle k=\int_{0}^{1}(2t+k)e^{t}\,dt$
$\displaystyle =\Bigl[2te^{t}-2e^{t}+ke^{t} \Bigr]_{0}^{1}$
$=ek+2-k$ $\therefore \ k=-\dfrac{2}{e-2}$
$\boldsymbol{f(x)=x^{2}-\dfrac{2}{e-2}x}$
(2) 出典:2011横浜市立大医学部
与式を
$\displaystyle f(x)+e^{x}\int_{0}^{x}f(t)e^{-t}\,dt=\sin x$
として両辺 $x$ で微分すると
$\displaystyle f'(x)+e^{x}\int_{0}^{x}f(t)e^{-t}\,dt+f(x)=\cos x$
与式より
$f'(x)+\sin x=\cos x$
$\Longleftrightarrow \ f'(x)=\cos x-\sin x$
両辺 $x$ で不定積分すると,$C$ を積分定数として
$f(x)=\sin x+\cos x+C$
与式に $x=0$ を代入すると $f(0)=1+C=0$ より $C=-1$
$\boldsymbol{f(x)=\sin x+\cos x-1}$
(3)
$x-t=u$ とおくと,$-dt=du$
$\displaystyle \int_{0}^{x}tf(x-t)\,dt$
$\displaystyle =\int_{x}^{0}(x-u)f(u)\,(-du)$
$\displaystyle =\int_{0}^{x}(x-u)f(u)\,du$
$\displaystyle =x\int_{0}^{x}f(u)\,du-\int_{0}^{x}uf(u)\,du=e^{2x}-1$
両辺 $x$ で微分すると
$\displaystyle \int_{0}^{x}f(u)\,du=2e^{2x}$
さらに両辺 $x$ で微分すると
$\boldsymbol{f(x)=4e^{2x}}$