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不等式で表された立体の体積

積分(数学Ⅲ)(入試の標準) ★★★★

アイキャッチ

不等式で表された立体の体積について扱います.

非回転体の体積でも,初学者には難易度が高めのテーマです.

不等式で表された立体の体積の求め方

$\begin{cases}x+y-z\leqq 2 \\ 0\leqq x \leqq 2 \\ y\geqq 0 \\ 0\leqq z \leqq 2\end{cases}$

上のような $xyz$ 空間上で不等式で表された領域は立体になります.立体を想像するのが困難なことが多いですが,いかに断面積を求めるかがカギになります.

不等式で表された立体の体積の求め方

適当な面 $\boldsymbol{(x=t}$ または $\boldsymbol{y=t}$ または $\boldsymbol{z=t)}$ で切った断面の断面積を積分して求める.


下の例題で具体的に解説します.

例題と練習問題

例題

例題

4つの不等式 $x+y-z\leqq 2$,$0\leqq x \leqq 2$,$y\geqq 0$,$0\leqq z \leqq 2$ で表される立体 $D$ について

(1) 立体 $D$ の平面 $z=t$ による断面の面積 $S(t)$ を $t$ で表せ.

(2) 立体 $D$ の体積$V$を求めよ.


講義

$x+y-z\leqq 2 \ \Longleftrightarrow \ z\geqq x+y-2$ とあるので平面の方程式 $z=x+y-2$ の上側にある立体だと分かりますが,最初に想像するのは難しいです.

本問の場合は,$z=t$ で切った断面の断面積を求めよと指示があるので,平面 $z=t$ の断面の図を書いて $S(t)$ を求めます.不等式の $\boldsymbol{z}$ に $\boldsymbol{t}$ を代入して,その $xy$ 平面( $z=t$ )で考えます.

自分でどこで切るか考えないといけない問題も多いですが,なるべく場合分けが少なく断面積が簡潔に表現できるような面で切ります.


解答

平面 $z=t$ $(0\leqq t\leqq 2)$ で切ると,不等式に $z=t$ を代入して $ y\leqq -x+t+2,\quad 0\leqq x\leqq 2,\quad y\geqq 0 $ となる.

練習の図1

(1) 断面積は

$\displaystyle S(t)=(t+2+t)\cdot t \cdot\dfrac{1}{2}=\boldsymbol{2t+2}$

(2) 体積は $z$ 方向に積分して

$\displaystyle V=\int_{0}^{2}(2+2t)\,dt =\Bigl[2t+t^{2}\Bigr]_{0}^{2}=\boldsymbol{8}$

※ 断面から以下のような立体が想像できます.

練習の図1

練習問題

練習

$xyz$ 空間において,不等式 $0 \leqq z \leqq 1 + x + y - 3(x - y)y$,$0 \leqq y \leqq 1$,$y \leqq x \leqq y + 1$ のすべてを満たす $(x, y, z)$ を座標にもつ点全体がつくる立体の体積を求めよ.

解答 出典:1982東京大

この立体の,平面 $y=t$ $(0 \leqq t \leqq 1)$ による断面を考える.

$\displaystyle \begin{cases}0 \leqq z \leqq (1-3t)x+3t^{2}+t+1=f(x) \\ t \leqq x \leqq t + 1\end{cases}$

となる.

練習の図1

断面は台形であり,断面積は

$\dfrac{1}{2}\{f(t)+f(t+1)\} =\dfrac{1}{2}(2t+1-t+2) = \dfrac{1}{2}(t+3)$

求める体積は

$\displaystyle =\int_{0}^{1}\dfrac{1}{2}(t+3) \,dx$

$\displaystyle = \dfrac{1}{2}\left[\dfrac{t^2}{2}+3t\right]_0^1$

$=\boldsymbol{\dfrac{7}{4}}$