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命題の逆,裏,対偶

数と式(教科書範囲) ★★★

アイキャッチ

命題の逆,裏,対偶を扱います.

対偶証明法と関連問題も扱います.

命題の逆,裏,対偶

ある命題「 $p \ \Longrightarrow \ q$ 」に関して

「 $q \ \Longrightarrow \ p$ 」を

「 $\overline{p} \ \Longrightarrow \ \overline{q}$ 」を

「 $\overline{q} \ \Longrightarrow \ \overline{p}$ 」を対偶

という.整理すると以下のような図式になります.

命題の逆,裏,対偶

必要条件と十分条件の説明1

後述するように対偶同士の真偽は一致しますが,逆と裏は必ずしも真偽は一致するとは限りません.

対偶証明法

元の命題と対偶の真偽は一致

命題「 $p \ \Longrightarrow \ q$ 」が真ならば

必要条件と十分条件の説明1

上のようなベン図になるので,$P \subset Q$ になります.これは $\overline{Q}\subset\overline{P}$ が成り立つことと同値なので,「 $\overline{q} \ \Longrightarrow \ \overline{p}$ 」も真になります.

同様に偽のときも一致します.

命題と対偶

元の命題と対偶の真偽は一致

※ 偽の場合反例まで一致します.


これを利用して,元の命題が示しにくいときに対偶を示せば元の命題が証明できることになります.

これを対偶証明法,対偶論法などといいます.

対偶証明法

元の命題が示しにくいときは対偶を示す


背理法と並んで,直接示しにくい命題の証明法として有名です.

例題と練習問題

例題

例題

$x$ を実数,$n$ を整数とする.

(1) 「 $x^{2}-x-2 <0$ ならば $0<x<1$ 」の逆,裏,対偶を述べ,その真偽を答えよ.

(2) $n^{2}$ が偶数ならば $n$ は偶数であることを示せ.



講義

命題を示すのが大変そうな場合,無理せず対偶を考えます.


解答

(1)

逆:「 $\boldsymbol{0<x<1}$ ならば $\boldsymbol{x^{2}-x-2 <0}$ 」

※ $P=\{x \ | \ 0<x<1\}$,$Q=\{x \ | \ x^{2}-x-2 <0\}$ とすると,$P \subset Q$ になります.

裏:「 $\boldsymbol{x^{2}-x-2 \geqq0}$ ならば $\boldsymbol{x\leqq0,1\leqq x}$ 」

※ 逆が真なので,逆にとっての対偶である裏も真です.

対偶:「 $\boldsymbol{x\leqq0,1\leqq x}$ ならば $\boldsymbol{x^{2}-x-2 \geqq0}$ 」
偽(反例:$\boldsymbol{x=-1}$)


(2)

対偶:「 $n$ が奇数ならば $n^2$ が奇数」を示す.

$n$ が奇数ならば,$n=2k+1$ ( $k$ は整数)とおける.

$n^{2}=4k^{2}+4k+1=2(2k^{2}+2k)+1$

より $n^2$ も奇数.対偶が真なので,元の命題も真.

合同式を使うともう少し楽に書けます.

練習問題

練習

$x$,$y$ を実数,$a$,$b$ を整数とする.

(1) 「 $x+y \leqq3$ ならば $x\leqq1$ または $y\leqq2$ 」の逆,裏,対偶を述べ,その真偽を答えよ.

(2) $ab$ が $3$ の倍数ならば $a$,$b$ の少なくとも一方は $3$ の倍数であることを示せ.

解答

(1)

逆:「 $\boldsymbol{x\leqq1}$ または $\boldsymbol{y\leqq2}$ ならば $\boldsymbol{x+y \leqq3}$ 」
偽(反例:$\boldsymbol{x=-1,y=5}$)

裏:「 $\boldsymbol{x+y >3}$ ならば「 $\boldsymbol{x>1}$ かつ $\boldsymbol{y>2}$ 」
偽(反例:$\boldsymbol{x=-1,y=5}$)

※ 逆が偽なので,逆にとっての対偶である裏も偽です.反例も一致します.

対偶:「 $\boldsymbol{x>1}$ かつ $\boldsymbol{y>2}$ ならば $\boldsymbol{x+y >3}$ 」


(2)

対偶:「 $a$,$b$ がともに $3$ の倍数でないならば $ab$ が $3$ の倍数でない」を示す.

$k$,$l$ を整数とする.

(ⅰ) $a=3k+1$,$b=3l+1$ のとき

$ab=9kl+3k+3l+1=3(3kl+k+l)+1$

(ⅱ) $a=3k+1$,$b=3l+2$ のとき

$ab=9kl+6k+3l+2=3(3kl+2k+l)+1$

(ⅲ) $a=3k+2$,$b=3l+1$ のとき

$ab=9kl+3k+6l+1=3(3kl+k+2l)+2$

(ⅳ) $a=3k+2$,$b=3l+2$ のとき

$ab=9kl+6k+6l+4=3(3kl+2k+2l+1)+1$

以上より,対偶が真なので,元の命題も真.

合同式を使うともう少し楽に書けます.