正多面体が5種類しかないことの証明
数学ⅠA既習者(難関大対策+) ★★
正多面体についての説明と,5種類しかないことの証明を扱います.
大学入試ではほとんど見かけません(探せば見つかる).興味がある方向けです.
正多面体の定義と紹介
正多面体の定義
平面で囲まれた立体を※多面体といい
1.すべての面が合同な正多角形.
2.頂点に集まる面の数が等しい.
3.凸多面体である(どこも凹んでいない).
上の条件すべてを満たす多面体を正多面体という.
※多面体は三角錐や直方体などの立体で,円柱など曲面をもつものは含まない
これらすべてを満たすのは意外にも厳しく,5つしか存在しません.
以下に紹介します.
正四面体
正三角形が4枚.
正六面体(立方体)
正方形が6枚.
正八面体
正三角形が8枚.
正十二面体
正五角形が12枚.
正二十面体
正三角形が20枚.
正多面体が5種類しかないことの証明
証明の方法
正多面体が5種類しかないことの主な証明
Ⅰ 1つの頂点に集まる内角の和が $360^{\circ}$ 未満で不等式を解く.
Ⅱ オイラーの多面体定理を使う.
Ⅰでの証明
わかりやすくてオススメです.
Ⅰでの証明
立体の面が正 $n$ 角形,1つの頂点に集まる面が $m$ 枚であるとする.
正 $n$ 角形の1つの内角は $\dfrac{(n-2)\times180^{\circ}}{n}$ である.1つの頂点に面が $m$ 枚集まるが,これの和が $360^{\circ}$ 未満でないと立体が構成できないので
$\dfrac{(n-2)\times180^{\circ}}{n}\times m < 360^{\circ}$
$\Longleftrightarrow \ (n-2)m < 2n$
$\Longleftrightarrow \ (n-2)(m-2) < 4$
これを満たす組 $(n,m)$ は
$(n,m)=(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)$
の5組.つまり正多面体は5種類あって,それ以上はない.
Ⅱでの証明
オイラーの多面体定理を知っていないといけないですし,少し難しいと思います.下に格納します.
Ⅱでの証明
Ⅱでの証明
多面体の頂点の数を $V$,辺の数を $E$,面の数を $F$ とする.
そして立体の面が正 $n$ 角形,1つの頂点に集まる辺が $k$ 本であるとする.
頂点を選んで辺をカウントすることにする.頂点が $V$ 個あり,その頂点に $k$ 個辺があるので,辺を $Vk$ 回カウントする.しかしすべて辺を2回カウントするので
$Vk=2E$
が成り立つ.
次に立体を $F$ 個の正 $n$ 角形にバラバラにする.辺をカウントすると合計で $Fn$ 個ある.しかしこれも立体にするときには2つの辺を繋げて1つの辺にするので
$Fn=2E$
が成り立つ.
オイラーの多面体定理( $V-E+F=2$ )に,上の式を変形した $V=\dfrac{2E}{k}$,$F=\dfrac{2E}{n}$ を代入すると
$\dfrac{2E}{k}-E+\dfrac{2E}{n}=2$
$\Longleftrightarrow \ \dfrac{2}{k}-1+\dfrac{2}{n}=\dfrac{2}{E}$
$\Longleftrightarrow \ \dfrac{2}{k}+\dfrac{2}{n}=\dfrac{2}{E}+1>1$
ここで不等式の両辺に $kn$ をかけると
$2n+2k > kn$
$\Longleftrightarrow \ (k-2)(n-2) < 4$
これを満たす組 $(n,k)$ は
$(n,k)=(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)$
これが順に正四面体,正八面体,正二十面体,立方体,正十二面体に対応する.つまり正多面体は5種類あって,それ以上はない.
練習問題
練習
(1) 下の ア 〜 イ に入る数を答えよ.
正 $n$ 角形の内角の大きさを $n$ を用いた式で表すと ア $\times 180^{\circ}$ となる.各面が正 $n$ 角形の正多面体において,一つの頂点に集まる面の数を $m$ とする.このとき, ア $\times 180^{\circ}\times m <360^{\circ}$ となる.これより
$(n-2)(m-2) <$ イ $ \ \cdots$ ①
となる.
(2) ①を満たす自然数の組 $(n,m)$ を求めよ.
練習の解答
(1) 正 $n$ 角形の1つの内角の和は $(n-2)\times180^{\circ}$ である.つまり正 $n$ 角形の1つの内角は $\boldsymbol{\dfrac{(n-2)}{n}}\times180^{\circ}$ である.
1つの頂点に面が $m$ 枚集まるが,これの和が $360^{\circ}$ 未満でないと立体が構成できないので
$\dfrac{(n-2)\times180^{\circ}}{n}\times m < 360^{\circ}$
$\Longleftrightarrow \ (n-2)m < 2n$
$\Longleftrightarrow \ (n-2)(m-2) < \boldsymbol{4}$
となる.
(2) これを満たす自然数の組 $(n,m)$ は
$(n,m)=\boldsymbol{(3,3),(3,4),(3,5),(4,3),(5,3)}$