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条件付き確率

確率(教科書範囲) ★★★

アイキャッチ

条件付き確率について扱います.

大学以降の確率統計でも頻出の概念です.

条件付き確率

今までの確率は全事象 $U$ と事象 $A$ の個数の比

今まで

$P(A)=\dfrac{\color{magenta}{n(A)}}{\color{green}{n(U)}}$

で算出していました.例えば,$U$ が高校のクラスで $A$ がサッカーが好きな人のようにです.

条件付き確率では,全体を $A$ にすり替え,$A$ の中で $B$ である割合 $A\cap B$ にフォーカスします.

条件付き確率

$A$ という条件のもとでの $B$ の確率を

$P_{A}(B)=\dfrac{\color{magenta}{n(A\cap B)}}{\color{green}{n(A)}}$

で表します.右辺の分母分子を $n(U)$ で割れば

$P_{A}(B)=\dfrac{\color{magenta}{P(A\cap B)}}{\color{green}{P(A)}}$

となります.先程の例で言うと,$B$ をフットサルが好きな人とすれば,サッカーが好きな人の中でフットサルが好きな人の割合を求められます.実用上,条件を付けて確率を求めたいことがしばしばあります.

以下に公式をまとめます.

条件付き確率

事象 $A$ が起こったときの事象 $B$ が起こる条件付き確率は

$\boldsymbol{P_{A}(B)=\dfrac{n(A\cap B)}{n(A)}}$ $=\dfrac{\frac{n(A\cap B)}{n(U)}}{\frac{n(A)}{n(U)}}$ $\boldsymbol{=\dfrac{P(A\cap B)}{P(A)}}$

※ 大学以降や一般的には上の式は $P(B | A)$ と表すことが多いです.

確率の乗法定理

上の式を変形すると

$P(A\cap B)=P(A)P_{A}(B)$

が得られますが,これを確率の乗法定理といいます.

例えばくじをAさんとBさんが順に引いて,Aさんが当たりくじを引く事象を $A$,Bさんの場合は $B$ とすると,上の等式は共に当たる確率です.多くの人が定理は意識しなくとも右辺で計算しているかと思います.

問題を解く上では,定理を強く意識しなくていいかと思います.

事象の独立

事象 $A$ と $B$ が独立であるとき

$P_{A}(B)=P(B)$

が成り立ちます.$A$ という条件があっても無くても同じなので直感的ですね.

上の式を確率の乗法定理に代入すると,独立に関する定理が導けます.

独立に関する定理

$P(A)\neq 0$,$P(B)\neq 0$ のとき

$\boldsymbol{A,B}$ が独立 $\boldsymbol{\Longleftrightarrow \ P(A\cap B)=P(A)P(B)}$

※ これを独立の定義とする場合もあります.

3つの事象の独立

3つの事象の独立

高校範囲を超えると思いますが3つの事象,$A$,$B$,$C$ が独立であるための定義は

$P(A\cap B)=P(A)P(B)$

$P(B\cap C)=P(B)P(C)$

$P(C\cap A)=P(C)P(A)$

$P(A\cap B\cap C)=P(A)P(B)P(C)$

これらがすべて成り立つこととしていることが多いです.最後の式が成り立つだけではいけないことに注意です.


$A$ と $B$ が独立であるか調べたいとき,両辺計算して等しいか判定するといいです.

例題と練習問題

例題

例題

袋の中に赤玉 $2$ 個,白玉 $3$ 個が入っている.その中から玉を $1$ 個取り出す.それが赤玉ならば赤玉 $2$ 個を取り出した玉とともに袋に入れる.それが白玉ならば白玉 $1$ 個を取り出した玉とともに袋に入れる.その後再び袋から玉を $1$ 個取り出す.

(1) $2$ 回とも赤玉である確率を求めよ.

(2) $2$ 回目に取り出した玉が赤玉であったとき,$1$ 回目も赤玉である確率を求めよ.


講義

この1問で確率の乗法定理と条件付き確率の確認ができます.

事象を文字でおくと,式変形の記述が楽になります.


解答

$1$ 回目赤玉を取り出す事象を $R_{1}$,$2$ 回目赤玉を取り出す事象を $R_{2}$ とする.

(1)

 $P(R_{1}\cap R_{2})$

$=P(R_{1})P_{R_{1}}(R_{2})$ $\cdots$ ☆

$=\dfrac{2}{5}\cdot\dfrac{4}{7}=\boldsymbol{\dfrac{8}{35}}$

※ ☆が確率の乗法定理ですが,☆の行は省略していいと思います.


(2)

$1$ 回目白玉を取り出す事象を $W_{1}$ とする.求める確率は

 $P_{R_{2}}(R_{1}) $

$=\dfrac{P(R_{2}\cap R_{1})}{P(R_{2})}$

$=\dfrac{P(R_{1}\cap R_{2})}{P(R_{1}\cap R_{2})+P(W_{1}\cap R_{2})}$

$=\dfrac{\dfrac{8}{35}}{\dfrac{8}{35}+P(W_{1})P_{W_{1}}(R_{2})}$

$=\dfrac{\dfrac{8}{35}}{\dfrac{8}{35}+\dfrac{3}{5}\cdot\dfrac{2}{6}}=\boldsymbol{\dfrac{8}{15}}$

練習問題

練習1

ある100円ショップでは,ボールペンセットとしてA社製とB社製の2種類を調達している.全体の $70$ %を調達しているA社製のボールペンセットに不良品が含まれている確率は $0.01$ であり,残りの $30$ %を調達しているB社製のボールペンセットに不良品が含まれている確率は $0.05$ である.購入したボールペンセットに不良品が含まれていた場合に,そのボールペンセットがB社製のものである確率を求めよ.


練習2

ある病気には $10$ %の確率でかかってしまう.ある検査では $90$ %の確率で正しい判定をし,$10$ %の確率で誤った判定をする.

ある検査で陽性と出た,その人が実際に病気にかかっている確率はいくつか.


練習3

$11$,$12$,$21$,$32$ と書いた $4$ 枚のカードがある.これらをよく切って $1$ 枚を取り出すとき,十の位の数字が $1$ である事象を $A_{1}$,$2$ である事象を $A_{2}$ とし,さらに一の位の数字が $1$ である事象を $B_{1}$ とする.次の $2$ 組の事象はそれぞれ互いに独立であるか調べよ.

(1) $A_{1}$ と $B_{1}$

(2) $A_{2}$ と $B_{1}$

練習1の解答

A,Bから調達してくる事象をそれぞれ $A$,$B$,不良品である事象を $E$ とおく.

 $P_{E}(B)$

$=\dfrac{P(E\cap B)}{P(E)}$

$=\dfrac{P(B\cap E)}{P(A\cap E)+P(B\cap E)}$

$=\dfrac{\dfrac{3}{10}\cdot\dfrac{5}{100}}{\dfrac{7}{10}\cdot\dfrac{1}{100}+\dfrac{3}{10}\cdot\dfrac{5}{100}}$

$=\boldsymbol{\dfrac{15}{22}}$


練習2の解答

病気でない人を平気とする.

 $P_{陽性}(病気)$

$=\dfrac{P(陽性 \cap 病気)}{P(陽性)}$

$=\dfrac{P(病気 \cap 陽性)}{P(病気 \cap 陽性)+P(平気 \cap 陽性)}$

$=\dfrac{P(病気)P_{病気}(陽性)}{P(病気)P_{病気}(陽性)+P(平気)P_{平気}(陽性)}$

$=\dfrac{0.1\times 0.9}{0.1\times 0.9+0.9\times 0.1}$

$=\boldsymbol{\dfrac{1}{2}}$


練習3の解答

(1)

$P(A_{1}\cap B_{1})=\dfrac{1}{4}$,$P(A_{1})=\dfrac{2}{4}$,$P(B_{1})=\dfrac{2}{4}$ より

$P(A_{1}\cap B_{1})=P(A_{1})P(B_{1})$

よって $A_{1}$ と $B_{1}$ は独立


(2)

$P(A_{2}\cap B_{1})=\dfrac{1}{4}$,$P(A_{2})=\dfrac{1}{4}$,$P(B_{1})=\dfrac{2}{4}$ より

$P(A_{2}\cap B_{1})\neq P(A_{2})P(B_{1})$

よって $A_{2}$ と $B_{1}$ は独立でない

※ 独立でないことを従属というのでそれで答えてもOKです.