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複素関数による軌跡

複素数平面(教科書範囲) ★★★

アイキャッチ

複素関数による軌跡を扱います.

複素数平面の中でもレベルが高く,総まとめのような内容です.

複素関数による軌跡

今までは関数といえば,$y=f(x)$ のように,独立変数 $x$,従属変数 $y$ もともに実数の関数を考えてきました.

しかし,独立変数,従属変数をともに複素数にした関数を複素関数といい,$w=f(z)$ のように表すことができます.大学では複素解析学といい,ここで詳しく扱われます.

高校数学では,$z$ の条件から $w$ の軌跡を導き出すこと,またその逆などが問われます.

複素関数による軌跡の求め方

STEP1:$w=f(z)$ で $z$ の条件がわかっている場合,$z=g(w)$ のように $z$ について解き,$w$ の方程式を作る( $w$ の条件がわかっている場合,$z$ の方程式を作る.)

STEP2:方程式を式変形して軌跡を導く.$w=x+yi$ ( $z=x+yi$ )とおいて座標平面の方程式にして計算してもよい.

STEP3:導出された集合のすべてを取れるのか,除外点がないか確認する.

※ 基本的には上記の方法で算出しますが,式の意味を考えて答えられる場合があります(例題(1)).


下の問題で確認していきます.

例題と練習問題

例題

例題

複素数 $z$ が点 $1$ を中心とする半径 $1$ の円を動くとき,次の点 $w$ はどのような図形を描くか.

(1) $w=iz+i$

(2) $w=\dfrac{4i}{z-3}$


講義

(1)は(2)のように計算で出せますが,式の意味を考えて答えると楽です.(2)はまず $z$ について解いて,$|z-1|=1$ に代入します.


解答

(1)

例題(1)の図

$w=iz+i$ は $z$ を原点を中心に $\dfrac{\pi}{2}$ 回転し,全体を $+i$ 平行移動したグラフなので,点 $\boldsymbol{2i}$ を中心とする半径 $\boldsymbol{1}$ の円

※ $w=i(z+1)$ とすると先に全体を $+1$ 平行移動してから原点を中心に $\dfrac{\pi}{2}$ 回転するという意味になり,結果は同じです.


(2)

$w=\dfrac{4i}{z-3}$ を $z$ について解くと,$w\neq 0$ より $z=\dfrac{4i}{w}+3$.これを $|z-1|=1$ に代入すると

$\left|\dfrac{4i}{w}+2\right|=1$

$\Longleftrightarrow \ \left|4i+2w\right|=|w|$

$\Longleftrightarrow \ 2\left|w+2i\right|=|w|$

両辺 $2$ 乗すると

$4(w+2i)(\overline{w}-2i)=w\overline{w}$

$\Longleftrightarrow \ 3w\overline{w}-8wi+8\overline{w}i+16=0$

$\Longleftrightarrow \ w\overline{w}-\dfrac{8}{3}wi+\dfrac{8}{3}\overline{w}i+\dfrac{16}{3}=0$

$\Longleftrightarrow \ \left(w+\dfrac{8}{3}i\right)\left(\overline{w}-\dfrac{8}{3}i\right)=\dfrac{64}{9}-\dfrac{16}{3}$

$\Longleftrightarrow \ \left|w+\dfrac{8}{3}i\right|^{2}=\dfrac{16}{9}$

これより

$\left|w+\dfrac{8}{3}i\right|=\dfrac{4}{3}$

点 $w$ の全体は点 $\boldsymbol{-\dfrac{8}{3}i}$ を中心とする半径 $\boldsymbol{\dfrac{4}{3}}$ の円

練習問題

練習

複素数平面上の $2$ つの複素数 $w$,$z$ が $w=\dfrac{iz}{z+i}$ を満たしているとする.

(1) 点 $z$ が原点を中心とする半径 $1$ の円を動くとき,点 $w$ はどのような図形を描くか.

(2) 点 $z$ が実軸上を動くとき,点 $w$ はどのような図形を描くか.

(3) 点 $w$ が虚軸上を動くとき,点 $z$ はどのような図形を描くか.

練習の解答

 $w=\dfrac{iz}{z+i}$ $(z\neq -i)$

$\Longleftrightarrow \ (z+i)w=iz$

$\Longleftrightarrow \ (w-i)z=-iw$

ここで,$w=i$ とすると $w=\dfrac{iz}{z+i}$ を満たさないので $w \neq i$.

$z=\dfrac{-iw}{w-i}$

(1)

$|z|=1$ より

$\left|\dfrac{-iw}{w-i}\right|=1$

$\Longleftrightarrow \ |-iw|=|w-i|$

$\Longleftrightarrow \ |w|=|w-i|$

これより点 $w$ の全体は$\boldsymbol{2}$ 点 $\boldsymbol{0}$,$\boldsymbol{i}$ を結ぶ線分の垂直二等分線.


(2)

$z=\overline{z}$ より

$\dfrac{-iw}{w-i}=\dfrac{i\overline{w}}{\overline{w}+i}$

$\Longleftrightarrow \ \dfrac{-w}{w-i}=\dfrac{\overline{w}}{\overline{w}+i}$

$w \neq i$ として,分母はらうと

$-w\overline{w}-wi=w\overline{w}-\overline{w}i$

$\Longleftrightarrow \ 0=2w\overline{w}+wi-\overline{w}i$

$\Longleftrightarrow \ 0=w\overline{w}+\dfrac{1}{2}wi-\dfrac{1}{2}\overline{w}i$

$\Longleftrightarrow \ 0=\left(w-\dfrac{1}{2}i\right)\left(\overline{w}+\dfrac{1}{2}i\right)-\dfrac{1}{4}$

$\Longleftrightarrow \ \left|w-\dfrac{1}{2}i\right|^{2}=\dfrac{1}{4}$

これより

$\left|w-\dfrac{1}{2}i\right|=\dfrac{1}{2}$

点 $w$ の全体は点 $\boldsymbol{\dfrac{1}{2}i}$ を中心とする半径 $\boldsymbol{\dfrac{1}{2}}$ の円.ただし,$\boldsymbol{w=i}$ を除く.


(3)

$w=-\overline{w}$ より

$\dfrac{iz}{z+i}=-\dfrac{-i\overline{z}}{\overline{z}-i}$

$\Longleftrightarrow \ \dfrac{z}{z+i}=\dfrac{\overline{z}}{\overline{z}-i}$

$z\neq -i$ として,分母はらうと

$z\overline{z}-zi=z\overline{z}+\overline{z}i$

$\Longleftrightarrow \ z=-\overline{z}$

これより点 $z$ の全体は虚軸上を動く.ただし,$\boldsymbol{z=-i}$ を除く.