確率漸化式(基本編)
数列(入試の標準) ★★★
漸化式の応用問題(自分で漸化式を立式する問題)として確率漸化式を扱います.
確率漸化式の問題の中でも,隣接2項間で状態が2種類の基本的なタイプを扱います.
確率漸化式の主なパターン
確率漸化式の問題では,時刻における状態の推移(遷移)を図にすることで解くとわかりやすいです.
どれもある時刻でのすべての状態の確率の和は $\boldsymbol{1}$ になることを利用します.
高校数学での確率漸化式の種類(イメージ)
Ⅰ 隣接2項間で状態が2種類のタイプ
基本的な解きやすいタイプです.漸化式を立てるのが問題で,漸化式を解くこと自体は簡単なことが多いです.
難関大学でよく出るタイプです.漸化式を立てるのが難しく,連立漸化式の解法を使うケースもあります.
※このタイプは圧倒的に出題頻度が少ない上に,Ⅰ,Ⅱの問題として解くことができる問題もあります.時間的余裕がなければ割愛していいと思います.
考え方
重要なことは,未来( $\boldsymbol{n+1}$ 回目) の確率は,現在 ( $\boldsymbol{n}$ 回目) (Ⅲでは $\boldsymbol{n-1}$ 回目も必要)のみによって決定するということです.これは大学の確率論の用語でマルコフ性といい,大学入試ではマルコフ性に従ったもの(マルコフ過程)しか出題されません.
身近な点で言うと,明日の天気や,企業の株価,インターネットのサイトの遷移等は,何年も前の事象の影響を受けるとは思えず,重要なのは直近の事象のみです.身の回りの事象でも,確率漸化式で記述できるモデルは多かったりします(大学では,応用数学科や経営システム工学科等で学べます).
当ページは基本編なのでⅠのタイプを扱います.
例題と練習問題
例題
例題
Aの袋には赤玉1個と黒玉3個が,Bの袋には黒玉だけが3個入っている.それぞれの袋から同時に1個ずつ玉を取り出して入れかえる操作を繰り返す.この操作を $n$ 回繰り返した後にAの袋に赤玉が入っている確率を $a_{n}$ とする.
(1) $a_{1}$,$a_{2}$ を求めよ.
(2) $a_{n+1}$ を $a_{n}$ を用いて表せ.
(3) $a_{n}$ を $n$ の式で表せ.
講義
確率推移図は以下のように,簡略化して書くといいと思います.
ここから $a_{n+1}$ を $a_{n}$ で表して漸化式を作ります.
解答
(1)と(2)
1回目にAから黒玉を取れば良いので,$\boldsymbol{a_{1}=\dfrac{3}{4}}$ .
$n$ 回目と $n+1$ 回目の推移図を書くと
となるので
$\boldsymbol{a_{n+1}=}\dfrac{3}{4}a_{n}+\dfrac{1}{3}(1-a_{n})=\boldsymbol{\dfrac{5}{12}a_{n}+\dfrac{1}{3}}$ .
これに $n=1$ を代入して $\boldsymbol{a_{2}=\dfrac{31}{48}}$ .
(3) (2)の式は
$a_{n+1}-\dfrac{4}{7}=\dfrac{5}{12}\left(a_{n}-\dfrac{4}{7}\right)$
と変形できるから,$\left\{a_{n}-\dfrac{4}{7}\right\}$ の一般項は
$a_{n}-\dfrac{4}{7}=\left(a_{1}-\dfrac{4}{7}\right)\left(\dfrac{5}{12}\right)^{n-1}=\dfrac{5}{28}\left(\dfrac{5}{12}\right)^{n-1}$
$\left\{a_{n}\right\}$ の一般項は
$\therefore \ \boldsymbol{a_{n}=\dfrac{3}{7}\left(\dfrac{5}{12}\right)^{n}+\dfrac{4}{7}}$
練習問題
練習
正三角形 $\rm ABC$ の頂点上を点 $\rm P$ が次の規則Ⅰ,Ⅱに従って移動する.
Ⅰ:時刻 $0$ に $\rm P$ は $\rm A$ にいる.
Ⅱ:$1$ 秒ごとに,$\rm P$ は確率 $\dfrac{1}{5}$ で今いる頂点にとどまり,等確率で今いる頂点以外の他の2頂点のどちらかに移動する.
$n$ 秒後に $\rm P$ が $\rm A$ にいる確率を $p_{n}$ とする
(1) $p_{n}$ を用いて $p_{n+1}$ を表せ.
(2) $p_{n}$ を $n$ の式で表せ.
練習の解答
(1) 出典:2015日本医科大改
となるので
$\boldsymbol{p_{n+1}=}\dfrac{1}{5}p_{n}+\dfrac{2}{5}(1-p_{n})=\boldsymbol{-\dfrac{1}{5}p_{n}+\dfrac{2}{5}}$
(2) (1)の式は
$p_{n+1}-\dfrac{1}{3}=-\dfrac{1}{5}\left(p_{n}-\dfrac{1}{3}\right)$
と変形できるから,$\left\{p_{n}-\dfrac{1}{3}\right\}$ の一般項は
$p_{n}-\dfrac{1}{3}=\left(p_{1}-\dfrac{1}{3}\right)\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1}=-\dfrac{2}{15}\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n-1}$
$\left\{p_{n}\right\}$ の一般項は
$\therefore \ \boldsymbol{p_{n}=\dfrac{2}{3}\left(-\dfrac{1}{5}\right)^{n}+\dfrac{1}{3}}$